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70回目 移住は大変

「よーし! 貴様らの依頼分の作業は終わりだ! 各自シャワーを浴びて着替えたら戻って来い! 飯を喰わせてやる! シャワー代も洗濯代もギルド持ちだ! 分かったら急げ!!」


「「おおーーっ!!」」



 解体作業はキツイ重労働だった。血で濡れるし、血の臭いはキツイし、血塗れの光景はグロいしで最悪だった。


 しかし、ちゃんとシャワーも浴びさせてくれるし血で汚れた装備の洗浄もギルド持ちでしてくれるのは嬉しいな。しかも飯まで付くのか。どうりで朝、シエラが二人分の昼の弁当を断ったはずだ。シエラは経験者だから、この事を知っていたのだろう。


 俺の場合、ガチャ装備はスキルに収納するだけでキレイになるので、シャワーを浴びて着替えるだけですんだ。ついでに言うなら、シエラも血塗れになる事は無かったので、自分に『清潔』という生活魔法をかけて体も服もキレイにしたそうだ。



「シエラ、ギルドから昼飯が出るってだけなら、教えてくれても良かっただろ?」


「申し訳ありません。ガモン様はあまり血に慣れていないようだったので、言えば依頼を断るかもと思ったのです」


「?? 解体する話は最初から聞いていたから、解体があるくらいじゃドタキャンしたりしないよ」


「ドタ…………キャン…………ですか?」


「ああ、ゴメン。当日になっていきなり…………予定を取り止めること…………かな」


「なるほど。では、平気なのでしたら行きましょう。マダラオオイグアナの肉は臭みは強いですが、しっかりと香辛料を塗り込めば美味しくたべられますからね」


「ああ、そうだな! ……………………え? あれ? シ、シエラ、いま何て…………」



 シエラを追いかけて裏庭に出ると、解体していた場所から離れた所で火が焚かれ、そこに口から尻尾まで鉄の棒が刺されたでかいイグアナが、何頭か丸焼きにされていた。


 …………えぇ? あれってさっき解体したイグアナと同じもんだよな? あれ食用なの?



「おう! 早くこっち来い! 戻ったやつからメシにすんぞ!!」



 はい。冒険者ギルドがふるまってくれる昼飯は、イグアナ料理でした。帰りたい!!



 ◇



「…………うーん。食べてみると、どうして中々。まるで鶏肉みたいで旨いじゃないの」


「なんだよ、ガモンはイグアナ食うの初めてなのか? ウチの村でなんか、しょっちゅう出て来たぜ。コイツら隠れるのは上手いけどあんまり強くねぇからな。村じゃ香辛料は高くて使えねぇから、ププクサの葉っぱで臭み取りしてたけどな。…………やっぱ香辛料の方がうめぇよな、絶対的に」



 俺達はイグアナ料理を食べながら色々と話した。まあ、美少女の上に治癒師のシエラは、若い冒険者に色々と話しかけられていたので、俺の相手はトルテだけだったけども。



「ええっ!? じゃあガモン達はあのデカイ店に住んでんのかよ!?」


「店じゃなくて裏の寮な」


「ああ、あの屋敷かよ。いやどっちにしても凄ぇよ。いいよなぁ、俺なんて今いる宿が五日目だから、明日には別の宿を探さないといけないのに…………」


「ん? なんだよ別の宿を探すって?」


「知らねーの? 余所者が同じ宿にいられるのは五日間だけなんだよ。だから明日には別の宿に移らないといけないんだ。まあ、また五日後には今の宿に戻るかも知れないけど、部屋が空いてればだなぁ」


「へーー、そんなルールがあるのか。あれ? トルテの出身って、この国の村だろ?」


「そうだけど、遠く離れた村なんてこの街からしたら別の国みたいなもんだろ? じっさい俺も、そんな気分で村を出てるしな」



 まぁそうか。日本で言えば本州の人間にとっての北海道や九州みたいなものか。別に飛行機も船も使わなくても、何日も旅して辿り着く別の街は、確かに外国かも知れない。


 しっかし、まさかそんな決まりがあったとは。


 その後、依頼も昼食も終わったので冒険者ギルド内のカフェでトルテとシエラから詳しく聞くと、街の外から来た者への対応としては一般的らしい。


 この街の宿は、五日間のサイクルで冒険者を回しており、二度目も宿に泊めるかは宿の判断に任せているらしい。


 そうなると当然、個人に対して家なんか貸してもくれないし、売って貰える訳もない。これは金がどうこうの話じゃなくて信用の話だ。どんなに金を持っていてもポッと出の怪しい奴は、簡単には住み着かせないという街の人の思いだ。


 だがその分、地道に頑張って信用を掴み取った人間は歓迎される。その一種の証しとして、同じ宿に十日以上泊まるというのがあるらしい。


 つまり、『おっ、アイツはもう十日は引っ越してないな。って事は少なくとも、あの宿はあの冒険者を信用できると判断した訳だ』と、こんな具合に一種の試金石になっている訳だ。



「じゃあトルテはまだ信用されてないのか。トルテの兄ちゃん達はどうなんだ? 確か二年くらいはこの街にいるんだろ?」


「俺はこの街に来たばかりだからしょうがねぇんだけど、兄ちゃん達はなぁ…………、五日間泊まった宿で「もうちょい泊まってけ」って言われた日に、「祝杯だ!」つって飲み過ぎて暴れて追い出されたらしいんだ。だからまだ宿を転々としてる」



 うわぁ。気が緩んで飲んだ酒で失敗したヤツだ。信用しかけた時にそれじゃあ、さぞかし信用がガタ落ちした事だろうな。俺も気をつけよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 冒険者が信用を積むのは厳しいなぁ。地道に積んだ信用も一瞬で失う事もあるしなぁ。
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