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Chapter 1 - 平凡な日常の中 (END)

みんな帰宅する時間になった。

日差しは黄色く変わり、空は燃えるような赤に染まった。

各々自分のギターとドラムスティックを鞄に入れて音楽室を出た。


”はぁ~、今日もいい一日だった!ドラムも思いっきり叩けたし少し踊りも覚えたし本当に楽しかった!”

キムは両手を持ち上げて伸ばしながら言った、いつものように彼女は笑顔だった。


”オーバーキルで覚えたあの興味深いパフォーマンスはその場のノリでやってもいいからすごく便利そうじゃない?もちろん、アジュールみたいに緊張してその場で動けなくなったらなんともならないけど…”

私は首を伸ばしながらアジュールの脇腹を指でつんつんと指しながら話した。


”う、うぅ…でも色んな人たちの前で演奏すると思うと上手く体が動かないんですもん…”

アジュールはぎこちなく笑いながら私を見つめながら答えた。


”後でアジュールには大勢の人の前で演奏のイメトレしてあげないとね。ずっとこのままじゃ後で何かあるかもしれないから。”

ウィットニーはいつものように分析力が早いのであっという間に’観衆恐怖症’という問題から'イメージトレーニング'という回答が出された。


”おお、結論出すスピード早いね?”とウィットニーを褒めると顔をそむけて咳払いをした。


”当たり前でしょ?私こう見えて優等生だから…”

ふふふ、やっぱウィットニーはツンデレなんだよな。

少し後、道路側でバンバンと警笛を鳴ら音がしたと思ったらいつの間にか欧州製最高級セダンが現れた。


ウィットニーはそれを見るなり歩きを速めて最高級セダンの後ろ席のドアの開いた。


”それじゃ、またね。”


”また明日ね、ウィットニー!”

みんなが手を振りながらウィットニーを見送るとウィットニーは車に入ってドアを閉めた。車はブオンとエンジン音を出したと思ったらいつの間にか遠くにある信号に引っかかていた。


”さすがブリタナ家、お金持ちなんだから…”


”そうですよね、どう見ても高い車に見えますし…”


”それにあれ、どう見ても高い車じゃないですか…”


みんながうらやましそうに遠くで走っている高級セダンを見つめながらそれぞれの感想を口にした。


.


.


.


ウィットニーが帰るとみんなグラウンドのベンチに座ってアイスを食べながら各々のスクールバスに運転手さんが来てエンジンをかけるのを待っていた。


私たちはそれぞれ違う味を食べながら何も言わないで沈んでいる夕陽を見ながら時間をつぶしていた。


”イチゴ味ってそんなにおいしいの?アジュール。”


”はい、何と言いますか…さっぱりとした感じがいいんです。”


”へぇー、パイナップル味のアイスもさっぱり感は悪くないんだけどね。”

キムは会話に割り込んできてにっこりと笑った。


”それが、パイナップル味は味が強すぎて食べづらかったんです…”

アジュールは少し申し訳なさそうにぎこちなく笑いながらキムを見つめた。


”へぇ、でも一口だけ食べてみて!”

キムはそれでもアジュールの反応を見たかったのか、アイスバーを持った手をアジュールに差し伸べして笑った。


”こら、当たり強すぎるとアジュールに迷惑だからね?”

どうしてもキムの勢い強い態度がアジュールの推しが弱い態度がぶつかり何が起きるか心配になった。


”だ、大丈夫ですよキヨさん。じゃあ、一口だけ…”


パクッ


”モグモグ…”

アジュールはパイナップル味アイスバーを一口かぶって味を感じていた。


目を閉じてそのまま味見して少し微笑んだ。


”おいしいです…!”

アジュールが見せた明るい笑顔がみんなにも広がり全員微笑みながら口をもぐもぐしていた。


”おぉ、本当に?後でこのアイスアジュールに買ってあげるよ!”

キムは自分が好きな味を一緒に好きになってくれる’友達が’できてうれしかったのか、今沈んでいく太陽よりもっと明るい笑顔を見せながらアジュールの手を握った。


”そうしてくれるととっても嬉しいです…!”

そういうキムの話を聞いたアジュールは頷きながら微笑んだ。


私はその温かいシーンを微笑みながら見つめていたら頭の中に一つ浮かんだものがあった。

それはサリバン先生が落とした’新聞のスクラップ’だった。


そこにあったスクラップの中で[アンチインディーズバンドグループがソーシャルメディアに道場、それによる人身攻撃の恐れが…]と書いてあったのが気になり真面目た。


もし学校側が私たちを守ろうとせずにバンド部を解散させようとしたり活動禁止令を出したらどうなるんだろう…?


