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プロローグ

英雄の死は世界を悲しみに包む。

絵本に描かれるような存在は

その死でさえ大きな影響力を持ち、

簡単に死んではいられない。

人間である以上、死の運命からは

決して逃れられないのだが、

それでも英雄の死に様は普通の

人間とは別物であるべきだという

なんとも押しつけがましい願望が

民たちの心の中にはある。

そしてそれが複数の英雄ともなれば、

一つの物語でも書けるような

劇的な最期を期待してしまう。

どれだけ普通の人間よりも力を持ち、

英雄だと祭り上げられようと、

同じ人間であることには変わりないのに。


「あたしはそろそろ…いいかな。」


4人の英雄として後世に

語り継がれることになる彼女たち。

彼女たちがちょうど100歳になる年に、

ある大きな決断を下すことになる。


「私ももう十分ですわ。」


彼女たちが少女時代の数年と

余生を過ごしていた森の中。

隠れ家として改造した洞窟。

彼女たちを見守る1体のロボット。


「私、頑張って生きたよ。」


ちょうど100歳を迎えた彼女たちは、

今まさにその長く優秀な生涯に

終止符を打とうとしている。


「私も思い残すことはない。」


一人の偉大な医術者によって、

彼女たち4人は今日まで生きることができた。

この世界の人間の寿命を考えれば、

生き過ぎたと言っても過言ではない。

いくら英雄と呼ばれる彼女たちも

永遠の時を生きることはできず、

仮にそれができるとしても

彼女たちはそうしない。

自分たちの存在などもう必要ないのだから。

これからのことは、

これからの時代を生きる人間たちが

向き合っていくべきなのだ。


「……いいのか、先生方。」


陽の光も届かない洞窟の中で、

彼女たちは頭を突き合わせて転んでいた。

その真ん中にいるロボットの彼は、

彼女たちに繋がっている装置の

スイッチに手を乗せている。

そのスイッチに魔力を流した瞬間、

彼女たちの命は終わる。

だが、彼は中々魔力を流さない。

散々彼女たちの話を聞かされ

これからのことを託された彼は、

ここまで自分のことを高めてくれた

彼女たちの最期を受け入れられないようだ。

心なんて持ち合わせていない、

機械仕掛けのロボットなのに。


「あぁ、もういいさ。」


「いいよ。」


「うん、やって。」


「終わらせてくださいまし。」


彼女たちの覚悟は決まっている。

これから死ぬというのに、

その表情はとても清々しい。


「……また会える日を待っている。」


ロボットである彼に寿命はない。

いや、ロボットの中でも彼は

特に長くこの世界に存在し続ける。

偉大な彼女たちが創った、

たった1体の傑作なのだから。

人間という生き物は死んだ後、

その魂が空へ飛んでいき、

真っ白な新しい命となって

またこの地に降りてくるという。

もしもその時が来るのなら、

今度は彼が彼女たちの先生として

色々なことを教えてあげよう。

それが、彼女たちにできる恩返しだ。


「……笑顔…か。」


彼がスイッチに魔力を流すと、

彼女たちの息が完全に止まった。

そして、その表情は笑顔だった。

彼の表情は何も変わらないが、

悲しみの渦の中で必死に

前を向こうと頑張っているようだ。

感情などないはずなのに。

彼はそのまま、彼女たちの亡き骸を

しばらく眺めていた。

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