Chapter 1 - 平凡な日常の中 (2)
”ふぁぁ…あ、なんだ…もう着いたのか。”
眠りから覚めるとアジュールが静かに何も言わないでバスから降りるのを見て目的地に着いたと判断した。
私ものんびりと立ち上がり背伸びをしてバスから降りた。
’世界で一番退屈な場所、フィリップス総合学院へようこそ。’
心の中で呟きながらこの退屈な場所へと足を向けた。
まあ、バンド部のことを考えるとそこまで退屈な場所ではなかったけど、それでも授業のことを考えると頭の中は’退屈’という単語しか浮かばなかった。
”お~い、キヨ!”
後ろから私の名前を呼ぶ声がした。振り向いたら他のバスから降りたキム・ストロングだった。
”キム、来たんだ。”
”そりゃもちろん、今日も変わらず我輩は登校したんだぞ!”
キムはいつものようにはしゃぎながら登校した、もちろん少しツッコミたい要素もあるけど。
”’変わらず’って体調不良で休んだのが何回もあったのか覚えてるの?キム。”
私はそう答えた。
”あ、ははは…そんな細かいことは忘れてくれないかな?”
キムは少し苦笑いしながら後頭部を軽く掻いた。
”学校はそんな細かい事でも忘れてはくれないんだよね。”
しかも細かい事とかいいながら5回連続で休むとかなんなんだよ。
”とにかく、学校に行こう!”
そうして私たちはゆっくりと高等部の建物に入った。
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”あ、みんな来たんだ。”
既に余裕で教室に到着しているウィットニー·ブリナータが私たちを迎えてくれた。
”おはよう、ウィットニー。”
私はウィットニーに挨拶した。
”うん、おはよう。”
優等生モードのウィットニーは昨日見せていたツンデレ/ターフガールモードのウィットニーとは雰囲気が違う。
優等生らしくすべての返事が優しく大人しいかった。
”それで、昨夜アンダーグラウンドのコンサートはどうだった?”
キムは気になったのかそう尋ねた。優等生モードのウィットニーがどう返事するかは知らないけど、彼女には喜ばしい実もんではないと思った。
”…何言ってるの、私は昨日勉強していたよ。”
ウィットニーは眉間にしわをよせ顔を左右に振りながら答えた。
”へぇー、やっぱ知らないふりするんだ。わかった、じゃあ後で部活時間に返事してね!”
キムは笑いながら手をパッパッと叩いた、そして自分の席に座った。
”…あいつ、本当に気が利かないんだから…”
ウィットニーはそんなキムの態度が気に食わなかったのか目を閉じて顔を振った。
”あはは…それもキムの魅力じゃない、ほっといてよ。”
”キムの魅力?私が勉強しないで遊びに行ったこと親にばれたらどれだけ叱られるかわかって言ってるの?”
ウィットニーは私の軽い言葉に静かに怒りながら返事した、少し言葉が早いし荒くなっていたので怒っている様子だった。
”…それもそうか、でもうちのウィットニーは先生たちに好かれてる優等生だからそれくらいはバレても少し目をつむってくれたりするんじゃない?”
私は少し嫌味を交えながらそう話した、途中でふっと笑ってあげたりして…
”黙って”とウィットニーは答えた。
”私も大好きだよ、ははは”
これにウィットニーはため息をついてタブレットで勉強し始めた。
少ししたら先生が入ってきて出席を確認し始めた。
”ウィットニー”
”はい”
”キム”
”はい~!”
”キヨ”
”はい…”
はあ…
また退屈な授業が始まる。
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”…くぅ…”
”キヨさん”
”くうぅぅ…”
”キヨさん…”
”くうぅ…”
”キヨ!”
”ふぁ、あ…は、はい!”
私は半睡半覚の状態で目が覚めて自分のほっぺたを二回叩いた。
”また寝ていたの?”
”あ、あぁ…いいえ。”
”1+1は?”
とても簡単な問題を出してきた、これは簡単でしょ…
正解は…!
”3です!”
”廊下に立ちなさい!”
