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9回目 武器合成

 王都から今いる町までは、とても楽な道程だった


 そりゃ王都の周辺が荒れていては目も当てられないが、特別な馬車とはいえ、その乗り心地の良さから道路がかなりしっかりと整備されている事が解る。


 魔法が発達した異世界だから、この道路も魔法で整備したのだろうかと、余計な事を考えてしまった。とにもかくにも、ここまでは快適な旅だった訳だ。盗賊はもちろん、モンスターだって見かけなかったしな。


 だがここからは、コゼンコゼ辺境伯領に入る。コゼンコゼ辺境伯の人柄を一言で説明するならば、『カラーズカ侯爵と仲が良くない』と言えば解ってもらえるだろうか? 性格的にもそうなのだが、とりわけ民に対する考え方が、カラーズカ侯爵とは真逆に位置する貴族なのだそうだ。



「ガモン。コゼンコゼ辺境伯の領地は、王都から領都までを繋ぐ主要道路と、その間にある街以外はほとんど整備されていないんだ。いま進んでいる道は、その主要道路からは大きく外れているから、ここからはモンスターとの戦闘もあると覚えておいてくれ」


「そうか、わかった」



 主要道路から大きく外れている理由は、もちろん俺だ。コゼンコゼ辺境伯は、俺が召喚された場に間違いなく居ただろうし、他にもコゼンコゼ辺境伯に追従している貴族(寄子と言うらしい)もその道を使うかも知れない。


 相手が俺の顔を覚えているかは解らないが、出くわす危険を極力避けるために、俺達はこんな誰もいないような道を進んでいるのだ。



「しかしモンスターか。この辺りにはどんなのがいるんだ?」


「そんなに厄介なのは出て来ないけどね。スライムやゴブリンにコボルトやオーク。まあ、街の近くに出る物としては平凡なもんだよ」



 なんだか聞いた事がある、超有名なザコモンスターの名前しか出て来なかったな。



「それって、俺でも倒せるのか?」


「倒したいの? …………うーん。オークは論外として、ゴブリンやコボルトは群れていなければ大丈夫だと思う。でも、やっぱり最初はスライムだよ。危険がない訳じゃないけど、子供でも倒せるモンスターだしね」


「それじゃあ、スライムを見かけたら馬車を止めまさぁ。旦那の世界にゃモンスターがいないって話しでやしたね。いくらスライムとは言え、油断ないようにしといてくだせぇ」



 俺達の会話を御者台から聞いていたバルタが、スライムを探してくれる事になった。ちなみにゴブリンやコボルトなら既に出て来ているが、この辺りに出るゴブリンやコボルトなら馬車を引いている馬の方が強いので、馬がぶっ飛ばしているそうな。


 どうりで時々『ブギャッ!?』とか『ヒギィッ!?』とか聞こえると思ったよ。侯爵家の馬はモンスターより強いのか。



「さて、そうと決まれば…………!」



 俺はスキルを発動して『ガチャ・マイスター』の画面を出した。モンスターと戦うと、おそらく熟練度が上がると思われる。それなら、装備できるアイテムは多い方がいい。


 剣とか、盾とか、鎧とか。そういうファンタジー色の強い物が欲しい。ひのきの棒でも、スキルってもんがあるらしいが、ランニングシューズの解放されているスキルが『疲労軽減(小)』だった事を考えると、大したスキルでは無いと思うのだ。


 そして、いま俺の手には燦然と輝く『☆3以上確定! ガチャチケット』がある。これはクエストにあった『装備の熟練度を一回上げる』のクリア報酬である。



「ガモン、何をするんだ? その光ってる紙は、もしかしてスキルなのか?」


「ああ。今からスキルを使ってアイテムを出すんだ。何が出るか解らないけど、おそらく装備品が出てくる筈だ!」


「おおっ! 勇者のスキルだね!」



 俺がスキルを使うと聞いて、ティムが目を輝かせた。フッ、『勇者のスキル』か。ここはいっちょ、格好いい剣とか槍が欲しい所だな!



「よし! 頼むぞ!!」



 俺がガチャチケットを使用すると、スキルの画面がガチャマシーンの置かれた倉庫に変わる。そして『弾け!』という文字と、銀色のコインが手前にあった。



「出でよ伝説の剣!!」



 これは『☆3以上確定』のガチャチケットだ。『3以上』だからな! いいんだよ? ☆5とか出てきても!!


 俺が気合いを込めてコインをタップすると、コインは放物線を描いて右端にある銀色のガチャマシーンに吸い込まれた。そしてハンドルが回る音が響き、ガチャマシーンからカプセルが排出される。


 こう、なんだろ。ソシャゲでお馴染みの確定演出的なのが出なかった。そしてカプセルの色は、☆3を表している赤である。


 …………まあ、そりゃ百分の一も万分の一も出ないよね。うん、知ってた。


 今回はカプセルが一個なので、リザルト画面にも赤いカプセルが大きく表示されている。どう見ても☆3だし、ここから変わるとも思えないが、諦めるのはまだ早い。☆3だとしても、格好いい武器やら防具やらが出てくれば問題ないのだ!



「さあ来い!」



 気合いを込めてカプセルをタップすると、光を放ちながらカプセルが開き、そこには! ……………………『ひのきの棒』が表示されていた。



「……………………」


「どうだった? どんなアイテムが出て来たんだ?」



 身を乗り出して聞いてくるティムに、俺は無言で二本目の『ひのきの棒』を取り出して見せた。



「え? …………あぁ……そっか…………」



 煤けた顔の俺と、何も言えず気の毒そうに俺を見るティム。微妙な空気が漂う馬車の中で、俺は無言でひのきの棒を収納した。



「…………ん?」



 だが、そこで俺は、スキルのアイコンがまたひとつ増えている事に気がつく。増えているのは円柱状のガラスケースが並んだ様な機械のアイコンだ。


 なんだこれ? と思いつつタップすると、そこには『錬金所』の表示と、『合成』の文字があった。


 ソシャゲでお馴染みのアレだ。ガチャでダブった装備品なんかを合成して経験値やレベルを上げるような…………!?


 これもしかして、ひのきの棒の熟練度が上がるんじゃないか!?


 そう考えた俺は、さっそく『ひのきの棒』を合成してみる事にした。装備中のひのきの棒もスキルに収納し、武器合成を選ぶ。


 そして『合成対象』には俺が装備していた熟練度3のひのきの棒を据えて、『合成素材』に出たばかりのひのきの棒をセットした。


 他に合成できる物は無いので、俺は『合成開始』をタップした。スキルの画面の中で、二本のひのきの棒が合成され、リザルト画面に『ひのきの棒(+1)』が表示された。


 さっそく『ひのきの棒(+1)』をタップして性能を見ると、熟練度は3のままだったが、その上限が20から40に上がっていた。さらに攻撃力が5から7に上がり、ナイフと同じ攻撃力を持つ木の棒が爆誕した。


 …………まあ、予想とは違ったが強くなったから良しだ。熟練度の上限が上がったのは気になるが、ちょっと後でメニューアイコンにあったヘルプを読んでおこう。


 自分のスキルなのに、俺は知らない事が多すぎる。でも、ああいう取説とかヘルプとか、読むの面倒くさいんだよな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 来た! 合成、主人公わかってないだけで実はチートなのでは? [一言] 主人公、生命掛かってるんだから、ちゃんと調べようね。
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