二 手下として
朝。美花は、月の光とともに起きた。
「ふぁ~あ…」
あくびをすると、早くもご飯の用意をする雷亜の姿があった。
「今日はよく眠れたかい?」
「もちろん。」笑顔できっぱりと答えた。「おなかいっぱいにご飯を食べたし。暖かいココアも飲んだから…」
こんな日はもう二度とないだろう。美花はそう思った。
「ほら、食べな」
差し出したのはシチューだった。
「うん。」
シチューを受け取ると、勢いよく食べ始めた。
「ところでさ…。」
と雷亜が不安そうに話しかけて来た。
「なに?」
美花は聞いた。
「君、帰るところもないんでしょう?」
あ、と気がついた。そうか…。帰るところ、なかったんだ。美花は再びあの寂しさと寒さがよみがえってきた。
「ないんだね…。それじゃあ………」とうれしそうににこっと笑った。「僕の手下にならないかな?」
手下……。うれしさか?かなしさか?自然に涙がこみ上げて来た。
「帰るところがない…そうだね…私はバンパイアとしても、人間の血の飲み方も知らないの…。貴方にすべてを教わって、立派なバンパイアになりたいわ…」
「じゃあ決まりだね!」
立ち上がると、美花に近づいた。
「今日から君は僕の弟子だ。よろしくね」
と、握手を申し出た。へへっと笑うと、申し出た手を、握った。
「それじゃあ、貴方は私の師匠ですね。」
運命の歯車が…大きく変わっていくのも…美花達は…知らなかった。