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天色の王子  作者: 櫻塚森
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天爵

ケイリルは、魔法袋に転送されてくる部品を地上に広げ満足気に種類分別している。それをジュンリルも手伝う。

「うおぅ!これは!」

時々子供らしからぬ雄叫びを上げる主にマイケルは仕方ないなぁと笑っている。

他の三人の護衛騎士は周囲の警戒に当たっていた。


ダンジョンは厄災スタンピードの影響を受けないため、第一階層は、各地域の避難場所に指定されることが多く、一週間程度の備蓄を備えている倉庫も完備されている。定期的に備蓄の入れ替えや点検をするのは各ダンジョンを保有する貴族の役割とされているが、他のダンジョンと違い魔道具の部品が多くドロップされるこのダンジョンは一部の者にしか人気がなく、ダンジョン収益は余り期待出来ない。

「もっと魔石がドロップしてくれたなら、話は違ったのに。」

伯爵一家の心の声である。そのため、新たな階層の発見と現れる魔物の報告は冒険者の探究心を刺激する機会となり引いては収益に繋がる可能性が高いため喜んだ。しかし、余りに強い魔物が出現したとなると冒険者が二の足を踏むことになる。

頭を抱えていた領主スタインウェイ伯爵は王家からの申し出に飛び付いた。

もし、王立ギルドの冒険者の誰かが階層のボスを倒してくれたなら、その階層の魔物は一割強パワーダウンすると言われているからだ。しかし、領主である伯爵は当初王立ギルドの実力者であるハヤテ一行が痛手を負い帰還したと聞いた時は膝を付いて嘆いた。

そして、次にもたらされたのは幼い王子達の出陣。もし、王子達に何かあれば、自身の首が飛ぶのではと一族で危惧していた。なので、王子達も無事、階層のボスも倒されたと聞けば別の意味で膝を付いて泣いてしまったのである。

「殿下方を出迎える用意を万端にしなくては。」

スタインウェイ伯爵は家族と泣きながら作業に移った。


第一階層にて作業をしている三人。その一人であるジュンリルは手を止めた。

「どした?」

「なんか、胸がドキドキ、ワクワクしてる。」

自分の中に感じたことのない高揚感にソワソワするジュンリル。

『たぶん、ジュンリルの使い魔が見つかったのよ。』

ケイリルの元に現れたのは花弁の羽根を持つ小さな妖精。

「ヴィラ、起きたの?」

ケイリルの使い魔だった。妖精のような姿をしているが、精霊などとは違う魔物である。正体を言えば植物系の魔物である。可愛らしい幼女のような姿をしているのは本人の趣味でもあった。寒さに弱く、ケイリルがまだ子供のため暖かい環境でなくては活動の幅が狭い。

「ヴィラ、るっくんが近くにいると力出ないでしょ?もうすぐ、るっくん、帰ってくるよ?」

氷雪系の魔力を持つルキリオの側ではヴィラの本来の姿は出しにくい。首を傾げる幼い主の頭に乗る使い魔は大きな欠伸をした。

『結構寝たから大丈夫。それに新たな仲間の誕生には立ち会いたいじゃん。』

此処までの会話はジュンリルには聞こえていない。ケイリルの言葉は聞こえているが自分の使い魔以外の使い魔の言葉は基本理解出来ない。

各々の使い魔を通して相互理解をするしかないため、使い魔の居ないジュンリルには分からないことだから、護衛のゴトーの使い魔を通して訳してもらおうとした時、

「ジュンリルの使い魔がくるって、ヴィラが言ってる。」

ケイリルの言葉はジュンリル以外も驚かせた。


ワクワクとソワソワ、そして、ちょっぴりの不安を胸にジュンリルとケイリルは兄達を待っていた。

「ケイリル!ジュンリル!」

長兄の声が遠くからした。

まだ、肉眼では豆粒ほどだったが、二人が兄の声を間違えるはずはなかった。

立ち上がった二人は自然と手を繋ぎゴクリと唾を飲み込んだ。

「うわっ!」

ルキリオの声がしたと同時にキラリと光る丸いものがバウンドしながら向かってきた。

「「!」」

バウンドしながら向かってくるのは卵だ。正確な球体ではないためバウンドする度に軌道は変わっていくが確かにジュンリルを目指している。

地面にぶつかり跳ねる度に殻が飛び散っていく。

ジュンリルは、泣いていた。

手を伸ばしてそれを抱き締めたくて一歩二歩と進んでいく。

そして、二メートル程先で最後のバウンドをした卵の中から出てきたのは青い球体で、羽根のような耳のようなモノを羽ばたかせながら飛び込んできた。

「アルジー!」

その声は、ケイリルにも聞こえた。もちろん、後方にいるショーンにもルキリオにも聞こえた。

ジュンリルは、その球体を抱き止めて、勢いに負けて尻餅を付いた。

慌てて駆け寄る護衛騎士。

ショーンがその動きを制する。

球体には目があった。瞬きをしていて、小さな口らしきものもあった。

冷たくて硬い体の丸い使い魔はジュンリルに言った。

「クルノオソイ、ズイブンマッタヨ!」

やはり、主以外に聞こえないはずの声が周りにも届いた。

「そっちこそ、何処にいたん?さみしかったんやで?」

主の言葉に泣き出す使い魔。

「ボクモサミシカッタ!ワーン、アルジー!」

魔道具みたいな使い魔だけど魔道具ではないのだと側に立つケイリルは思った。


お互いに泣き疲れたジュンリルと使い魔を抱き上げたゴトー。

「取り敢えず、目的は果たしたから出ようか。」

ショーンの言葉に頷く面々。

「ルキリオ殿下の活躍で第六階層への階段も出現しましたね。」

「それらの探究はギルドに任せよう。何でジュンリルの卵がダンジョンにあったのか、何か、他の使い魔とは違うのも気になるし。」

王子達一行は、早々ににダンジョンを後にした。

「久しぶりにベッドで眠れるな。」

スタインウェイ伯爵家に一泊して王城に戻る予定だった。

ジュンリルはまだ目を覚まさない。

「寝すぎじゃない?」

心配するケイリルにショーンが答える。

「ヤーヌが言うには、今まで離れていたから、お互いの魔力を混ぜて安定させてるところらしいよ。」

用意されていた部屋にルキリオが入ってきた。

「城には、速達出してきたよ、」

「ありがと。」




その日、ボクは母上達や兄弟、みなの使い魔も一緒にピクニックをしとる夢をみたんや。

えーと、父上もいた、わすれてへんよ!

みな変成期も越えた大人になってて、けど、どんな姿やったのかとか、覚えてへんけどカッコよぅなってるのは決まってる、でも、絶対兄弟には違いなく。めっちゃ幸せな夢で、覚めたくなかったんやけど、きっと目が覚めても幸せなんやろうなって思たから嬉しい気持ちで目ェ覚めた。


これから、よろしくね、マイクン。



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