574回目 ブーケ舞う祝福の日
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純白を基調としたドレスに、銀糸で細かな模様が刺繍され、所々には僅かに色の付いた真珠が散りばめられている。
ティアナの頭部には様々な色の宝石が付いたティアラがあり、この世界の花嫁にはベールはない。だからこそ、薄く化粧をされたティアナが皆に注目されて恥じらう顔も、俺からはよく見えていた。
そして、右手を父であるレクターの腕に絡め、エスコートされる形でティアナがゆっくりと近づいてくる。
ティアナが近づいて来ると、彼女が左手に持つ青色のブーケだ。にも目がいった。ティアナのウェディングドレス姿は、今の今まで俺は見せて貰えなかったが、あのブーケの花には見覚えがある。
何故ならあのブーケを形作る様々な青い花は、俺がティアナにプロポーズするために造った温室にあった花だからだ。つい先日、俺はティアナと共にあの温室に足を運び、『ウェディングドレスに合うのは青色の花だと思うの』とティアナに聞かされ、ドレスの仕上がりは解らないままに一緒に花を選んだのだ。
青色のブーケは、薄い青色から濃い青色へのグラデーションが作られており、それは確かに、ティアナのウェディングドレスによく映えていた。
美しい。素直にそう思う。そして俺の花嫁が、いまテレビの放送を通して世界中の人々に見られているのだと思うと、つい世界中の人々に自慢したくもなり、弛みそうになる顔をなんとか引き締めた。
「……………………」
ふとティアナをエスコートするレクターに目を向けると、レクターは目尻がうっすらと光を反射しているものの、涙を溢さない様に堪えていた。
しかしそれも、俺の待つ手前に来るまでであり、ティアナの手がレクターの腕から離れ、一歩前に出たティアナの背中を軽く押して送り出す時には堪えきれずに、レクターの両の目からは、止めどなく涙が溢れ出す。
「…………どうかな、ガモン」
ティアナの手を取り、エスコートをする形に腕を絡めた時、他の物には聞こえないようにティアナが囁いた。だから俺も、ティアナにだけ聞こえるように『とても綺麗だよ』と囁き返した。
その後、式は滞りなく進んだ。
ただ、結婚の誓いを立てた所で『神々の像の全てから光が放たれてキラキラと光の粒子が聖堂全体に舞い落ちる』と言うサプライズと言うかハプニングと言うか解らない神々の祝福はあったが、概ね予定通りに終わり、俺はティアナをエスコートしながら集まった皆の祝福を受けて、教会の外に出た。
「おめでとうーーーーっ!!」
「ガモン様ーーっ! ティアナ様ーーっ!」
「お二人のこれからに祝福をーーーーっ!!」
教会の外で浴びる万雷の拍手と祝福の声。
そしてそれらが落ち着いた所で三つの教会の尖塔から、鐘の音が響き渡る。
──カラァーーン、カラァーーン…………。
それは祝福の鐘であり合図の鐘でもある。鐘の音を何度か数えた所で、大きな噴水のある広場を挟んで向かい合う二つの教会の扉が開いた。
その両方から出て来るのは、今日この日に結婚式をあげる大勢の若者達だ。
片側からは似たような、しかし差異はあるタキシードに身を包んだ新郎達が出て来た。
彼らの種族や生い立ちは、まさに千差万別。その大半は、種族や生まれ、そして現在の立場で愛する者と結ばれる事が難しかった者達である。
同じ事は新婦側の方にも言える事で、レプラコーン達が作り上げたウェディングドレスに身を包んだ彼女達の、その手に持つ色とりどりのブーケは、彼女達が掴んだこの奇跡を受けて、小刻みに震えていた。
新郎にも新婦にも、まだ誓いを立てていないにも関わらず泣いている者が多くいる。
だが、そんな彼らの先頭に立つ二人は、この奇跡に対しての感動を胸の奥にしまい込み、ゆっくりと中央の広場ににある噴水へと歩き始めた。
新郎側の代表者はロミオル。新婦側の代表者はジュリエナである。
この光景を見ているどれだけの人々が知っているだろう。その真実に辿り着くだろうか? この合同結婚式は、そもそもがこの二人の愛を切っ掛けとして実現したのである。
中央広場の噴水に向けて、両側から二人がゆっくりと歩く。噴水はその中央を歩けるように道があり、そこに足を踏みいれた二人の距離は近付いていく。
噴水はその道を歩く者が濡れない様に計算してつくられており、吹き上がった水はアーチを描いて、別の噴水に着水する。二人は水のアーチを潜り抜けて、とうとう噴水の中央で立ち止まった。
二人が立ち止まったのは、噴水の中央にある『浮遊盤』だ。そこに二人が乗ると『浮遊盤』はゆっくりと上昇し、彼らは噴水の上部に登った。
そして二人は向かい合って互いの手を握ると、二人の近くまで吹き上がった水に、誓いの言葉が映し出され、ロミオルとジュリエナだけでなく、この合同結婚式に参加した新郎と新婦が、同時に誓いの言葉を読み上げた。
「「「「私達はここに誓う。互いを尊重し、敬い、助け合うと。生ある限り相手を愛し、家族の絆を大切にすると、ここに誓う。神々よ、この永遠に変わらぬ誓いに祝福を!!!!」」」」
その誓いの言葉は神に届いたのか、空からキラキラとした光が愛を誓った者達に降りそそいだ。
そして愛を誓った全員が寄り添い、花嫁のブーケに新郎が手を添えて、共に空へとブーケを投げる。俺もティアナと共にブーケを空へと放り投げ、そのブーケは上空で強い風に流されて、『レナスティア』を出て流れていく。
この風は、偶然ではなく神々の手によるものだ。せっかくこの結婚式の映像が世界中に流れているのだからと、運命神が提案した演出だ。この神に祝福された結婚式を、実体験として世界中の人々へ知らしめる為の演出である。
◇
「…………おい! あれを見ろ!」
「空に花の道が…………」
「あの『テレビ』ってのに映っているのって、本当の事なのか…………」
「キレイ…………」
この日この世界では、愛を誓ったブーケの花束が空を飛び、世界中に色取り取りの花弁を舞わせた。
地上からそれを見上げていた人々は、その全員が神秘的な愛の奇跡を目撃し、運良く降ってきた花弁を手にした者は、例外なくその花弁を押し花の栞等にして宝物にしたと言う。
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