私は他のバンドメンバーの意見が聞きたくて学生用タブレットでネット検索をして記事を見つけた。


”ふん?何を調べてるんだ?”

キムは私がタブレットを取り出してネットで検索している姿を見て内容が気になったのかスッとタブレットの画面を見ようと顔を近づかせた。


”あ、最近’アンチインディーズバンドグループ’ってものができたらしいんだよね。ここ最近インディーズバンドが犯罪かスキャンダルに巻き込まれることが多いせいで一部の人たちがインディーズバンドを犯罪組織扱いしているみたい。”


”変な話ですね、だからってすべてのインディーズバンドが犯罪を犯しているわけでもないのに…”

アジュールは首をかしげながらそう答えた。


キムはタブレットの記事を読んでみては首を左右に振りながら”まさか~!私たちが何か悪さでもした?怪しい薬でもしたの?それともセクハラでもした?私たちには関係ないことだって!”とみんなを安心させようとした。


”もちろん私たちは何もしてないけどネットの人たちはすぐ一般化するから。もし学校のバンド部が何か問題になって噂にでもなったら…”

私はそれ以上考えたくなくて言葉を切ってため息をついた。


”まさか、ネットの人たちが学校を攻撃するはずないでしょう?もし攻撃されるとしても私たちはフィリップス総合学院が誇る生徒なんだからきっと守ってくれるよ!”

キムはそう言って静かに”多分…”と呟いた。


”そう願うしかないね。”

私はそう言ってため息をつけ始めた。どう考えても学校側が私たちを守ってくれるという確信が持てないんだよね、昔あるクラブが暴力事件を起こした時はすぐクラブを解散させたくらいだし。


そういうことがこのバンド部で起きるなら私たちの小さなたまり場が消えるということになる、私はまだ少し不安だったけどキムがそんな私を”まぁまぁ、大丈夫だって!”と安心させようとしてくれて少し気が楽になった。


少しだけだけど信じられる友達がいるよ言うのがすごく安心した。お互い頼りながら生きれるそんな幼馴染が隣にいるから…


”はいはい、わかった。もう心配はしないよ。心配しなきゃいけないのは他にもあるからね。”


”そう、新入生歓迎会…うぅ、大勢の前に立って演奏すると思うと体が冷える気分です。”


”ええ~?春なのにそんなに冷えるの?”

そんなキムの言葉にみんな大きい声で笑った。


そしてみんながアイスを食べ終わり、のんびりと音楽を流したままグラウンドで訓練しているアメリカンフットボールチームを見ながら時間をつぶしているとしばらくしてバスのエンジン音が聞こえてきた。


それはつまり家に帰る時間になったという意味だ。

みんなゆっくりと立ち上がりバスへと向かった。


”じゃあ、また明日。”


”うん、また明日~!”

キムは私を違うバスに乗るので挨拶して朝の時のようにアジュールと一緒にバスに乗った。


”はぁ、家に帰ったらギターの練習しないと。作曲のついでに…”


”キヨさんはいつもバンド部のために頑張ってますよね。”

アジュールはそういう私の姿を見て尊敬するように褒めた。


”もちろん、たまにクラブ活動時間にサボりながら来ないときもありますけど…”


”うっ…”

もちろん、その後にこんな痛い話もされたけどね。

でもめんどくさい時もあるから仕方ないでしょ、めんどくさくて行きたくないときがあるのをどうやって我慢すればいいんだ…


”それはそれとしてさっきの話ですけど…アンチインディーズバンドグループがあるんでしたっけ?”


”うん、路上ライブとかライブハウス講演中にそれを妨害して’正義実行’をするとかなんとか…”


”悪者ですね、なんでそんな行為ができるのか…”


”さぁ、私もその人たちの考えはよくわかんないや。”

もちろん、それは嘘だった。

薄っすらだけどどうしてこんなことをするのかはよくわかっている。


インターネットの人たちは’ヒーロー’か’人気者’になっていいねをもらうことが好きだ。

それが道徳的に正しいかは大事ではない、自分の部屋に閉じこもって自分が正義した’ヒーロー’になるためにはなんでもするゴミで溢れている場所である。


私はただそのゴミたちが私たちのバンド活動に影響を及ばないことを願うだけだった。


バスはゆっくりと動き始めてアジュールと私は黄色の日差しと一緒に家に向かった。


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