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必中必殺の〝魔弾の射手〟~異世界の冒険者学園に転入したんだけど、もしかして俺……ちょっと浮いてる?~  作者: 右薙 光介


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第32話 暴露ついでにもう一つ

 魔王軍残党に動きがあったとの報せがあったのは、例の密談からたったの四日後だった。

 その情報はすぐさま学園都市全体に伝達され、警報が出された……出されたのだが、ここはやはり変人奇人が集う学園都市。

 まるで平常運転だった。


 むしろ、活気が増している気すらする。

 異世界はやはり俺の常識からかけ離れているようだ。

 この学園都市の住民が特別ヘンなのかもしれないけど。


「ヘタすりゃ戦場になるかもしれないってのに、なんだか呑気じゃないか?」

「何言うてんねん逆や、逆。魔王軍残党が攻めてくるくらいで逃げとったらこの町じゃやってかれへんで」


 そうからりと笑いながら、新調した武具の留め具調整をするバルク。

 こいつにしたって、妙にご機嫌が過ぎないだろうか?


「怖くないのか?」

「大将が覚悟決まったツラしとるからな」

「俺が?」

「おう。なんや自覚ないんか? 戦場に出る男の顔しとるで」


 全身鎧(フルプレート)をがっちり着込んで、まるで鉄の塊になったかのような親友が笑顔で戦斧を担ぎ上げる。

 まるで重戦車のような姿は、こうして立っているだけで威圧感がすごい。


「パーティメンバーとしても、ツレとしても付き合うで!」

「バルク……!」

「それにな、わいら学生へのリターンもでかい」


 急に声色を商売人のそれに変えて、バルクがにやりと笑う。


「防衛要員登録するだけで十級冒険者資格を仮認定、無制限狩猟資格も仮認定、成果によって報酬と資格の正式認定あり。さらに『護衛および防衛』と『戦闘行為』の単位も取得可能や」

「……大盤振る舞いだな」

「冒険者にしたって成果報酬が相当出るってんで周辺から集まって来とる。それ目当ての商売人やら宿はそれで大儲けや。避難する(もん)は、もう後方に移動始めとるしな」


 なるほど、それでこの空気か。

 覚悟の決まった人間しかいないとなれば、逆に活気も出るわけだ。


「ボクも、一緒」


 気配なく背後から抱きついてきたメアリー先輩が、耳元で囁く。

 柔らかなものが背中に触れて思わずドキリとするが、それよりもメアリー先輩の言葉の方が気になった。


「メアリーも?」

「当たり前。つがいは支え合うもの、でしょ?」

「聞き捨てならないわね! 恋人はわ・た・し・よ!」


 メアリー先輩と一緒に来たのだろうか、アリスがメアリー先輩を引きはがす。


「じゃあ、シェア……する?」

「しない!」

「独り占めは、よくない」


 背後で言い争いを始める二人に、思わず苦笑する。


「相変わらず大将はモテるやん? ……そういえば、こないだ大将につないでくれって女子もおったな」

「え」


 意外な言葉に目を丸くしていると、背後から殺気じみた気配が二つ。


「バルク、まさかオーケーなんて答えたんじゃないでしょうね?」

「すぐに、排除……しないと」


 詰め寄る二人にバルクが軽く手を振ってため息をつく。


「アホか。自分でやれって言うたわ。そないな情けない待ち姿勢の(もん)に大将の女が務まるかいな」

「……そういうことじゃ、ない」

「はぁ、バルクはちょっとずれてるのよね」


 同時に溜息をつくアリスとメアリー先輩。

 仲がいいのか悪いのか。

 とはいえ、バルクが断ってくれてほっとした。

 これ以上の修羅場は俺の求める所ではないし、アリスがいるのに他の女の子を紹介されても困る。


「ね、タキ」

「ん?」

「二人には、話していいかな?」


 アリスの質問に俺はうなずく。

 そも、俺がどうこう言う問題ではなく、アリスが伝えると決めたならそうするべきだと思った。


「バルク、メアリー先輩。ちょっと、ヒミツの話、していい?」

「なんやなんや。おめでたか? 名付け親なら引き受けるで」

「ちっ、違うわよ! 話が飛躍しすぎ!」


 顔を真っ赤にして首を振るアリスの裾を、メアリー先輩が軽く引く。


「それは、ボクたちに話して、いいこと?」

「わからないけど、知っててほしいの」

「わかった。じゃあ、聞く」


 メアリー先輩が芝生に腰を下ろしたので、俺達もそれに倣って座り込む。

 小さく深呼吸したアリスが、ちらりとこちらを見たので俺は頷いて応えた。


「あの、ね……わたし、あの魔貴族が言った通り、魔王の生まれ変わりだった、みたい」

「なんやて」


 バルクが声を上げて固まる。

 メアリー先輩は平常……に見えるが、耳がピンと立っているところを見ると、やはり驚いたようだ。

 二人の様子にアリスが詰まったので、俺が言葉を継ぐ。


「魂のみだけどな。有識者の話によると、単なる生まれ変わりなだけで、魔王の素養は一切ないらしい。ついでに言うと、俺も半分魔族だった」

「ほうー、そうなんか……って、オイッ! ついででデカいネタバレ仕込んでくるやん?」


 流れるようなノリツッコミをかますバルク。

 やはりドワーフというのは関西人の血が混ざっているのではないだろうか。


「ん。わかった。じゃあ、今回の魔王軍残党は、アリス狙い、ね?」

「そうだと思う。だから俺は防衛依頼を受けずにアリスのそばにいようと思うんだ」

「じゃ、ボクも、そうする」


 メアリー先輩がアリスをそっと抱擁する。


「メアリー先輩? いいの?」

「いいかげん、メアリーと呼んで、ね? アリス」

「う。うん。でも、メアリーはそれでいいの? 冒険者資格のチャンスだよ?」

「友達の方が、大事、だもの」


 そんな二人を傍目に見て、バルクが小さくため息を吐いて向き直る。


「そういう事なら、わいも防衛参加はパスやな」

「バルクまで? いいのか?」

「目先のもんに目ぇ眩んで大事なもんを見落とすんは愚かもん言うんや」


 俺の胸に軽く拳をあてて、にかっと笑うバルク。


「お前らが魔王の生まれ変わりやら半分魔族やらって言うても、友達なんは変わらんわ。わいかて突然変異の長身ドワーフやぞ」

「む、ボクだけ普通な、気がしてきた。これは不利……!」


 耳をへにゃりとさせるメアリー先輩。

 それに三人で噴き出して、笑い合う。異世界で新しくできた友人は懐が広い。

 だからこそ、俺も隠し事をやめることにした。

 ここまでくれば、もう隠す必要などないだろう。


「じゃあ、暴露ついでにもう一つ。俺、実はこことは別の世界から引っ越してきたんだ」


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