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”ふぁぁ…あ…”
結局廊下に出て罰を受けることになった。
幸い両手を上げろとは話してなかったけどここで誰かと会うことになると絶対恥ずかしいに決まっ…
”あら、キヨじゃない?”
あ、やべ…うちのクラブ顧問先生のサリバン先生が私を見て挨拶した。
”う…うぅぅ…こ、こんにちは…”
私は恥ずかしい気持ちを後にしてなんとか挨拶をした。
”もしかして今回も授業中に寝てたの?”
もう気づいたのか少し微笑みながら聞いてきた。
”…”
当然私はこれにどう返事すればいいのかわからなくて黙っているだけだった。
”そうなのね、ふふふ”
結局、自分で結論を出していた、うっ…恥ずかしい。
”普段から演奏に集中しすぎて学校で寝てしまうようだね、学生としての成績も大事だから授業もちゃんと聞きなさいね。”
それくらいわかってますよ、もちろん嫌ですけど…
”わかりました、恥ずかしいので早く行ってください…”
私は頭を少し下げて手で顔をなでおろした。
”ふふふ、わかった。それより今日も新入生歓迎会練習するの?”
”あ、はい。もちろん”
”あと残り二週間だからね、頑張ってね?ファイト!”
サリバン先生はこういう時だけは頼りになるんだから…
”はい、わかりました。頑張ります…!”
”ふふ、それでこそリーダーね。”
そう言いながら先生はゆっくりとまた歩き出した。
私はそんな先生を見ながら肩をそびやかした。
”2週間か…”
私は天井を見上げながら首の後ろを触った。
残り2週間となるとそろそろパフォーマンスとかも考えないとね…
天井を見上げていた視線がゆっくりと下に向いて私の靴を見つめよう…としていたけど何かを見つけた。
”うん…?なにこれ?”
私は白い紙についている新聞スクラップをゆっくりと拾い上げて内容を見てみたら…
[レヴナント、違法薬物所持疑いで逮捕。]
[セインツ、性的暴行の疑いで逮捕、ショック!]
[アンチインディーズバンドグループがソーシャルメディアに登場、それにより人身攻撃のおそれが…]
これはさっき先生が落として行った新聞スクラップの一部のようだった。
でもレヴナントに続きセインツまで…?
それに’アンチインディーズバンドグループ’?どうして人たちはこんなグループに入るんだろう…?
私はじっと考えて’まあ、私たちには関係ないでしょう。どうせ学校側が保護してくれるだろうし。’と結論を出して新聞スクラップがついている紙を床に捨てて、またじっと罰を受けることにした。
’よく考えてみて、キヨ。学生の夢を大事にしているこの学校にアンチインディーズバンド派ができたからって問題になるわけないでしょ?’
”だから安心して。”と独り言を呟いてまた罰を受けることに集中した。
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”解散!”と先生が話すと同時に鈴が鳴り始めた。
”わぁぁぁ!”とみんなが鞄を持って教室を出始めた。
眠そうにしていたみんなもいつ寝ていたかのように素早く立ち上がって教室を出て行った。
みんなが出ていく中キムとウィットニーは立ち上がって私の席に向かった。
”さあ、これから音楽室に行くの?”
ウィットニーは鞄を適当に背寄って頷いた。
”もちろん~!”
キムはその場でポンポンと飛び出した。
”よし、アジュールも待っていると思うし早く行こう。”
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”あ、来ましたね。”
アジュールは音楽室の中で自分の身長級のベースを調整しながら待っていたようだった。
”こんにちは、アジュール”
私はそう言いながら机の上に鞄を置いて周りを見てみた。
暖かい日差しが窓から入ってきて音楽室を明るく照らしていて、灯をつけなくてもいいと思うほどだった。
様々な楽器たちはその日差しにあたって輝いていて、中には黄色に光るものもあった。
”さて、’ベース’はここにあるよね…”
私はそう言いながら楽器保管庫を開けて私のクラシックなレスポールギターを手にした。
”ここにあったね”
ウィットニーはそう言いながら手を伸ばしてⅤの字にしながらかっこいいギターを持って弦を弾いてみた。
”私はもう持ってるよ!”
