25、孤独と誤解、愛と悲恋。 (イラストURLつき)
おそくなって、大変申し訳ありませんでした!
激高をあらわにする目の前の男に違和感はあるものの…
怒鳴ったと同時に四方から取り囲む呪魔達に、蹴りをかませ薙ぎ倒す。
「モロゴハノンキィはわしにまかせろ!」
「おうっ!後で合流するぜ親父!!」
「はんっ生意気な…」
「うるせー!」
「……仲の良いことだ…」
「どこがだ!……と言いてぇが…貴殿にそれは当て付けに聞こえるんだろうな。」
「…ダイオード、貴様……」
「貴殿を襲った不幸は大魔王なら誰もが伝え聞いて知っている。だからこそ、止める。わしは二度と、『家族』を手放さない!悪いがわしのわがまま、押し通すぞっ!」
「……温い男だ…あの時とまるで別だな。牙を折られたか?あの人間に…」
「牙は折れても拳は解いてはおらん。さ、やろうか。話し合いで解決できるほど冷静になんかなれないだろ…?」
「……ふん。」
ひゅん…すたっ!
「モロゴハノンキィ様、こちらを!」
「あぁ…」
「……………おいおい、反則じゃないかそれ!」
「黙れ、筋肉馬鹿に体力で挑むほど愚かではない。」
「ちっ…」
太さがやつの腕ほどはある長い魔杖。
たしか、あの形は……魔法の発動中、物理攻撃を軽減するおまけつきだ。
状況悪いな…
…ポッ… …ポポポ……
「……下がれ。」
「はっ!」
ギュドドドドドドドッ!!!
「脚力・強ーーー化!!」
ズガガガッッ!!
「どらぁぁぁぁ!!!」
杖をふるたび増えていくオレンジ色の球を全部蹴り返す。
「……清々しいほどに馬鹿だな。」
…ブゥゥンッ…
どぷんっ
黒い……水面のような盾…!?球が飲み込まれていく……
あれって…まさか??!!
「な………っ!?」
ドゴォォォッ!!!
「がはっ……!!」
「…解せない…なぜ、全て受け切れないとわかっていながら身を盾に庇うんだ…?」
…………………………………………………………
「グラス、離れるなよ!」
「(こくこくっ)」
「打てーーーー!!!」
「「セイザーッ!!」」
ズダダダダダダダダッ!
「ぬおおおおおっ!!……ずりーだろ、魔導銃は!!!」
「黙りなさい!!モロ様には近づけさせないわ、全力で追いやりなさい!!」
「「「セイザーーー!!」」」
「さっきからモロ様モロ様って!…そなた、モロゴハノンキィの愛魔かっ?!」
「 ち、 ち、違うわよ!!ふざけたこと言うなーーーーーーー!!!!!!」
ギギンッ!!
「あ、あなた……いつのまに剣を!」
キレた牛女…もといルージュがグラスにむかって突き出した爪を、短剣でさばく。
左腕はまだうまく動かないらしいが、冷静さを失っている今、動きを止めるだけなら出来る。
「よっしゃ、いいぞグラス!押さえ付けてろ、このままぶっとばして………っ!?」
「……!」
「あっ……!」
なんだあれ…?
…どぷんっ…
ギュギュンッ…!
「うぐぁっ!?」
「きゃぁぁぁ!!」
「……っ!」
突然現れた宙に浮く水溜まりのような円盤から、オレンジ色に光る球が弾き出された。
「ぐっ…」
脇腹が…いや、大丈夫だ、これくらいならすぐ塞がる…俺のことより…!
「グラス!!」
声に気がついたグラスが、しゃがんだままぶんぶんと顔を横にふる…一体何が…
「!!お、おい、大丈夫か!?」
肉のえぐられた右腕はぴくりとも動かない。
グラスはルージュを抱き起こそうとしたものの重傷さに躊躇していたらしい…
「な、なんで仲間のそなたが狙撃されて…?!今のはモロゴハノンキィの術なんだろ、なんで…!!」
「……目標地点…」
「?」
「あんた、たち剛魔は…必ず接近戦に持ち込もうとする…だから…私達がターゲットになれば、巻き添えに出来る…」
「「!!?」」
「ふふ……私達は、モロ様のお役に立つためなら、何だってする…あなた達とは、覚悟が違うの…死ぬことだって、お役に立てるなら喜んで望むわ。」
バチンッ!
