視線を同じゆうす
敏景はそのまま進む。
「おう、堀江。」
「あっ、殿。」
「これから調練か?
皆と話でもするか。」
「はっ、皆も喜ぶましょう。」
「うむ。」
「おーふたつまた(二又村)の左兵衛・坂下の丹沢・槍の丹波」
「煮炊きか?」
「おー殿先ずは腹ごしらえじゃ。」
「そうかあ、山岸、子が生まれたそうなこれ少ないが。」
「5貫!助かるわあ殿物入りでのう。」
「百地、何を入れておる。」
「牛蒡かあ。いい出汁出そうじゃな。」
「殿、芋蔓と味噌だけじゃのうて色々入れるとな。」
「まか不思議、ええ味でるんじゃ。」
「ほうか。お腹壊すなや。」笑
「牛蒡は笹切りにしてちと炒めてから煮た方が、出汁出易いぞ。」
「田中のとこは行者ニンニクか。また、デカいのとれたの。」
「殿。田圃ん脇のがよう大きゅうなってな。雨の後抜いたとよ。」
「うんうん。精つきそうじゃ。」
「三橋のとこは竹の子かあ。」「えぐくないとええのー。」
「殿、日の出前に採って玄関に晒しておいたからのう。」
「味みていくか?」
「良いのう。」
「うむ、ある程度大きゅうないと歯応え無いからのう。ちょうどええ。」
大音量「皆の衆ー」
「なんじゃ。なんじゃ。」
「皆差し入れじゃ。鯣と煮干じゃ敦賀の恵みよ。」
「全部の鍋の分あるからの。」
「あー藤太・馬田・大谷悪いが配ってくれんか?
1番大きいのとって良いぞ。」
「待った。わしも手伝うから大きいのは貰いじゃ。」
「兵衛がっつくな。いっぱいあるでな。」笑
「では三橋の鍋から頂くかのう。」
「殿まだ出汁が出とらん。」
「そうか。鯣細かくしてくれ。はよう出汁出るよに。」
「時に堀江。」
「はっ。」
「今度の戦其方の本家が出る様じゃ。」
「まあ、代官職を甲斐に取られましたので仕方なきかと。」
「後、殿笑。わしは堀江の庄に住んだから堀江と名乗っただけじゃ。」
「それより殿隠しておいた2百貫文盗まれてしもうて。」
「またか、国の中心に隠せいうたぞ。」
(このやりとり手紙が実際に残っています。笑)
「殿、煮えた様ですじゃ。」
「三橋すまん馳走になる。」
「おーやっぱり敦賀のスルメじゃのう。」
「餅を追加で入れよう。」
「それはまた有り難き。」
「しかし殿は皆を良く覚えてござるな。」
「当たり前じゃ。
名前も知らん奴にこの命預けられるか。
なー皆宜しくなあ。」
「おー(怒号)任された。」
朝倉敏景
この者皆と同じ視線にて交わり皆良く慕い戦ったとあり。
あとがき
通称英林孝景。元服して教景。この時の名前は敏景。幼名小太郎。父親が長生きの多い朝倉家では珍しく早死にしており祖父教景に育てられる。
戦場では常に家臣と共に食事をし家族の様であったと言う。