『雨上がりの水たまりは、空を映していた』
「今日も何とか一日が終わった」と思った主人公りくは自分がそれまで何度も終わりにしたかった夜を越えてきたことには、まだ気づいていなかった。
膝を傷めて、それまで当たり前だったことができなくなった日。
手術を待ちながらリハビリを続けた時間。作業所や地活へ通って、人との距離に悩んだ日。家に帰っても気持ちに置き場がなくて抱え込んだ夜。
「もう無理」と思ったことも、一度ではなかった。
それでもりくは、不思議なくらい人とのつながりを捨てなかった。
病院の先生に伝えるために自分の気持ちを紙に書いたり、苦しい夜には誰かに「助けて」と伝えたり。
リハビリでは先生とのやり取りに笑顔になれた日もあった。
そして物語には苦しい場面だけじゃなくて、ちゃんと明るいページもある。
家族やいとこと遊んだ夏。スポッチャやカラオケではしゃいだ日。地活のみんなとグミの世界展へ行って、知らなかった世界を覗いた日。お城の急な階段に「怖い!」と思いながら登った日。
TikTokでは、人とはなしたり、誰かの誕生日や大切な人のために歌を考えたり、自分の出来事まで音楽にしてきた。
りくはたぶん、自分の人生に起きたことをただ「つらかった」で終わらせる人じゃない。
悲しかったことを歌詞にしたり、楽しかった一日を曲にしたり、誰かへの「ありがとう」を作品比したりする。
だからこの本の中では何度も雨は降る。
でも雨が止んだページには必ず小さな水たまりが残っいている。
りくはそれを踏んでしまったり。避けたり、ときには立ち止まって覗き込んだりする。
そして本人が気づかないうちに、その水面にはずっと空が映っている。
そしてりくは、水たまりに映った空を見て笑った。
明日が晴れる保証なんてどこにもなかったけれど、それでも明日を見に行ってみようと思った。
「あなたが何気なく今日まで続けてきたこと、それ自体が、この物語でいちばん大切なページ」




