91回目 車をとばせば三時間
明けましておめでとうございます。
今年も楽しんで貰えるように頑張って書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。
「…………なんだよ、これ…………?」
俺が『ガチャ・マイスター』の倉庫から取り出したフルサイズSUV車☆4『ランブルクルーザー』を見て、トルテが絶句している。
まあ初めて見るとそうなるか。これでも一応気は使って『キャンピングカー』は出さなかったんだけどな。もちろんクラッシュしてないヤツだ。クラッシュレアの『◇キャンピングカー』だと、まだフレンド登録していないトルテは乗れないしな。
キャンピングカーよりは大人しいだろ、SUV車。
「車だ。取り敢えず二人は後ろに乗っておけ。シートベルトの締め方を説明するから」
「いやなんだよコレ!? なんでそんな平然としてんだ!? つーかガモン、お前こんなデカイのどっから出したんだよ!?」
「俺のスキルからだよ。って言うかトルテ、昨日お前が寮に来た時に色々見せただろ。『業務用冷蔵庫』とか『ドラム式洗濯機』とか。その全部が俺のスキル『ガチャ・マイスター』から出て来た物だって説明したはずだぞ?」
「あれ冗談じゃ無かったのかよ!? 俺、てっきりゲンゴウさんの集めた魔道具を自慢しながら冗談言ってんだと思ってた!!」
「それじゃあただの嘘つきだろうが。ほらほら乗った乗った。馬車よりは絶対楽だから。目的地にも絶対早く付くから」
俺達が目指すヘテナ村までは馬車で四日、歩いて六日だっけ? えーーと、人の時速が大体五キロとして、食事やら休憩挟んで八時間あるいてだいたい四十キロか? この世界の人だともっと速そうだけどそれは置いといて。とするとココからヘテナ村までざっと二百四十キロかな。…………多少のズレはあっても、三時間くらいで着くんじゃないかな。
フッ、馬車で四日徒歩で六日を三時間か。すげぇ時間短縮だな。これは使わない手は無いだろう。
取り敢えず二人を後部座席に座らせてシートベルトの説明をする。二人とも、シートベルトをしていたら、いざという時に動けないと心配していたが、俺はしっかりと付けさせた。たぶん居ないと思うんだよ。ぶっ飛ばしてる車に近づいて来るモンスターは。それに来たとしてもゴブリンやコボルト程度なら弾き跳ばされて終わりだと思う。…………轢きたくは無いけどさ。
運転席に座りエンジンをかけると、ルームミラー越しに二人の肩がビクッと震えたのが見えた。一言も喋らないなと思ってはいたが、シエラもそうとう緊張しているようだな。
「さてと、目的地のヘテナ村は南西だっけ? まず街道を進めばいいかな?」
『目的地・ヘテナ村ですね? ナビゲーション致しますか?』
「…………ナビ使えんのかよ」
突然響いた女性の声に後部座席の二人がまたビクッとしたが、それは置いといて。俺は車に備え付けられていたカーナビが普通に起動した事に驚いた。
カーナビを見れば、どうやら周辺の地図が表示されており、取り敢えず俺が思ったのは『人工衛星も飛んでないのにどういう事だよ』という『スキルだから』としか答えようの無いものだった。
「…………えっと、ナビ出来るのか?」
『はい。ヘテナ村までの適切なルートを割り出します。モンスターの位置は表示しますか?』
「……………………お願いします」
『かしこまりました。ステルス機能も併用します』
その声と共にカーナビには白い線が引かれ、街から離れた位置に赤い光点がポツポツと表示された。赤い光点には二重丸になっている物もあるが、それは群れだそうな。
そういやステルス機能とかも言ってたか? どんだけ高性能なの? ☆4になると科学と魔法の融合っぽくなるんだけど、これ本当に大丈夫なの? こんなの世界にあふれたら世界が壊れないか?
まあ、便利だし使うんだけども。
やけに静かなのでルームミラーで後ろを確認すると、二人が硬直レベルで固まっていたので、俺はミネラルウォーターを二人に渡して飲むように進めた。
あのトルテがコクコクと頷き、シエラの真似をしてミネラルウォーターを飲んでいる姿は、なんだか小動物な感じがして笑いそうになった。そんな事すればさすがに怒るだろうから我慢したけど。
俺は自分の分として缶コーヒーを出して一口飲んでから、車を発進させた。うん、さすがはフルサイズSUV車の『ランブルクルーザー』だ。乗り心地は最高である。
◇
『目的地周辺です。現地住民とのトラブルを避けるため、ここからは歩く事を推奨致します』
「ホント良くできたカーナビだな。二人とも、ここからは歩くぞ」
「…………マジかよ。本当に半日も掛からなかったぞ」
「途中で休憩もとってこの早さですか。確かにあの速度では、モンスターや盗賊に襲われる心配もありませんね。馬でも追いつくのは難しそうでした」
まあ、確かに。競走馬でない限りとばしている車に追い付くのは難しいだろう。追いついたところでってのもあるけどな。
タミナルの街からヘテナ村まで、カーナビに従ってモンスターを避けて森や岩山を迂回して、だいたい三時間だ。
やっぱ凄いよね車って、強いて難点を言うならば、景色が単調すぎて飽きたくらいだな。何も無いんだもの異世界。絶景も見続ければ飽きるってもんだ。まあ時折見る魔物は、野生動物を見る感覚で楽しんでたけども。
ともかく俺達は、もはや日帰り出来るレベルの早さで目的地のヘテナ村へとたどり着いたのだった。
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