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65回目 ティアナに呼ばれて

 タミナルの街にあるカラーズカ侯爵家の屋敷へとやって来た。


 場所は高級住宅地、カラーズカ侯爵家の屋敷もそうだが、周囲にある屋敷も広大な庭をもつ大邸宅で、なんだか目眩がしてくるような場所だった。


 高い塀に囲まれたその場所は、当然のように門番が立っており、馬車が近づくと門番が重そうな鉄格子の扉を開いて馬車を中へと入れてくれた。


 門を抜けて大きな庭を進む。広い庭では数人の庭師が仕事をしており、何もかもがキレイに整えられていた。


 そして大きな屋敷へとたどり着いた俺達はそこでバルタと別れて、出迎えてくれたメイドさんにティムの待つ部屋へと案内された。



「ようこそガモン、それにシエラ」


「お、おう…………」


「…………えっと? …………お招きにあずかり光栄ですわ?」



 豪奢な部屋へ入ると、そこには美しいドレスに身を包み、どこから見ても完璧なお嬢様となったティムが微笑んで待っていた。


 俺はティムのその姿に面食らい、シエラはティムの正体を知らなかったようで、転すら別人が出て来たと思っているようだ。



「ふふっ。…………コホンッ、…………シエラ、僕だよ。ティムだ」


「ええっ!? な、何でドレスで…………えっ、胸がある!?」


「ティムは、本当はティアナって女の子なんだよ」


「ええっ!?」



 わかる、わかるよ。ティムを知っている俺達としては、ティアナは別人みたいなもんだ。小さい頃から仕込まれているだけあって、ティアナは男装が完璧だった。


 そりゃ時折、女の子の一面は見え隠れしていたけど、ティムがイケメン過ぎて違和感が無いのだ。そりゃ解らないよ。


 今はティムの時には後でまとめていた髪もフワリと広がり、雰囲気も違うのでティムと同一人物とは思えない感じになっている。いや、凄いよホント。日本なら普通に女優としてやっていけるレベルだ。めっちゃカワイイしな。



「って言うか、バラしても良かったのか? てっきり黙っとくのかと思ってた」


「大丈夫ですよ。シエラの上にいる枢機卿はお父様のお知り合いですし、そもそもシエラはガモンの不利益になるような事はいたしません」


「もちろんです! 万が一教皇様からガモン様の不利益になる命令があったとしても、無視するように厳命されております!」



 え、いや。教皇の命令を無視って、それは本当に大丈夫なの?



「ふふ、頼もしいですね。…………それで、今日お呼びした件なのですが」


「ああ、バルタからちょっと聞いてる。この街の領主に顔合わせするとか?」


「そうです。数日後になるとは思いますが、この街の領主である『ターミナルス辺境伯』との謁見を予定してあります。その事を伝えるのと、もう一つ」



 ティアナが言葉をきって壁際にひかえるメイドに視線を送ると、メイドは静かに頷いて隣の部屋へとつながる扉を開けた。



「ガモン、あちらに」


「え、うん」



 ティアナに促されて隣の部屋に入ると、そこには壁一面に大量の服が並び、その中心部には大きな鏡と、三人の男達が立っていた。



「えっと、これは?」


「もちろん、ガモンの服を作るのです。上位貴族である辺境伯と謁見するのですから、それなりの服装が必要なのですよ? ガモンはそういった服を持っていませんからね」


「あぁ、そりゃそうだ」



 偉い人に会うんだから、服装は重要。それは当然の話だ。しかし、服を作るのは当然時間が掛かる。そこでティアナは、数日後になるであろう辺境伯との謁見にも間に合うように、まず俺に合いそうな服を用意させ、さらにそのサイズ直しをする為の職人達も用意してくれていたのだ。


 …………いや待てよ? そう言えば装備ガチャから、☆3『カジュアルスーツ』が出ていた筈だ。あれなら上下そろってるしサイズは着る人物に合わせて勝手に調整される。しかも装備品だから防御力もあって何ならスキルも付く。完璧じゃね?


 我ながらナイスアイディア! と、ティアナに向き合おうとした所で、俺は思い出した。


 …………あれティムが着てたじゃん、と。


 あれは確か全部で5着出て来て、装備として使う為に合成して『カジュアルスーツ+4』にした筈だ。そして防御力と、弓の動きを阻害しないという二点を考慮してティムが装備していた。


 つまり『カジュアルスーツ』はティムが着ていた物しかない。実際、あれから俺の手には帰って来てないので、今もティアナが持っている筈だ。


 しかし…………。いや流石にティアナに俺が着るから貸してとは言えない。服の貸し借りを女性からする男なんているだろうか? 逆ならまだしも、字面だけ見ればとんだド変態である。



「…………無いな。うん、無い」


「どうかしましたか?」


「い、いや何でもないよ。ありがとうティアナ、気を使ってもらって」


「ふふ、いいんですよ」



 俺は大人しくティアナの提案に乗って、服を作って貰う事にした。


 とは言っても、要はサイズを測るだけなんだけど。俺はその道の職人達に体の至る所のサイズを測られ、それが終わると、今度は服の合わせに付き合わされた。


 まあ、貴族の礼儀とか今の流行りとかサッパリなので、俺はマネキンになって色んなポーズを取らされただけなんだけどね。


 全ての作業が終わったのは、だいたい二時間後だろうか。最後はティアナとシエラとの三人で、お茶を飲みながら軽い談笑をしていた。



「あ、そうだ。ティ……ティアナ。これを渡しておくよ。使い方は前に説明したから覚えているだろ?」


「これは…………」



 俺がティアナに渡したのは、☆4『アフタヌーンティーセット』のチケット。そう、あれだ。前に俺がやらかした時に、お詫びとしてティムに贈ったガチャアイテムだ。


 ティアナもその時の事を思い出したのか、少しだけ頬を染めてそのチケットを受け取っていた。



「こ、これからちょっと忙しくなりそうだし、渡しとくから好きな時に使ってくれ」


「は、はい」



 俺達の様子が少しおかしかったからか、シエラが俺達二人を交互に見て、首を傾げていた。うん、まあ、そっとしておいてくれ。

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