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20話 帰還

 ヘルへイムとセシルを見送った後、エリカとレイは天守に戻るのだった。


 エリカは準備があるからと言って再び自室に戻ったが、何の準備かは検討がつかない。


 レイ自身もフランに帰還する準備を整え、転移装置まで足を運ぶのだった。


 それに気づいたコクエイは大きな鞄を抱えレイのもとへと駆け寄ってくる。


「レイ殿! お待ちを、これをどうかお持ち帰りください」


「何が入ってるんだ?」


「そうですね、お土産が入っております。姫は諸事情によりお送りできないとのことなので、せめてこれだけでもと」


「そうか、ありがとう。中身を楽しみにしておくよ」


 レイはコクエイから大きな鞄を受け取るが、かなり重量感があり驚くのだった。


「これ、土産としては重くないか?」


「そうですね、このスメラギに住居を置いている者でもなかなかお目にかかれない代物ですので……あ、それとスメラギと行き来が楽になるよう、フランまでの転移装置も設置させて頂いたので、何かあればまたお越しください」


「……どこに?」


解決屋(ユナンシア)の部屋の隅に設置させて頂きました。これでいつでもスメラギにこれますので」


「はぁー、わかったよ。解決屋に帰ったら掃除しないとな……」


 レイは城の内部にある転移装置まで再び歩き始め、それに手を触れるのだった。


 その瞬間、眩い光がレイを包み込む――そして目を開けるとそこは解決屋の会談室。


 一日ぶりの帰還。


 レイは深呼吸しながら、会談室のソファにゆっくりと腰をかけるのだった。


 ネムの追悼式後から色々あり過ぎて脳がその処理に追いついていない。


 スメラギに訪れ、絡まれ、そして天守連れて行かれてはエリカに襲われる。


 今日の朝も熟睡していたのに起こされ、豪勢な食事を取り、商人のヘルへイムと少し会談した後、セシルを召喚したおかげでこの少年の姿。


「どう話したらいいんだよ」


 フランの連中にどう話したらいいのか悩むレイは頭を抱えるのだった。


 このフランに住む人はレイが何か訳ありだとわかってはいるが、元魔王だということは知らない。


――そもそも知らせるつもりもない。


 レイが元でも魔王だと知ったらどんな反応するのかは明白だ。


 皆、魔族と敵対関係にある人間だ。


 これだけはいくら時間が経っても変わらない。


 フランで目立つ行為は魔力が完全に回復し、青年の姿に戻るまでは控えたほうがいいだろう。


 しかし、どうするべきか……。


 この姿では依頼の受付さえできない――エリカに頼むべきかレイは悩んだ。


 その時、スメラギから持ち帰った大きな鞄がごそごそと動く。


 レイはこの鞄の中身を知らない。


 コクエイも詳しいことは口にしなかった。


 唯一、口にしたのは『なかなかお目にかかれない代物』という一言だけだった。


 鞄が何やら勝手に動いているような気がする。


(いやぁー、まさかな。俺の見間違いだろう)


 そう見間違いだとレイは思い込む――きっと、疲れが溜って幻覚でも見ているのだと……。


 だが、間違いではなかったとレイは確信した。


 動き続けるその鞄はやがて会談室に置かれている物置に衝突し、中から小さな声が漏れるのだった。


「――痛い、し、しまった」


 レイはこの声に聴き覚えがあり、恐る恐る鞄に近づいて行く。


 一歩、また一歩と。


 そして、鞄を開けると何やら人の顔らしきものが見える。


「ふーん、まあ、後でちゃんと確認するか」


 レイが開けた鞄を再び閉めようとすると女性が声を上げる。


「何で閉めようとするのよ! レイ兄!」


「いや、何でってそりゃー、ね! エリカがこんな鞄の中にいる訳ないしさ。コクエイも『諸事情でお送りできない』って言ってたからな、だからこの荷物を送り返そうかと思ったんだが」


「そんな寂しいことを何で言うの? レイ兄から離れたくなくてここまでしたのに……」


「なら、普通についてきたら良かったじゃないか」


「……そ、それは……反対されると思って…………」


「まあいいさ、俺もちょっと困ってた所だ。金は出すから手伝ってくれ」


「うん!」


 エリカは満足したかのか張り切っている様子だった。


 レイが玄関出てすぐ横にある依頼受付ボックスの確認をエリカに頼むと早速走り出してはすぐにそこまで向かうのだった。


 エリカが手に持っていたのは、かなりの量の依頼書――巨額の依頼から日課のような依頼まで数多く寄せられていた。


 それを見てレイは驚愕する。


 一日解決屋を空けただけでこの量なのかと。


 どう考えても一人でこなせる量ではない。


 そう考えればエリカがきてくれて助かったのかもしれない。


 レイとエリカは早速机の上に置かれた様々な依頼に目を通すのだった。


 先に簡単な依頼からこなし、後に巨額で大変そうな依頼をこなすことにすることにした。


 ただ依頼に目を通している限り、地方からの依頼も多々あるのが目につく。


 リゼル王国に住む者の依頼や辺境の町や村、様々な箇所からも……。


 ネムと過ごしていた際は、リゼル王国の住民達からの依頼なんてなかったはずだ。


(何で急に……?)


 レイは疑問に思うのだった。


 セシルがリゼル王国で働きかけてくれたのかとも思ったが、絶対にそれはない。


 理由としては今朝、リゼル王国に向け発ったばかりだからだ。


 なら、どうしてか……。


(まあ、わからんことを考えても仕方がないか)


 レイは一旦忘れることにした。

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