「いったぁ!?」
「グラス…っ」
いきなりのビンタ。
声のでないグラスの唇は、必死に怒鳴ろうとしている。
「……、……っ………!!」
「………ルージュの手当てをしろってことか?」
「(こくこくっ)」
「………わかった。」
「い、いらないわよ…!何を…!」
「…以前会ったときに言ったはずだ、殺さないと。この…妻との約束は、敵も味方も関係ない。」
「(こくんっ)」
「なにを……何を考えてるのよ…!私は敵なのに、なんで…なんでそんなに優しいのよあんたたちは…!殺せなくなっちゃうじゃないの!!どうしたらいいのよ、私たちは………!!」
「な、なんでったって…」
ドガァンッ…!!
ドドドドド……!!
バギャッ…!!
「…………!!」
「おわっとと……やべぇな…早く親父を…」
あちこちで爆音が響く。
震動で治癒は中断されちまった。
同じように騎士達が狙われているっぽい。
今にも泣き出しそうなグラスを一度抱きしめて、ルージュに向きなおる…
「………あの黒い円盤は、打ち込んだ魔法をターゲット目掛けて分散させる。私達全員がランダムにターゲットになってるわ。」
「はぁ!?」
……がしっ
「!」
「うわっ…!」
「もう、引き返せない。逆らえない…殺さなきゃいけないの、あなたたち全員……モロ様のために………!」
「……………!!」
腹目掛けて特大の黒い円盤が迫る。
よけられない。
突き飛ばすわけにもいかない。
……今、動いたら…
後ろのグラスが…死んじまう…………!
「……っ…ゾディローーーーーー!!!!」
……ドクン……ッ……
ガコン!!
……気がつけば、足の下には踏み付けられて固まり沈黙した黒い円盤。
今……何が起きた…?
いや、それどころじゃない……!
「ぐ……グラスーーーー!!」
「…かはっ…はぁ、はー、はぁっ………!!」
血を吐いて倒れている…?!
「グラス、グラス……!馬鹿、なんで…!!」
「どきなさい、ロー!」
「んがっ!」
げしっ!!!
チュパッ
「リップ・シールド!!」
……ギュゥゥ…ン……
「母さん!!」
「……お、かぁさま…」
「ふー……間に合ったわ…ごめんなさい。旦那にほとんどの魔力を預けちゃって、疲れて走れなかったの。まだ術式が完成してないから不安定で…なるべく動かないでね。」
「…お母様ぁ……」
「泣かなくても大丈夫よ、私のそばにいる間は苦しくならないから。この結界は音に関わる魔法を遮断するの。ローも、心配いらないわよ。ほら口元拭きなさいな、血まみれじゃないの。女の子がだめよ、顔に怪我なんか作っちゃ。」
「助かったよ、母さん…」
「さあ、せっかく名前呼ばれたのに…もったいないわよ。力が漲ってる間に早く行きなさい!」
「……て、ことは…これが『言魂騙ことだまし』の力が…!?」
「知ってるなら早いわ……こっちには優秀な執事と戦士とメイド達がいるから、大丈夫よ。」
「…お、おう!」
「まちなさい!!逃がさないわよ……!!」
ドガガガッ!
