蓮田兵衛物申す
男は遂に涙を流した。
泣き喚いたと言ってもいい。
その声は糺の森に響いた。
いつまで続いただろう、ふと気付いたら止んでいた。
男が話し始めた。
その声はこの日本最古の神社、下鴨神社の参道一帯に妙に染み込んで行く。
「わし蓮田兵衛も身内同士の争いにて主家を失った。」
「戻りたくても信用してくれん。」
「わしゃあ主人に従うただけじゃ。」
「今思えば何も考えず従うたのがいかんかったのかもしれん。」
「主人を諌めるのもあったかもしれん。」
「それからはなーんの目的も無く各地を彷徨ってな。」
「また、考える事ば避けておったわ。」
「飢えは怖いのう。」
「なーんも考えられ様になる。」
「飢えに耐えかねて身体ば売った女子ばみた。
孕ってしまってなあ。」
「こう言うた。」
「こんな私やがこの子が笑ってる姿を見たい。
それが許される世の中だとええなあってな。」
「今朝見たら共に冷とうなっとったわ。」
長谷部
「兵衛殿殿その子は?」
兵衛
「誰の子かわからん!」
「じゃがなあ、今悲しいと感じる事が出来るなら明日感じる事が出来んなるなら。」
「なあ、皆の衆一揆(平安時代から仲間と言う意味を指した)となって徳政令(借金取下げ)を勝ち取ろうや。」
「明日は死ぬ身なら先に相手を殺して生きたる。」
天生萬物興人、人無一物興天 殺殺殺殺殺殺殺
(人は天にあらゆる物を捧るに 天は人に何も与えなかった 然るに殺殺殺殺殺殺殺)
後の世に言う乱世の始まりであった。
1606年なんで後の時代の言葉ですが張献忠の七殺碑の言葉持って来ました。明末の大西皇帝ですね。中国で献とか忠付く名前の人大悪党多いですよね。
殺す相手が居なくなったと妃や子供まで殺したとか。
あっ、蓮田兵衛ですが室町無頼て映画実は私観てません。寛政の土一揆が武士出身の牢人が指揮した初めての土一揆でこれが乱世の始まりって言う認識は皆共通みたいですね。しばし、資料集めします。大悪党まで辿りつけるかな?