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94回目 今夜はシチュー

「…………う……うぁ…………ぁ…………」


「お兄ちゃん!?」


「アレにーちゃん!」



 シエラが治癒魔法を三回かけた後、やっとアレスがうっすらと目を開いた。アレスは何かを話そうとしているようだが、おそらく喉が渇きで引っ付いて、うまく話せないのだろう。


 俺は『吸い飲み』にミネラルウォーターを注いで、アレスに水を飲ませてやった。アレスの顎のあたりはまだ酷いものだが、それでも多少は良くなっているのだろう。吸い飲みを使えば、アレスも問題なく水が飲めるようだ。



「ぁ…………ぁ…………うぅ…………」



 だがやはり、まだまだ喋る事は出来ないようだ。それに、少しだけ上げられたアレスの右手は、指が三本ほど欠損している。部位欠損は、今のシエラではまだまだ治せないらしく、そこを治すにはダンジョン産の『ハイポーション』に頼るしかないそうだ。


 ちなみにハイポーションのお値段は白金貨数枚にもなるらしい。かなりの貴重品なのだ。


 しかしポーション、…………ポーションかぁ。普通の薬なら生活ガチャから幾つか出ているが、その全ては☆3であり、経験上☆3は普通の市販品だ。まあ、電気を使う所が魔力になってたりはするが、それだけなのだ。


 ポーションやらエリクサーやらの、いわゆる『魔法薬』の類いはまだ出て来ていない。果たして出て来るのかも解らない。…………いや、正直に言うと、俺は出て来ないと思っている。もし出て来るのだとしても、それはクラッシュレアか☆5になるんじゃないかと思っている。しかもそれは多分、『ラストエリクサー』とかの究極の品になる筈だ。


 もしくは、生活ガチャや書籍ガチャのように、『魔法薬ガチャ』とかあるんだろうか? …………うーーん、どうだろう。



「…………ガモン様。食材を出して頂けますか? 食事の用意をしますので」


「いや、シエラは治癒魔法を連発して疲れているだろ。俺がやるから休んでおけよ」



 確かに外はすでに夕暮れ時だが、一番働いているシエラが食事を作るのは違うだろ。トルテも「ちょっとあのモンスターが本当に『アカメアリ』なのか確かめて来る」と言って出て行ったし、なんなら一番働いていないのは俺である。



「アレスにはまだシエラの治癒魔法が必要だろ。だからシエラは休んでいろよ」


「…………そうですか。では、お言葉に甘えますね」



 と言う訳で、夕食は俺が作る事になった。今夜のメニューは、美味しくて、栄養があって、今のアレスでも飲めるスープを含む物。それでいて俺でも作れる物となると…………よし!



「今夜はシチューにしようか!」



 今夜のメニューを決めた俺はアリアに台所を借りると伝えて台所に移動して、ガチャアイテムの調理器具を設置した。設置すると言ってもIHコンロを設置して、まな板やら包丁やらを出すだけなんだけどな。


 そして食材となる野菜やらシーフードミックスやらを出していると、アレスの為に薬草を探しに行っていたアレス達の母親とトルテが帰って来た。


 どうやら大まかな事情説明はトルテがやってくれたらしく、俺は恐縮する三人の母であるアレマーさんに料理を手伝って貰った。


 アレマーさんはガチャ食材を見て、こんな立派な野菜は初めて見たと目を丸くしていたが、料理となると流石は主婦なだけあって手早く下拵えをしてくれた。俺だとかなり時間が掛かるから、本当に助かった。


 あとはミネラルウォーターをたっぷり入れたデカイ寸胴鍋に食材を入れて煮込んで丁寧に灰汁を取り、火を止めてルーを入れ、最後に牛乳を加えて煮込んで完成である。おっと、パンも出しておかないと。



「これは…………! とても美味しいです! 似ている料理はこの村にもありますが、美味しさが段違いです!」


「それは良かった。トルテ、皆を呼んで来てくれ。俺はアレスが飲めるように食材を潰してある程度冷ましておくから」


「あ、それでしたら私がやります。あの子の面倒を、皆さんにお任せする訳には…………」


「いやいや、アレマーさんはアリア達とシチューを食べて下さい。作った側としては、温かい内に食べて欲しいので」



 ガチャ食材で作ったシチューは、当然の事ながら大好評だった。俺もアレス用のシチューを用意してからはシエラに任せてシチューを食べたが、やはり旨い。大した拘りではないが、俺はカレーやシチューを作る時はいつも市販のルーを別の製品で混ぜる。今回は量も多かったので五種類も混ぜれたから楽しかった。


 俺が出したパンも大好評で、いくつか菓子パンも出したのだが、アリアもアラムも甘いパンが美味しかったらしく、シチューもパンも食べ過ぎてお腹を抱えている。


 後で駄菓子も食わせてやろうかと思っていたが、取り敢えず止めておこう。際限なく食いそうだからな。


 そしてアレスの世話を任せたシエラによると、シチューを飲んだアレスも多少は落ち着いて眠ったらしいので、まずば一安心だ。


 ガチャ食材で作った料理にはバフが付くから、これがアレスの治療に少しでも役に立てばいいんだけどな。

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