「きゃっ……な、なにこれ…ペーパーナイフ?!」
「失礼いたします、甚だ突然ではございますがここから先は通行止めとなります。」
「あ…あんた執事!?」
「竜魔執事・最重要三ヶ条。 ●第一条…紳士であれ。 ●第二条…冷静であれ。 ●第三条…仕える主、そのご家族、ならびに職場の職員一同、そして愛する者の危機には、全力をもって危険因子に抵抗せよ。
……以上三項目、ならびにグラス姫様より『食糧以外の殺生を禁じる』とのご嘆願にて…あなた様他呪魔の皆様を、足止めいたします。御了承くださいませ……」
「ひっ……!」
じろりと睨みあげる茶黒い瞳は、その視線だけで足元を奪うほどの恐怖を与える。
「「どぉらぁぁぁぁあああああ!!!!」」
「まだまだいくぜぇ!!」
「……ったく…屋敷に閉じ込められてお役に立てないとか…冗談じゃねぇぞ…くおらぁぁぁぁぁ!」
「すっ鋼切鋏使いだ……!!」
「ていうか剛魔王の血縁だぁぁっ!!」
「あの男魔、改造魔じゃないか!見ろ、あの腕……!!」
ペレットとソーケンとタスタだ!
鋼切鋏を持てば無敵の弟。
銀に光る硬質化する腕と異常な脚力を持つ、改造魔の筋肉事務員。
そして…静かにブチ切れている竜魔の執事。
絶対、負けるはずがない…!
「頼んだぞおまえら!」
「「「セイザーッ!!!」」」
「さぁグラスちゃん、私達も移動しましょう。この結界は物理攻撃は防げないの。」
「は、はいっ!」
「い、いかせるもんですか!絶対止めて!!」
「きゃぁぁ!」
「グラスちゃん!」
「「だぁぁぁりゃぁぁぁぁぁっ!!」」
…どがんっっっ!!! ずっぼぉぉぉ!!
「姫様に触るな!!そこに埋まってなさい!!!」
「グラス様ぁ!ああ、 御髪おぐしがこんなに乱れて…今すぐ直したいですぅ…!」
「やってる場合か!!早く大魔王様のところへ!」
「はぁい!失礼致しますぅ姫様。」
「きゃっ!!」
「すぐ運びます、少々ご辛抱くださいませぇ。」
「ハッカ様、失礼致します!」
「あら、ありがとう。」
「ポーラ、いくわよ!」
「はぁーい! タスター、がんばってねぇー!」
「おーう!」
「「バカップルか!!!!」」
見知った気配が四つ追い掛けて来てる。
親父、まってろ……!!
…
「……しぶといな。貴様が防いでさえいなければ、もう少し被弾威力があがるのに…」
「ふー、ふー……ふんっ…父親が体を張るのは、当然だ。わし独りの体を守るより、大勢を守れるなら、そっちを選ぶ。もちろん、死ぬ気はない。わしはわがままなんだよ。」
「………」
「魔王がわがままで何が悪い?わしは貴様のやり方が気に食わない。わがままを貫くなら、犠牲になるものを作ってはならないだろう。それがわからないなら、それは単なる傲慢でおごりだ。」
「……それが、なんだ。」
「貴殿も、助ける。」
「?!」
「何が貴殿をそこまで破壊衝動にかきたてるのかわからないが、それによって貴殿の部下達が傷ついているなら、止めなければならない。」
「……戦うことしか脳のない種族が、わたしを諭すつもりか。」
「そりゃぁ、そうさ。」
くっと肩を竦める。
「戦いは好きだ。だが、血を見たいわけじゃない。……なぁ、息子?」
「!!」
「……俺たちは拳と拳で喧嘩ばっかりしてきた。普通の魔族には確かにありえないだろうな、魔法があるんだから。でも…俺達は、それに引き寄せられる。魅せられちまった。だから、ルールがあるんだ。それを壊すなら、作ってきたものをすべてを破壊するなら…止める。そう考えるのが、剛魔だ。」
「ならば、とめてみせよ…私は、従える気もそばに誰かを置いておく気もない。最後にはすべてを壊して終わりなのだ。 誰にも、私を理解などさせない!!!私にわからないことを、誰が理解できる!!!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「「んっだらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!
「「んなもん、知るかぁぁ!!!!!」」
ドパァン!!
