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577回目 神のゴリ押し

「…………本当に出て来ちゃったんだなよな、コレ」



 俺の手にある苗木は、紛れもなく☆5『◇神聖樹『ジュダイン』の森』と言う名の『神』である。


 これは正確に言えば、本体から別れた『分体』ではあるのだが、それは兄弟とか子供とか孫ではない。もちろん、眷族でもない。神から魂ごと分裂したと言う、紛れもない本体なのだ。


 何せ運命神『ダイス』によるなら、『ジュダイン』と言う神は『一つの世界を丸ごと樹木で埋め尽くした』神なのだと言う。


 なぜこんな、とんでもない物が手に入ったか。実は、これがガチャから出て来たのには、それなりの理由があったりする。



 ────遡ること数ヶ月前。それは俺がガチャを回すだけの、虚無みたいな生活に入る頃の話。



『世界ってのはね、どの世界も似た形に落ち着くんだ。もちろん、世界によって多少の差異はあるけど、その根っこは似ている。宇宙があって銀河があって星々があって、その星のひとつに生命体が息づく、その基本は変わらない。きっと、世界にとってはそれが一番自然な形なんだろうね』



 とある要件で、今は機能のほとんどを停止してダイスの部屋となっている『マイスター・バー』に行った時。カウンターに座って俺を出迎えたダイスは、急にそんな説明をはじめた。


 機能を停止しているって言うか、コイツが自分の部屋としてココを使っているせいで停止してるんだけどな! マスターもコップを拭いている形から、すっかり動かない人形みたいになってしまっていた。



『だけどね、そんな数多くの世界の中で、ひとつだけ全ての神を驚愕させた世界があった。それが神聖樹と言う名の樹木の神。『ジュダイン』のいた世界さ』


「いきなり何の話だよ。…………驚愕? 樹木の神って事は、バカでかい森でも広がっていたのか?」


『そうだね。簡単に言えばそう言う事だよ。ジュダインの世界は完全に丸ごと、森に…………いや、ジュダイン自身に飲み込まれていた』



 それを聞いて、俺は世界の支配者がジュダインと言う樹木型のモンスターだったのだと想像した。だが、それは甘すぎる考えだった。


 世界をジュダインが支配したのは間違いない。しかし、その方法は想像の範囲を遥かに越えていたのだ。


 ジュダインはダイスの説明にもあったように樹木である。その栄養素となるのは土と水と光だ。だが果てもなく成長を続けたジュダインは、陸地から海にまで根を張り、やがては星全体を栄養とし、足りなくなって宇宙に根や枝葉を伸ばし、太陽を飲み込み、銀河に根を張り、ブラックホールすら取り込んだ。


 宇宙に根を張ったジュダインは、際限なく世界に広がっていき、完全に世界を自身に飲み込んだ時に『神格』を得た。一本の樹木が、世界を丸ごと飲み込んで神にまで至ったと言う事実は、全ての神々を驚愕させた。



『想像できるかい? 一つの世界が全て『ジュダイン』と言う名の森になり、神として僕らの前に現れたんだ。ジュダイン以外には何もない世界、それが次元の壁を越え、高次元の神々の前に突然姿を現したんだ』



 神になったばかりか次元の壁すら越えて来た樹木の神『ジュダイン』。それは確かに凄いしヤバイ。次元を上に向けて越えるのは不可能だと聞いていたが、ジュダインはその不可能を可能にしたのだから。


 …………いや待てよ? って言うかコレ、何の話なんだ?



『…………うん。神聖樹『ジュダイン』の凄さと恐ろしさは解って貰えたかな? 前置きが長くなったけどね、僕らはそのジュダインに頼んで、一つのアイテムを新たにガチャに設定した』


「はぁ? 新しいガチャアイテム?」


『そう! その名も☆5『◇神聖樹『ジュダイン』の森』!!』


「☆5の、しかもクラッシュレア? …………出

 る訳ないだろ」


『まぁ普通は出ないよね。でもこれは、今の君達には必要なものだよ。ジュダインは世界を丸ごと飲み込む程の強力な神だ。しかも神聖樹。この神聖樹ってのはね、瘴気を寄せ付けないんだ。事実、ジュダインが飲み込んだ世界には瘴気はなく、その神聖さはゴブリン一匹の存在すら許さなかった。今、君達の世界にはあるだろう? 瘴気に汚染されて無人となった大陸が。そして君達には必要な筈だ』


「いや、言いたい事は解るけども。無理だって。ただの☆5ならまだしも、☆5のクラッシュレアは流石に無理だ。だって☆5のクラッシュレアが、それしか無い訳でもないんだろ? いくらなんでも、それを狙い打ちってのは無理があり過ぎる」


『そう、だから僕ら神が、無理やり捩じ込む事にした』


「…………は?」


『いや断っておくけど、『次にガチャを回したら確実にコレが出る』とかでは無いよ? それをやると『ガチャ・マイスター』自体が壊れてしまうし、それを宿すガモンも無事では済まないから』


「おい…………!」


『だから違うって。僕達に出来るのは、『次にガモンが☆5のクラッシュレアを引いた時、高い確率で☆5『◇神聖樹『ジュダイン』の森』が出る様にする』くらいのものだから。どうせ君はこれからガチャを回し続けるんだろ? なら頑張って☆5のクラッシュレアを引き当ててくれ』


「いやいや…………。いくら高い確率でそれが出るとしてもだ。☆5のクラッシュレアが出る確率がそもそも『億分の一』だぞ? 出ないって。知ってるだろ、俺のガチャは確率が渋すぎるって事は?」



 …………などと言っていたのだが、ガチャを回し続ける生活が数ヶ月も続いたら、☆5のクラッシュレアだって一回くらいは出て来る。


 俺が☆5『◇神聖樹『ジュダイン』の森』を手に入れた背景には、こんな裏話があったのだ。


 あぁちなみに、この方法を使って任意の☆5アイテムを手に入れる事は出来ない。これは一回限りの裏技みたいなもので、二度は通じないそうだ。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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