4、お姫様の決意
「では、グラス。 必要な武器か防具を選ぶといい。」
「え?!」
すたすたとやってきたのは、鎧を着た兵士たち。
熊、山羊、馬…
持っているのは巨大な盾や、様々な武器…
「ただし、一つだけだ。」
「ま、まってください!なぜ、私が…?」
「そなたとワシのドラ息子、二方がかりでかかって来いと言ってるのだ。」
「???!!!」
「やっぱり防具だろう?」
「いやぁ、あの体つき…きっとなにか武術を習っていたんだろう。戦うんじゃないか?」
「弓矢だろう!」
「剣じゃないのかしら?」
「!」
緊張しすぎて気がつかなかったが
この大広間には、大勢の魔族たちが集まっている!
モンスターと見まがうほどの異形な方や、魔王様たちのように人型に近い方もいる。
「つーか、あの格好! 魔王様のお姿しか見てなかったが、お姫様が着てるとお体のラインが…お綺麗ですなぁ…」
「…あ。」
そうでした!
あのぴったりした服のまま!
「ま、魔王様! このまま勝負をなさるのですか?!」
「動きやすいだろ?」
「う、うぅ…」
はずかしいです!
と、とにかく…武器を選べば、お二方の勝負が始まるのですから…
「こ、これで…!」
えらんだのは、ごく普通の剣。
習っていたのは剣舞…つまり、演技を見てもらう競技。
こんな勝負事には使ったことは無いけれど…
手にしたことも無い武器を選ぶよりは…
「お、お願いします…」
「では… 始めるか。」
ずん、と玉座から飛び降りた大魔王様…
本当に大きい…
マントを脱ぐ仕草は優雅。
大人の余裕、というところでしょうか。
「絶対防具を選ぶと思ったのに…」
「…ま、魔王様が…」
「え?」
「魔王様が守ってくださると信じていています…!」
「~~~~~っ!」
向こうを向いて、短い黒髪をがしゃがしゃとかいている。
もしかして、照れてらっしゃる…?
「まかせろ。」
「はい!」
ぶおん!
「下がれ!」
どがぁぁああああん!!!
「でいやぁ!」
どごごごごごごごごごごごご!
飛び散った瓦礫を全部叩き落す。
「ほう、お前は武器を使わないのか。」
「甲当てだけで十分だ、くおらぁ!」
ごごん!
床を殴りつけて、大きな床石を立ち起こす。
「どらぁぁ!!!」
キック一撃で、床石がふっとぶ。
「温い。」
がしぃ! ぐしゃぁぁあ!
なんなくキャッチされて、粉々に砕ける。
「ふん!」
ぐぃぃい!
「い、やべ…っ」
ぶっぉごわぁああああ!
どごがらしゃぁあどごごおおおおお!
「きゃぁああああ!」
「さすが大魔王様!!!」
魔王の身体が、軽々持ち上げられて、そのまま大跳躍と共に、放り投げられる。
天井にたたきつけられた魔王は、床に墜落した衝撃で声がでたのち、動けずにいる。
ずしん!と床を割りながら着地し、とどめといわんばかりに、大きなこぶしを振り上げた大魔王。
「ーーーーーっ!」
その一瞬の隙。
わき腹を狙い、駆け出した。
「なかなか良い判断だ。だが、遅い。」
左腕の裏拳………!
「させるかぁ!」
ごきぃ! みしっ……
「うぐ……… ぁあ!」
どごぉ!
「ま、魔王様ぁあ!!」
「…ふぅ… 残念だ、全然成長しておらんな。 まぁグラスの不意打ちと、てめぇの反撃は認めるが、動作が大きすぎる。第一単純だ、グラスをあえて攻撃すれば、反撃に来るのは分かっ…」
ガゴォオン!
「……!」
「…不意打ち、失礼いたします!」
本当に申し訳なかったけれど…
今しかなかった。
私に背を向けた大魔王様の肩当を剣で壊した。
さすがに、致命傷にはならなくったって、怪我くらいは負わせられたはず…
「ぬぅ…!」
「 ……あ… 」
足の力が一気に抜ける。
立っていられない。
「くそ親父ぃいいいいいいいいい!!!」
「…ふ、ドラ息子ぉぉおおおおおおおお!!!」
ごしゃ!
どっすーん!
ばたーん!
「ま、魔王様ぁぁ!!」
「ど、どうだぁ、この野郎!」
「……く、くくくく… なかなか効くじゃねぇか、やりやがったな、この野郎…」
「「くく、はっはははははは!!」」
床に仰向けでばったり倒れている二人。
お互い、左顔面にこぶしの痕が赤く残っている。
この状態で、二方とも笑ってるのを見ると
若干、怖いです。
「はーい。では今年の喧嘩、引き分けとなります。 はいはい、配当金分配はお屋敷の外で受け付けますよー。」
ペレットさんの声。
というか、これって賭けをしてたの!!?
ぞろぞろと、お屋敷を出て行かれるお客様方…
ほとんどの方が、大魔王様にご挨拶をして出て行く。
「大魔王様、医務室までお運びいたします。」
「あー、いいよ自分で歩く。それより息子を頼む。」
「は、はい。」
「大丈夫ですか、魔王様!」
まだ、カタカタと震えている足を引きずって、魔王様の身体を起こす。
「いってぇ… 背中、さわんねぇでくれ…」
「す、すみません!」
「あとで、すぐいくから… 俺の部屋に案内してやっといて。」
「はい、かしこまりました。」
「あ、あの…」
「大丈夫ですから先にシャワーを。浴場へご案内いたします。」
「え、あ、はい…」
さーて、次はラブコメですよ(笑)