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71回目 ゲンゴウの家で夕食会

 ギルドで解体の仕事を終えて寮に帰ると、寮に残っていた者から伝言を受けた。伝言の主はゲンゴウの奥さんで、マッサージチェアをプレゼントしたお礼に、夕食に招待したい。と言うものだったので、俺達は夕食をゲンゴウの家で食べる事になった。


 寮として使っているのは元は貴族の屋敷だが、ゲンゴウと家族が住んでいる隣の屋敷は、新しく建てた物だ。どっちが大きくて豪華かと言えば社員寮の方がデカイ。


 雇い主より雇われた社員達の方が、寮とは言え良い場所に住んでいる。普通なら逆なのだろうが、ゲンゴウもその家族もそう言う事は気にしないようだ。


 見た目の豪華さよりも使い勝手の良さを追及するというのは、俺としては好感がもてる所だ。



「まぁいらっしゃい。貴方がガモンさんね。そしてシエラさん。ようこそ我が家へ。ささ、中に入ってちょうだい」


「ど、どうも、おじゃまします」


「本日はお招き、ありがとうございます」



 屋敷についた俺達を出迎えたのは赤い髪をお団子にまとめた、恰幅のよい女性だった。おそらくこの人がゲンゴウの奥さんなんだろうけど、てっきり使用人が出て来ると思っていたから面食らってしまった。



「ガモンさんからはあんなに良い物を貰っちゃったから、本当なら家族総出でお出迎えしたかったんだけど、息子夫婦は会合とかで他の街から帰って来てないのよ。ここにはゲンゴウとアタシしか居ないし、大したおもてなしも出来ないけど、ゆっくりしていってね」


「あ、はい。ありがとうございます」


「ゲンゴウ殿には、私達もお世話になっておりますし、こうしてお夕食に呼んで貰えたのは嬉しいですわ。これからもよろしくお願い致します」



 おおう。俺は慣れない席に戸惑っているのに、シエラの対応力が凄い。依頼の時といい今といい、頼りになるぜ! シエラさん!


 それからゲンゴウも二階から降りて来て夕食が始まった。ゲンゴウの所では使用人も雇っているらしいのだが、ゲンゴウ夫妻にとって大切なお客さんの時には使用人は休ませ、ゲンゴウの奥さんである『ポーラ』さんが料理をするらしい。


 何でもポーラさんは、ゲンゴウが他国に滞在していた時に通っていた食堂の娘さんで、その快活さと働きぶりにゲンゴウが惚れ込んで必死に口説き落とした人だと言う。


 だから料理はお手の物で、例え使用人がいても一緒に料理をしたりしているようだ。何と言うか、肝っ玉母さんみたいな感じがする。家の事については、きっと誰よりも頼りになるのだろう。だって母ちゃんだし。



「この年になっての家事はけっこう大変で、最近は特に肩こりが酷くてねぇ。だからあのマッサージチェアってのは本当に欲しかったのさ。こんなにゲンゴウに我が儘を言ったのは初めてってくらい、ダダを捏ねたよ」


「ポーラと一緒になってもう四十年程になりますが、この年になって離婚までチラつかされるのは本気で肝が冷えましたわい。もしガモン殿から譲って貰えなかったら、マッサージチェアが出るまでガチャを回して貰う覚悟でおりましたので、本当に助かりました」



 おいおい。離婚までチラつかせたってマジかよ。マッサージチェアひとつで家庭崩壊とか、ホント勘弁してほしい事態だ。マジで二台出て来ていて良かったな。



「そ、それは…………。本気じゃなかったんですよね?」


「本気も本気さ。アタシはこれまでの四十年間、アッチ行ったりコッチ行ったりの生活にも、ゲンゴウが何年も戻らない生活にも、ゲンゴウのちょっとした浮気にも目をつぶって支えて来たんだ。こんぐらいのワガママも通らないなら、愛想が尽きてた所さ」


「いや本当に勘弁しておくれ。ポーラが居なくなったら、ワシは一人では生きて行けないからな」



 そう言って頭を下げるゲンゴウに、ポーラは苦笑しつつも「仕方ないねぇ」と言ってゲンゴウの背中を叩いていた。ゲンゴウも背中からの衝撃にむせながらも、どこか嬉しそうにしていたのが印象的だった。


 ゲンゴウとポーラは、まさに長年苦楽を共にしてきた夫婦、と言った感じだった。結婚から四十年たっても、二人は変わらず愛し合ったままなんだな。


 …………いや、浮気したとか言ってたか?


 その日の夕食は、ポーラが腕を振るったビーフシチューのような味わいの煮込み料理とキノコと野菜の炒め物に、フカフカとした白パンだった。パンは今日の昼間に、夜に合わせて焼いて貰った物らしく、いまだ焼きたての風味があって旨かった。煮込み料理も野菜炒めもパンは良く合っていたし、最高だった。


 俺達はその日にあった話や、俺の故郷でありゲンゴウの祖先の故郷である日本の話、そして俺のスキルについての話などをしながら、美味しい料理を堪能した。


 そして寮へと帰る頃にはポーラともすっかり仲良くなり、いつでもおいでと軽いハグを受けて見送られた。


 こういう繋がりが出来たのだから、マッサージチェアをプレゼントしたのは正解だったと思う。でもマッサージチェアは俺も欲しいので、部屋に帰ってから個人的に生活ガチャを回してみた。


 え? 結果? …………物欲センサーはしっかり仕事をしていた、とだけ言っておこう。

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