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プロローグ
最初に声を掛けてきたのは彼だった。
「俺はお前の絵、好きだよ。なんかすごく惹かれるものがある。」
誰からも認められない僕の絵。激しさばかりが目立ち、人が好む様な美しさはどこにもなかった。それでも僕は自分の中から湧き上がる言いようのない想いをキャンバスに叩きつけていた。僕にはそれしか出来る事が無かったから。
「お前自身は涼し気なのにな、お前の描く絵は全く逆だな。そのギャップが面白い。」
内心、浮かれてた。初めて僕の絵と僕自身を見ようとしてくれた人だったから。
彼の名は鳴瀬明良。
たとえこの先どんな運命が待ち構えていようとも、偶然ではなく必然として出会った人だった。