1、お忍びの魔王様
~剛魔界~
「魔王様ー!」
「ああ、もう!どこへいかれたんだ!」
「ペレットさん!これ!!異世界の窓!!」
「人間たちが大騒ぎになってますよ!」
「どーするんですかーーー!」
「仕方ありません、とにかくすぐにつれもどしてきます!!ちょっといってきます!」
「あっ ペレットさーん!?」
~人間界~
「うーむ…またやってしまった……」
我輩の言葉は、こちらがわの人間にはうまく聞きとれないらしい。
買い物をしようとこちら側の人間界の町へ出てきたのだか…
聞こうとすれば、変な顔をされていなくなってしまう。
しかたなく、目的のものを探して店内をうろついていれば、
柄の悪い人間に絡まれてしまった。
どうやら、我輩の黒いマントが気に食わないらしい。
うっとうしいので、店から出ようとすれば、外には同じように柄の悪い連中。
避けて通ろうとすればふさがれる。
やむをえず、一人を突き飛ばした。
ただ、それだけだったのだが…
「ぎぃゃぁぁぁあああ!!!!!!!!!!!!!」
「う、腕がありえねー方向に曲がってぞ!?」
「何だこの男!!?
ば、化けものだぁぁぁああ!!!!」
「だ、だれか救急車…!!」
ぎゃーぎゃーわーわー
仕方ない、今日は帰るか…
「まーおーうーさーまー!」
「うぉ!? びっくりした、ペレットか…」
「勝手に異世界へいかないでくださいと何回言えばわかるのですか!」
「仕事もひと段落したし、いいじゃないか…」
「早く帰りますよ!欲しかったのはこれでしょう!」
「あ、クルミのクッキー!よくわかったな、ありがとう。」
「はぁ……人間界、しかも異世界の食べ物が大好きとか、魔王としての自覚はどこいったんですか。まったくもう…」
「んー! 甘い!」
「聞いてないし…」
……神話において…
世界には、守るものと破壊するものが同時に現れたとされている。
守るものが勇者と選ばれし人間たち。
世界を滅ぼす存在が、大魔王と魔王、魔王子。
…そして現代。
いくつもの種族の大魔王と魔王、魔王子が人間の世界の隣にそれぞれの世界を持ってそこにいた。
その世界は、魔界と呼ばれ、人々から恐れを持って差別され…
恐怖の対象となった。
そのひとつ、大剛魔王の長男でありながら、ふらふらと遊びまわるダメ魔王子だった彼は
100歳の戴冠式にて魔王となった。
以降少しはおとなしくなったものの、いまだに子供気分は抜けきっていない…
彼曰く
『人間界って、滅ぼしちゃうのもったいなくない?おいしいものいっぱいあるんだから!』
これは、前大魔王… 現在の老剛魔王より受け継がれた、剛魔族における行動原理の原点でもある…
2012.10.25
副タイトルと本文の大部分を変更しました。
むしろ、変わってない箇所は一箇所だけ…
クルミのクッキーのくだり辺りだけです。