キムはもう持ってきたと言いながら鞄からドラムスティックを取り出した。ドラムは重くて一人で持てないので学校から提供してくれるドラムで演奏するキムだった。
”私のはもう持ってきました。”
アジュールはベースの弦を素早い手で弾きながら自分なりに楽器を自慢していた。
”よし、みんな出したね。みんな調整するの忘れないでね…”
私が調整のことを話すとみんなスマホのアプリを開いて調整し始めた。
デンデンデーン、ドーンドン、タタタタという音と一緒に不協和音が何回か続いて調整が終わったのかその場のノリで演奏し始めた。
”おお、もう演奏するの?私も混ぜてよ!”
演奏に私も入りたいと思ったのでレスポールギターを持って一緒に演奏し始めた。
のんびりしながらもお互いの楽器が合うようになって音楽を作り始めた。
その流れでメインギターの私がギターソロで派手に終わらせて即興演奏を終わらせた。
”ふぅ、みんな演奏上手だね?”
演奏を終えて私はみんなを褒めた。
”家で少しずつ練習してきたからね、ふん”
ウィットニーは当たり前のように頷きながら肩をすくめいた。
”へへ、私は練習できなかったけど…”
アジュールはそう言いながら照れているようだった。
”私も私も!練習してないよ!”
キムは練習してないのを自慢するように両手を上に持ち上げながらギャーギャーと騒ぎ始めた。
”あはは、ドラムは家にドラムがない限り練習できないからね…”
私はキムの状況を理解しうんうんと頷いた。
”ところで、昨日オーバーキルのライブ見たでしょう…”
”はい、そうですけど…?”
”私昨日オーバーキルのライブを見てわかったことがあるんだ、’私たちもこうあるべき!’みたい感じの”
私がそう話すとみんなが首をかしながら気になっているようだった。
”オーバーキルのライブ見て何か感じなかった?”
”さ…あ…”とみんな首をかしげていた。
”あの、その熱い熱情と舞台前をクラブのような雰囲気にしてみんなを躍らせる感じあるじゃん。”
みんな頷きながら私の言葉に静かに同意した。
”私たちも何か演奏しながら簡単な音楽に身を任せて踊るとかどうかな?そしたらみんなが私たちと一緒に音楽に身を任せて踊ってくれないかな?”
”ふーん…そっかな~?”
キムは肩をそびやかしながら微妙な返事をした。
”そう、私たちは演奏に慣れているからそうしたら観客たちがもっと喜んでくれないかな?”
ウィットニーは私の言葉に頷きながら同意してくれた。
”うーん…上手くいくかはわからないけどやってみます。”
アジュールは首をかしながら疑問を表したけどやってみると返事してくれた。
”リズムに合わせて身を揺らすだけでいいからやってみよう!”
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”…”
”…”
”…”
”…どう?演奏も乱れなかったしもしろテンション上がるでしょう?”
みんなが演奏を終えて静かに汗を流しながら周囲を眺めている時、私はその沈黙を破った。
”ふぅ、これ…悪くないかも…?”
ウィットニーが私の言葉に続きコメントしてくれた。
”なんか、いつもよりノリノリな気がします…!”
アジュールは汗を拭きながら言った。
”これやばくない~!?”
そして最後にキムが情熱溢れる姿でギャーギャーとはしゃぎ始めた。
みんながそんなキムの姿を見て少し微笑んだ。
”ほら、これ悪くないでしょう?”
みんなが賑やかに笑いながらお互いの演奏とパフォーマンスを秘め始めた。
”ウィットニー、すごく夢中になってて首振ってたよね!”
”そういうあんたはドラム演奏しながら髪の毛揺らしてたでしょう、髪の毛でドラム演奏するかと思ったよ?”
”私は三人とも可愛すぎるというか…ふふふ。”
お互いのパフォーマンスに笑いながらコメントしながら時間はすすみ日差しはオレンジ色に変わって音楽室を照らし始めた。
-To Be Continued-