「腹のうち、さらけ出せないやつが、誰に理解してもらえるというんだ。 …本当に、このままでは大切な者を失うぞ!!」
「だまれぇぇぇぇえええええ!!!!」
「「魔王様ー!!」」
「あなたーっ、ロゥー!!」
「母さん、グラス!みんな!!」
「ハッカ!よかった、間に合ったのか…!」
「ちぃっ…」
「今だ、全員配置ーーーー!!!」
「「「!!??」」」
「……ルージュ…?」
どさっ
「ぐはっ…」
「うぅ………」
「……も、申し訳、ありませ、ん……」
何があったんだ?!
「ソーケン、タスタ、ペレット!!」
ぐるりと周りを取り囲まれた。
この状態で魔法を放たれれば、防ぎきれない…!
「ふん、執事が魔法耐性が高いのが難点だったけど、視覚情報をいじられれば何てこと無いわね。」
そうは言っても…
呪魔達だって満身創痍、ふらふらだ…
「よくやった!だがなぜここへ来た…他の騎士や兵達を追い詰めろと言ったはずだが…?」
「モロ様… この剛魔界を壊滅させたあとに、次はどこへ……?」
「? 気の向いたところへ行く。すべてを破壊すると、伝えたはずだ。」
「わかりました……皆、首輪を…」
「「!!」」
「もう、大丈夫。モロ様は、お独りで大丈夫なの。……私達は必要ないわ…」
「……ルージュ…?」
「お仕え出来て、光栄でございました。……私どもは、もう…戦えません。……私たちを見ても、おわかりいただけない以上、これが、私たちにできる最後の攻撃です。お許しください…私達は、モロ様の何百分の一も、お力になれなかったようです…」
「ルージュさん…!?」
……まさ、か……!!
「だめ、ルージュさん、駄目ぇぇぇえええ!!!!」
悲鳴を上げたグラスが、制止しようとしているが…全く聞く耳がない。
「どうか、モロ様…結界の準備を。」
「ま、まて…!?」
あの首輪…………!!!
この感じ、あの中身は…
「全員、壊しなさい!!」
「「「せ、セイザーー…………!!!!」」」
バキンッ バリッ
ぼきっ がしゃんっ バキバキッ
……ガカッ………
「…ルージュ…!!!!」
……ボッ…………
「グラスーーーーーーーーーーーー!!」
こんな大変なことになってるシーンのときにUPするのもどうかと思ったんですが…
でも、やっぱり見てもらいたくて、UPしまーす!!
毎回毎回素敵イラストありがとうございます。鴉さま!!
本当に萌えております!!!
悶えております!!
しかも、今回大量にいただいちゃいました!!
やったーーーー!
http://3965.mitemin.net/i36391/
大呪魔王・モロゴハノンキィ様と(一応)メイドのルージュさん。
なにこの恐ろしさ!!
一人でカタカタ画面の前で震えておりました。
そのまんま、Taka多可の脳内のモロ様と一致しました!
恐ろしいぃぃぃぃ!!(うれしい悲鳴)
そして、鴉様はルージュさんがお気に召していただけたようです。
キャラを好きになってもらえるって、本当にうれしく思います!
ありがとうございます!
http://3965.mitemin.net/i36393/
事務員のタスタさんとメイドのポーラさんです。
この二人にはイメージソングつけちゃったりしてます。
すっごく大好きな二人です!!
曲は内緒でーす。(笑)
でも、メールとかならお教えしますよ?
いや、まぁ…たいしたことじゃないですが。
どうしても知りたい方は連絡してください。
(ほら、著作権とかうるさいじゃないですか?
なるべくそういうのは大勢の目に触れないようにしたほうが
いいかなぁとおもいまして…(チキンハートです…))
http://3965.mitemin.net/i36588/
グラス姫VSルージュさんです。
リクエストしちゃいました。(笑)
いやぁぁぁ、たまりませんな。ルージュさん!
そして、グラス姫、貧乳…
いや、美乳ですから!!(オヤジか!)
そして鷲掴みもいただきました!
http://3965.mitemin.net/i36589/
「牛ぃ!」の台詞に吐血します!(オヤジだ!!)
全部、みてみんさまです。
コピペでおねがいします!
いやぁぁ、大興奮でした。
本当にありがとうございます!
(月光版掲載時・2011年 12月09日)
修正・誤字発見しました。すいません。




