8話 着物自慢
再会を果たしたレイとエリカは天守から夜空を見上げていた。夜空には満天の星空と輝く月。それを眺めながら酒を片手に二人で話している。
そして東方の着物に身を包んだエリカはレイに改めて自己紹介をするのだった。
「わたしはエリカ・スメラギ。改めてよろしくね。レイさん」
「お前、子供の頃から〝さん〟づけなんてしたことないだろ。気持ち悪いな」
「今はこの都の姫としての挨拶だよ。……っで、どう?」
「……どうとは?」
「ほんと女心がわかってないよね、レイ兄は」
「いや、だからなんのことだよ」
「ふん、もういいよ」
エリカはふてくしながらレイの顔を一切見ようともせず、レイもどうしたらいいのか、わからず黙り込むのだった。
(本当に女性を扱うのは難しいな。ネムの時もそうだったが……)
そう悩むレイには考え込む癖があった。赤の他人ならここまで悩み考え込む必要もないのだが、自分にとって大切な人には嫌われたくないという気持ちが強いからだ。
「な、なあ、エリカさん、そろそろ口きいてもらっても?」
「それで? 何で怒ってるかわ――」
「着物、似合ってますね」
「レイ兄、よく頑張りました」
エリカは満足そうに微笑む。
レイに着物を褒めてもらえたのがよほど嬉しかったのだろう。
そもそも本来の趣旨から外れているような気もする。もともと二人で酒を片手に互いの今後について話し合うためで、決してエリカの着物自慢のためではない。
エリカは完全にその趣旨を忘れ一人で淡々と話し続けている。
自分の生まれ育った小さな村の話。
レイと出会った日の話。
そして追い出された日から、今までどうして過ごしてきたのかをすべてその時の心情を交えて話すのだった。