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86回目 魔法の覚えかた

 ギルドの図書室で行う依頼。『図書室・蔵書の写本』も、本日二日目を迎えました。


 今日、写本するのは『素材買取り価格一覧。薬草・毒草』『蟻塚ダンジョンマップ・一階層~三階層』『湿地帯のモンスター生息図鑑・タミナル』である。


 今日は図形とか地図を描く所があったので大変かと思ったのだが、そこは俺のスキル『ガチャ・マイスター』が活躍した。


 どういう事かと聞かれれば答えは簡単。生活ガチャから出て来ていた文房具が力を発揮しただけの事だ。羽ペンで図形を描くのは大変だが、様々な図形定規と鉛筆を使って下書きをしてあれば楽勝と言う寸法である。


 いっぱい出たんだよなぁ、図形定規のセット。粗方はゲンゴウに譲ったんだけど、一セット残しておいて良かったよ。単に面白いから取っておいただけなのに、まさか使うとは思っていなかったけどな。


 それはともかく。二日目で多少慣れたのと、元から得意分野だった事もあって、今日の分は早々に終わってしまった。寮で朝に作ってもらった弁当を、ゆっくり味わう余裕があるのは良い事である。



「だいぶ時間に余裕ができましたね。ガモン様が手間取るようでしたら手伝う事も考えていたのですが、杞憂でしたね」


「そりゃ早く終われば魔道書が見られるってんだから頑張るさ」



 そう、実は昨日の内にギルドにはシエラが話を通しているのだ。今日の依頼が早く終わった場合には魔道書を見せてくれと。


 なんだそんなの、近くにあるんだから見ればいいじゃん。と思うかも知れないが、そう簡単ではないのだ。


 確かに一見して、魔道書は無造作に棚に収められているように見える。しかし、それはそう見えているだけに過ぎない。


 俺はそれを証明するべく魔道書を手に取り、開こうとしてみた。しかし、とても薄くて頼りない魔道書はびくともしない。シエラによると、これは闇属性の魔法で閉じてあるため開かないそうだ。一種の結界だと言われたが、そう言われても解る訳がない。



「魔道書は特別な本なので、ギルドの許可が無いと開く事はできません。今日はあらかじめ呼んでおいたので、そろそろ来る頃かと思います」



 食事を終えてくつろいでいる所にノックの音が響き、扉を開けてギルド職員の男が入って来た。



「ギルドの許可が下りましたので、生活魔法の魔道書を一冊解放します」



 ギルド職員の男はそう言うと、さっそくテーブルの上に出ていた魔道書を手に取り、闇属性の封印から魔道書を解放した。


 ちなみにこれをやって貰う金額は金貨一枚であり、本来ならば俺のランクでやって貰える事でもない。今回はシエラが申請してくれたので通ったのだ。


 俺みたいな駆け出しが無料で見ようとするなら、いま受けている『ギルド図書室・蔵書の写本』で、たまたま他のギルド職員が魔道書の修復作業をしていた場合に、運が良ければ修復が出来た確認も兼ねて使わせて貰えるかも? ぐらいの偶然が重ならなければ見られない。



「はい。では生活魔法の習得、頑張って下さい。…………あぁそうだ、触媒はお持ちですか? もし持っていないのであれば、お売りする事も出来ますが…………」


「触媒はありますので大丈夫ですわ。ありがとうございます」


「そうですか。では失礼します」



 やたら事務的に仕事を終えて帰っていく職員を見送ると、シエラは俺の前に封印が解けて開かれた魔道書を置いた。



「ガモン様、これが魔道書になります。まずは生活魔法という物がどういった魔法なのか知るところからです。この本の中にその説明がありますので、読んでみて下さい。魔道書から魔法を覚える際は、その魔法に対する理解度が習得の助けになりますので、しっかり読み込む事をオススメしますわ」


「お、おう。わかった」



 …………とは言え、俺がこの魔道書から魔法を得る事は無い。それは確定しているのだ。何せ『マイスター・バー』のマスターかそう言っていたのだから。


 しかしまぁそれはそれ。例え俺が生活魔法を覚えられないとしても関係ないのだ。だって『魔道書』だよ? 日本の中二病拗らせた人が作った創作本とは違って本物なのだ。そりゃあ読むよ、読みますよ。



「…………ふーーん」



 生活魔法は、基本属性とされる火・水・風・土・木・光・闇を、組み合わせた複合魔法である。


 よく知られる複合魔法としては、木属性・水属性・光属性が組み合わされた『治癒属性』があるが、生活魔法の場合はそこまで複雑ではなく、それぞれの属性の上澄みを掬って混ぜるような、例えるなら濃度の薄い魔法である。


 例えば『清潔』という魔法の場合は、火と水と風の複合魔法で、体や物品の表面を薄い水で覆い、風で少し浮かせて水を一気に加熱する。それによって汚れや臭いを浄化するという一見すると複雑な魔法式を、限界まで簡略化して作ってある。…………と。


 うん、けっこう複雑そうな事が書いてあるけど、普通に面白いな。でもこれ、俺なら下地になる知識があるからなんとなく理解できるけど、何もない状態だと難しいんじゃないの? …………あぁ、だから一回では生活魔法を習得できない人がいるのか。


 そして、本の最後には魔法陣が描かれており、俺はシエラから小さな魔石を二個受け取って両手に握り込んだ。


 この状態で魔法陣から両端に伸びている線に触れて、左手から魔法陣全体に行き渡るように魔力を流し、それを右手に繋げる。


 さらに今度は右手に受けた魔力を体の中を通して左手に繋げると、生活魔法の回路が俺の体に刻まれる…………らしい。まあ、俺には何も起きない訳だが。


 マスターの説明と合わせて考えるなら、その回路が刻まれると言うのがスキルの発現条件なのだろう。追記すると、俺に新たなスキル回路が刻まれないのは、『ガチャ・マイスター』のスキル回路が、俺の許容範囲(キャパシティ)を全て食いつくしているからである。


 だから俺が魔法を覚える方法は、ガチャ装備のスキル習得を通して覚える方法の一択なのだ。まあ、その方法ならば、ガチャ装備のスキルの数だけ幾らでも覚えられる訳だけどな!

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― 新着の感想 ―
[一言] ガチャマイスターのスキルは、芝兄の脳みその容量を占有する魔法よりも容量が大きいのか。単純にシステムの容量よりも、データ量とか、拡張アプリの容量とか、スキル展開時必要な記憶容量の占める領域が多…
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