594回目 エルフ族の狩人達
アラムの駆るカイザー率いるジュエルドラゴン部隊が、多くの眷属を蹂躙している頃、密林フィールドになった闘技場の一つでは、多くの眷属を召喚した幻獣『テンペスタード・ファルコン』との戦いが行われていた。
幻獣に相対するのはエルフ族の弓矢隊。彼らはエルフ族の長老達から推薦された、狩猟のプロである。彼らに掛かれば、エルフの隠れ里に迷い込んで来たドラゴンですら簡単に狩られる程の実力者達だ。
彼らは自分達の得意とする密林フィールドに身を隠し、獲物が射程範囲に入るのをジッと待っていた。
◇
『エルフの皆さんがいるフィールドは、随分と静かですね。先程まで閉じ込められた闘技場内を警戒しながら飛び回っていた『テンペスタード・ファルコン』も、とうとう羽を休め始めましたね』
「凄いよな。幻獣があの場には敵がいないと判断しているんだから。こうして映像を見ている俺達だって、あそこに居ると知っていて、まだエルフを一人も見つけてない訳だしな」
俺と『レティア』の見る先にある大画面には、木の頂上で羽を休めている幻獣ファルコンと、その下に広がる密林が見えている。
あの密林の中では、7人のエルフが息を潜めながらも弓矢で幻獣ファルコンを狙っている筈なのだが、ここから見ている分には、そんな気配は微塵も無かった。
これは、あのエルフ達が持つ特殊な技能…………と言うだけでは無い。今の彼らの装備に大きな理由がある。
《エルフの狩人》
メインウェポン:狩人の弓+4
サブウェポン:ひのきの棒+4
腕装備:音消しの手袋+4
頭装備:猟犬の頭巾+4
体装備上下:迷彩服+4
足装備:忍びの具足+4
アクセサリー:貫通の弾丸+4
アクセサリー:誤認の腕輪+4
と、これが彼らの基本装備だ。これの何が凄いって、これ全部☆3の装備なんだよな。
もちろん全て最大限まで強化してあるが、やはり☆3は☆4に比べると数段劣る。スキルの数からして違うのだ。
だがその一方で、尖ったスキルが多いのも確かだ。それに、☆3のスキルの中には『ひのきの棒』みたいな神々の設定ミスとしか思えない、ぶっ壊れ性能のスキルを持つ物もある。
それもあって、エルフ達はこの組み合わせが自分達に一番合っていると判断した訳だ。
☆3迷彩服のスキル『潜伏』で森に潜み、☆3猟犬の頭巾の『気配遮断』で気配を断つ。
☆3忍びの具足のスキル『忍び足』は、音を立てない上に、木や岩壁を重力を無視して歩いて登ったり出来るチートスキルで、☆3音消しの手袋の『音消し』は木の枝を払った音すらも消してしまう、獲物を追っての森での移動には最適なスキルだ。
そして☆3誤認の腕輪には、例え相手に姿を見られても木石だと誤魔化す『誤認』と言うスキルが付いている。
よくもまぁ、ここまで狩りに特化した装備の組み合わせを見つけられたなと感心したよ。
『マスター、どうやら始まりました』
ゆっくりと幻獣ファルコンとの距離を詰めていたのだろうエルフ達が、☆3貫通の弾丸から作った矢を放った。
その段階ですら、幻獣ファルコンはエルフ達に気付かない。一度だけ、幻獣ファルコンの視線が何かを捉えた様に固定された事もあったが、数秒して視線は外された。おそらくは『誤認』スキルの効果だろう。その視線の先に、エルフの一人が居たに違いない。
『……………………ピギィッ!?』
完全に油断していた所から、首と胴体に矢を受ける幻獣ファルコン。俺達の目には、森から六本の矢が開いしてその内の二本が命中した、としか見えなかったが、幻獣ファルコンは、一本目の矢が首に突き刺さり、二本目が胴体を貫く瞬間に、他の四本を暴風で吹き飛ばして見せた。
そして幻獣ファルコンは矢に貫かれた傷を再生させて空に舞い上がると、周囲に魔法陣を展開し、再び眷属を召喚した。
ただし、新たな眷属はそう多くはなく、その身体も最初に眷属より小さい。魔力なのか瘴気なのか解らないが、やはり無限に呼べる訳ではないようだ。
幻獣ファルコンは、どうやら戦闘ではなく偵察として眷属を出したらしく、眷属達は森の四方に散った。
どうやらここからだ。ここからがエルフ達と幻獣ファルコンとの、本格的な戦いだ。狩るか狩られるか。これはきっと凄い戦いになるだろう。
…………だと言うのに。
『時間切れですね。マスター、部屋に戻って体力の回復につとめて下さい』
「えっ!?」
そんな事を、レティアは言い出した。
『マスターのパーティーが戦いに出る交代の時間まで、あと五時間程です。ティアナ様を始め、マスターのパーティーメンバーの方々は既にお休みになってますよ。ティアナ様は、マスターがここに入り浸っているので不満そうでした』
「言ってくれよ、そう言うのは!? しかし、今か。いや、予定は守らないと計画が狂うよな。分かった。俺は休むから、後は頼んだぞ」
『ええ、お任せください』
幻獣ファルコンとエルフ達の戦いの行方が気になるが、五時間後には俺達が戦いの場に出る事になる。身体を休めるのも計画の内なので、俺は大人しく部屋へと戻った。
ああ、まずティアナに謝らないといけないな。起きてるだろうか?
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