糺の森 寛政の土一揆 決戦
穂積
「あちらさん近づいて来やしたで大将。」
「うむ。随分と遅かったな。」
「まあ、大所帯になっては動きも悪うなる。
物見は放ってあるな。」
穂積
「おうよ。順次報告が入っているから敵さんの位置は丸わかりよ。」
「では、伝令で残してある1部隊に準備をさせよ。
突撃の合図をする。」
半刻後
「敵の頭が伏兵の脇を抜けた。」
「法螺貝を吹け。」
「ブォーオーオー」法螺貝の音が雑音領域の中妙に響く。
4部隊2百の騎馬が斜め後方より駆け抜け撹乱。
都合3回の突貫が終わった。
「よし、勢いが止まった。」
「春秋の時代より騎馬の主芸は敵の撹乱、馬が向かって来て平静でおられる者等居ないわ。」
「止まった人等良い的でしかないのう。」
「伝令」
「森より部隊を下げよ。」
「所司代殿赤松殿にドラを待つ様連絡。」
物見1部隊50騎が慌ただしく敵の位置を報告しては去っていく。
それを聞き地図を見つめる道賢。
敵の駒の位置が最初の線にかかる。
ドラ一つ
「ぐわわわん」低周波の金属音がまた響き渡る。
下鴨社に布陣した2万の兵より1番高くゆるやかに弧を描く矢が放たれた。
飛距離があり雨の様に降り注ぐ矢だ。
仰角甲3射6万の矢の雨。
その間も物見は慌ただしく陣をおとづれ敵の位置を報告する。
「物見に50騎も割り当てたはこの為よ。」
「しかし、動くをやめぬか。」
「まともでは無いわ。」
道賢がまた鎮考する。
ドラ二つ
仰角乙3射ややゆみなりの矢が放たれる。
通常は味方に当らぬ様ここまで。
しかし、今回間に部隊等配置していない。
ドラ三つ
仰角丙3射
かなり水平に近い1番威力のある矢が放たれた。
この矢は身体に深く刺さる事だろう。
「さて、引き陣じゃ後は功に逸る赤松殿に任せるとしようか。」
蓮田兵衛
「あれはなんじゃ?」
誰かが叫んだ。
空に黒い点が浮かんだ。
誰かが突き飛ばした。
周りから悲鳴が聞こえた。
何か雨が降ってきた。
吾作爺がわしを庇ってくれていた。
その曲がった背中に矢がハリネズミの様に刺さっており血が雨の様にしたたっていた。
周りは?
「さすがじゃ狂った様に前に進んでおる。」
「そうじゃのう。」
「あの苦しみに戻りたくは無いわな。」
「しかし、これでは削られる一方じゃな。」
「わしの指示が全体に届き難い弱みがバレておる。」
周囲に声を掛けある程度の人数を集めた。
「皆の衆敵の頭を潰す。」
「あそこに翻る旗がみゆるか、一気呵成にあの旗を目指す。」
「わしらの志の為に。」
「おう、一揆(仲間)の志の為に。」
半刻後
「大分数が減ってしもうたがもうすぐ旗じゃ。」
「皆。後一踏ん張りじゃ。」
「はっははは。」
笑いが込み上げて来る。
「嘘じゃろう。」
陣なんか無かったんか。
さすが天下の足軽大将。
わしらをこちらに進ませる為だけに旗を立てたか。
とことん読まれておったわ。
わしは下手くそな子供が笑っている旗をただただ抱きしめた。
もう動けなかった。
寛政3(1462)年11月蓮田兵衛 淀にて処刑さる。
乱世の始まり蓮田兵衛が退場しました。
日本最大内乱応仁の乱が始まろうとして居ます。
その前にちょっと遡って長禄の合戦(1458年)を書く予定ですが相変わらず説明が難しいです。
近代戦程情報・補給が重視され全部隊の半数が実戦部隊という事もあるそうです。
今回は魏の曹操の道具の中に一定の距離で太鼓を叩く距離計の様な太鼓を打つ人形がある事から距離を測って弾幕みたいなのを張ったのではと推測しました。