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中遠一揆 決戦

遠江にて今川範将地元悪党と結び一揆との事。

遠江守護代甲斐敏光出陣。

寄騎 朝倉教景(敏の字の偏諱を義敏敗走に伴い返還)


「教景殿御助力かたじけない。」


「なんの父上が亡くなられて間もない。

家老に過ぎぬが少しは力になれよう。」


「我が遠江の事なればなんとか致す所だが相手はあの今川なれば。」


「了俊殿から数えて5代先代も斯波と戦って討ち死。」

「なんとも凄まじきかな今川。」


「そうじゃ。もう地元を抑えられておったわ。

こちらの数は?」


「甲斐殿が7千騎我が3千騎急ぎ集めた1万騎でごさるな。」


「そうよ。」

「相手は8千。山と湖に挟まれた堀越に布陣住みじゃ。」


「では、このまま突っ込むは無策。」

「一旦布陣し策を練りましょうぞ。」


「そうじゃな。」

「だれかある?全軍停止。休憩じゃ。」


教景の陣

籠いっぱいの豆を抱えて教景がにこにこと歩いている。

ときおり鷲掴みに豆を掴み頬張る。


「おー田中の昌太補給いつもご苦労さん。

今回は良く頼むぞ。」


「殿。準備は万端でござるよ。」

「そかまあ豆食え。」

「今回は味噌の上澄みを掛けて炒めてみたぞ。」


「これは香ばしい。」

「当たりでござるよ。実に美味い。」


「そうかそうか。」


「おーい皆こっち来い。」

「豆ば食おうぞ。」


「おーありがたい。」

皆手を止めて集まる。


「おー食え食え豆食えたんと。」


「なんじゃ梅田。

腹空いてないんか。」


「殿傷が痛うて。」


「あー梅田は物見で矢を受けたんだったな。」

「血は止まったか?」

「見してみい。」

「うむ、止まったな。」

「交換いたそう。」

石灰と牡蠣の殻の粉を混ぜた物をかぶせ(よもぎ)を乗せる。

布を巻く。


「血は止まっておる。」

「痛いか?」

「ツボを押してやる。」

首の側面中央のツボをひとしきり押す。

「よし、で、これは内緒じゃぞ。」

(ささ)じゃ。」

「物見ご苦労。

おかげで敵の布陣が分かったわ。」


「よし。

弥九郎は食っておるか?」

「何泣いとるのか?」


「殿

兄貴が先の戦で亡くなって。」


「うん。あれはすまんかった。

私もまだまだじゃ。」


「兄貴の嫁が俺に嫁いだんじゃが。」


「おう。そうか。」


「来ないだまで姉さん呼んどった人じゃきになんとも変な感じで。」


「嫌いか?」


「とんでもねえ。」

「おれには勿体ない嫁じゃ。」


「そうか。

励まねばな。」


「そうじゃ。

俺は兄貴以上に手柄をたてにゃならん。

俺の嫁になって良かったってなあ。」


「弥九郎。」

教景が弥九郎をバンバン叩き抱きしめる。

「まっこと。」

「まっこと。」

「良い男じゃのう。」

「わしが嫁になりたかったわ。」


「なんじゃ殿も泣いてござる。」


「皆の衆ーー。」

大音。

「皆の衆ーー。

まっ事すまん。

わしは。

わしは。

良い家臣をもったー。」


周囲から一様に挙がる声

「おーー。

気にすんなーー。」

「我らの殿は良き殿じゃ。」

その意気に感ず。


「まあ

食え

食え

幾らでも食ってくれ。」



幕内

「守護代殿」


「なんじゃ教景殿?」


「策をこうず。」

「物見の結果敵今川範将は当方が全軍騎馬で駆けつけた事を見越し山と湖の間の狭地に布陣。」

山湖共に周り込む事叶わず正面しか攻撃面が無い状態を策す。


そうじゃな。

ややこちらが多勢と言えど完全なる消耗戦。

転び方では向こうの勝利とてありうる。


前提を覆しまする。

山に入ります。


なんと。

騎兵で入れる訳が無かろう。

愛馬を捨てると申すか?


捨てる訳ではござりませんよ。

輜重隊に預けます。


なんとそれで納得するものか。


納得致しました。


そうか。

・・・羨ましい事よ。


これより朝倉教景2千5百にて山に分け入り敵後背に周り込みまする。

狼煙を合図に突撃をお願い致します。


分かった。


では、これにて。


朝倉教景。

人心掌握恐るべし。



朝倉教景陣

教景

では、皆愛馬に別れを。


おー。

必ず戻るぞ待っておれ。

田中殿愛馬を頼む。


おー。

ご武運を。


教景

(ナタ)持てい。


おー。


2刻後

敵後方本陣


殿突然敵が山側から登場。

まっすぐ本陣に迫っております。


何?

敵に歩兵はおらぬはず。

裏切りか?

本陣直撃にて

今川範将討ち死。



時は移り府中


朝倉殿


おー二宮殿


今回の沙汰じゃが。

今川範将の堀越郷はそのまま甲斐殿に下賜されましたぞ。


まあ、遠江守護代は甲斐殿当たり前じゃな。


良いのですかな?


わしにとって大事は

朝倉強しとの評判と。

二宮殿失礼急ぎまする。


山本村

あばら屋


失礼。


おー殿。


弥九郎元気か診にまいった。

布を取るぞ。

溢れる黒い血。


殿。

無念でござる。


何を言う弥九郎。

そなたはわしの背を守って代わりに。


良いのでございます。

殿のお役に立てましたならば。


何を言う。

なあ、奥方。

弥九郎こそ誠の武士。

貴女の夫にこの教景救われ申したぞ。



逝ったか?

はい。

最後までありがたや。

ありがたや。

妻となってくれてありがたや。

産んでくれてありがたや。

育ててくれてありがたや。

一緒に飯を食ってくれてありがたや。

仕えられてありがたやと。


足る事を知るか?


何とおっしゃいました?


いや、弥九郎こそ誠に仏の道に至った者じゃ。

ここに橋を架けよ。

橋の名前は弥九郎橋。

家族には管理代として橋の両岸の土地を与える。

やがて栄え宿場町となろう。


御慧眼です。


関等作るでないぞ。

弥九郎の志の様にありがたく通るが良い。


寛政2(1460)年8月斯波義敏の子息松王丸(後の斯波義寛)が廃され斯波氏家督である武衛の地位に堀越公方足利政知(足利義満弟)の執事渋川義鏡の子義兼が斯波義兼となる。

朝倉教景義兼の保護者として斯波家の統帥権を得る。7箇所の代官職を賜わるも直属兵は4百程だったと言う(応仁記)

これにて斯波氏も分裂合い争わん。








今川と渋川の因縁が結構凄くて、一年違って義兼が遠江守護を取り上げたから中遠一揆が起きたって説もありますが就任してすぐは無理があると思ってます。

後に甲斐氏は憎い義敏と組んでまで教景と戦い続けますが教景の存在感が増すまでは良好な関係です。

教景が傷ついた者を治療しその死を悼み朝倉の兵卒が教景と水魚の交わりで忠義を尽くしたと書いてありましたので。

今回の戦法はモンゴルがホラズムを滅ぼした最終戦からです。実際にやると遭難する可能性が,高いから想像出来ない訳です。


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