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食後

「ふー、食った食った。

やっぱり新鮮な肉は美味いな。」


カルムが家に帰ってきてから、

5人で夕食を囲んだ。

今日狩ったばかりの鹿肉のステーキの横には

様々な野菜が並べられており、

貴重な胡椒で味つけされていた。

パンは硬めと柔らかめの2種類を

チーズと共に用意していて、

トウモロコシのスープもあった。

とびきりのご馳走というヒラードの

要望に見事に応えてみせたエレーナは、

満足そうにお腹をさする皆の顔を見て

笑顔を浮かべていた。

綺麗に食べられた食器を

ノーナとメアが片付けると、

頃合いだと言わんばかりに

ヒラードが話を切り出した。


「さて、腹も満たされたことだし

後は風呂に入ってゆっくりしたいところだが、

堅苦しい話を済ませておくか。

カルム、頼んだぞ。」


ヒラードがカルムに視線を送ると、

カルムは懐から取り出したこの街の

地図をテーブルの上に広げた。

大事な話ということもあって、

ノーナもメアもエレーナも

姿勢良く椅子に座り直した。


「今現在、男の出没情報があるのは

ノーナちゃんが遭遇したクレアの店前を

除くと3箇所しかない。」


3箇所のうちの一つは、

最初に出没したとされるタールズの店だ。

男はタールズの店で食事をした後、

その料金を払わずに逃走。

すぐにタールズ本人が追いかけたが、

男を見失うのにそう時間はかからなかった。

もう一つは、位置関係から考えて

ノーナが遭遇する少し前、

占いの客引きをやっていたラトリの弟子が

男に声をかけたところ、

逃げるように立ち去った。

そして、おそらくその数分後に

男は3人の人間を切りつけた。

場所はクレアの店から北へ数百m。

人通りの少ない路地だった。

母親と子ども二人が歩いているところへ

男が後ろから姿を現して、

治療所はどこだと聞いてきた。

ノーナと同様に怪しげな空気を感じた親子は

何も言わずに逃げようとしたが、

その背中を狙われて切られてしまった。

幸いにも命の危機に瀕することはなかったが、

体の傷以上に心への恐怖を刻み込まれ、

報告が届くのが遅くなった。

だから、男の目的が不明なことから

武力部隊は迂闊に動けなかったのだ。

ノーナと遅れてやってきた親子の証言により

男の目的の目星がついたので、

本格的に街全体が動き出した。


「男はノーナちゃんに治療所の場所を聞いた。

その後の親子にも同じことを聞いていることから

男の目的が治療所にあると判断し、

治療所を閉鎖、警戒体制に入り

治療所の全てを守る形となった。」


治療所を閉鎖してまで、一体何を守るのか。

その答えは簡単である。

ドラゴンの血を引いているフィレーテ、

もしくは大錬金術師クレアの作品であり

大医術者マリアの全てを受け継いだセヴァルだ。

ベオムールの街がいくら帝国から

切り離された場所とは言っても、

全ての情報が遮断されている訳ではない。

街の外から来た者が情報を持って

再び街の外へ出ることもあれば、

街で生まれ育った者が外へ行くこともある。

その機会が極端に少ないだけで、

決してゼロではないのだ。

ドラゴンの血を引くフィレーテも、

二人の偉大な人物と深い関係のあるセヴァルも、

外の人間にとってはこれ以上ない程に

貴重で手に入れたい存在なのだ。


「ただし治療所にいる他の者、

特に直接接触したノーナちゃんが

男の目的である可能性を考慮し、

それぞれに最低一人の護衛がつけられた。」


外に他の護衛がいる気配はないので、

メアやノーナ、エレーナの護衛は

ヒラードとカルムが務めるのだろう。

普段から一緒にいる家族が護衛なら

精神的にも安心できる。

ノーナがこのレーヴァンネ家に来たことも

おそらく代表たちの話し合いの中で

決定したことなのだろう。


「男の目的が治療所にあるということは、

現時点ではあくまでも仮説に過ぎない。

奴の目的が明確になるまでは

可能な限り家にいてもらい、

外に出る際には必ず俺か親父が

護衛につくことになる。」


ここまでの話を簡潔にまとめると、

今現在で男の目的として

最も有力と考えられるセヴァルと

フィレーテがいる治療所は閉鎖、

警戒体制に入り、他の者は護衛と共に

それぞれの家で避難することになったということだ。

さすがというべきか、代表6人による決断も

それに伴った武術部隊も動きも早い。


「不安に思うこともあるだろうが、

俺たち武力部隊に任せておけ。

こんな時のために日々鍛錬しているんだ。」


カルムもヒラード程ではないが、

武力部隊では期待の若人として

それなりの能力を持ち合わせている。

伊達に幼い頃から武術の鍛錬を欠かしていない。

剣を携える姿は16歳ながら

すでに剣豪の風格である。


「うむ。カルムの言う通りだ。

どんな奴が相手だろうと、

俺たちが必ずこの街を守ってみせるさ。」


すでに街の武力部隊も動き出しているし、

男の顔も背格好も共有されている。

たった一人の犯罪者を捕まえるなんて

そう長い時間は必要ないだろう。


「よし、話も終わったところで、

今日はもうゆっくりしよう。」


堅苦しい話が終わった後は、

特にやるべきこともないので

メアとノーナは一緒にお風呂に入った。

治療の後にシャワーを浴びていたので

そう汚くなってはいないが、

シャワー室では湯船に浸かることができない。

しっかりと全身を温めて

代謝を良くすることは、

健康の体を作るにも必要なことだ。

ヒラードも一緒になって

お風呂に入ると言い出した時は

さすがに全力で拒否して、

二人はお互いの背中を流し合った。

一緒にいるのがノーナで良かった、と

心から安らぐメアであった。

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