571回目 合同結婚式の準備
☆5『◇天空城『レナスティア』』にて、国や種族のしがらみを越えた合同結婚式が企画された。
世界に眼に見えた危機があり、滅びに向かう世界を何とかしようと言う今だからこそ、普段ならば決して越えられないような障害でも、鼻で笑って無視する事が出来る。
今のこの状況だからこそ、結ばれる愛があるのだ。しかもそれを、祝福するのは本物の神々。
もちろん神々が、人間の結婚式のために降りて来る訳もないが、結婚式の場所は現在、世界の中心とも言える場所、☆5『◇天空城『レナスティア』』である。神々が見ていないなど有り得ない。
そんな訳で、『フレンド・チャット』を介して世界中にお触れが出た。
別に、世界中から人を集めるつもりはない。基本的に一般人は自らが育った母国から出る事は無いので、国や種族間に壁がある事は少ないからだ。そもそも出会う事が稀なのだから。
他国や別の種族との出会いが最も多いのは、間違いなく『レナスティア』だ。世界中へのお触れは、結婚式の模様を放送する為の準備だ。
世界の命運を賭けた『方舟』との決戦を前にした、希望溢れる明るいニュースを世界中に届けて、その胸の内にある焦燥や不安を、少しでも軽くするのが狙いである。
そして皆が忙しく働く中で、俺はやっぱりガチャを回したりしている。だが皆の様子はティアナから教えて貰えるので、大体は知っている。
「ただでさえ『方舟』との戦いに向けての準備や訓練が多くて忙しいのに、皆にはずいぶんと負担を掛けてしまっているな。大丈夫か?」
「大丈夫。結構楽しんで準備しているから。確かに、みんな忙しいだろうけど、世界の危機を前にして愛を貫くなんて素敵でしょ? 世界中の人々に、そして神々に良い結婚式を見せようと、みんなやる気に満ちているわ」
俺はティアナと話しながら、☆3や☆4の装備を合成していく。☆5の装備の多くは、神々と改変後の世界を繋ぐ為に使用されるから、俺達の主力装備は☆3から☆4となる。
それなら☆4だけで行った方が良い気もするだろうが、然に非ず。☆3の中には無視出来ないスキルが結構ある。
☆3『ひのきの棒』の《気絶》などの単体スキルもそうだが、スキルを組み合わせて合成する材料としても、有用な物が多いのだ。
「あ、そうだ。頼まれていた物を纏めておいたぞ。結構な量があるから、マジックバッグに個別に纏めておいた」
「ありがとう! ガモン!」
ティアナに渡す為に纏めておいたマジックバッグを置いた。マジックバッグは三種類あり、それぞれ中には布生地と糸、ミシンとかアイロンの機械類、宝飾品などに分けてある。
これらは全て、ティアナを通してレプラコーン達に頼まれていた物である。
「頼まれたからガチャから出て来たそれらを纏めておいたけど、本当に作るのか? 合同結婚式に出る花嫁達の衣装なんて。何十人分にもなるだろ?」
「そうなんだけどね。今の状況だと花嫁衣装を手に入れるのが大変なのよ。既製品や古着でも流行りに合わせた仕立て直しが必要だし、中には用意する伝手か無い人もいるの」
「それは解るけどさ。せめてガチャから出て来たドレスも併用するとかしたら良いんじゃないか?」
「それでも半分位は作らないといけないでしょ? それにレプラコーンが手掛けたドレスは憧れもあるのよ。流石にエルフやドワーフの皆は手が空かないから、宝飾品とかはガモンのガチャに頼らせて貰うけどね」
「エルフとドワーフはな。今この『レナスティア』で一番忙しいだろうから、しょうがないだろ」
エルフもドワーフも、☆5『技巧神の大工房』や☆5『飛空艇造船所』などで忙しく働いている。
そこには人間も混じってはいるが、彼らは☆4の装備を作ったり、飛空艇の造船技術を習得しようとしてたりとかなり忙しくしているからな。いくらなんでも暇がないのだろう。
『失礼します、マスター。今、よろしいですか?』
「おう、レティアか。何かあったか?」
「あ、じゃあガモン。私はこれらをレプラコーンに届けて来るわね?」
「ああ、わかった」
部屋のテーブルの上に置いてあったレティアのキューブが起動して声を掛けて来たのをきっかけに、ティアナが部屋を出ていった。
『お邪魔をしてしまいましたか?』
「大丈夫だ。それで、どうした?」
『はい。『方舟』が地上に落ちてくる、正確な日時が解りました。315日後の午前五時です』
「…………一年切ってたか。わかった。『フレンド・チャット』を使って、主要な者達にも報告をしておいてくれ。ただしまだ、周知はしないようにとな。せっかく希望のイベントがあるんだ。周知するのはその後にする」
『了解しました』
ついに、『方舟』との戦いまで一年をきった。最終決戦までのカウントダウンが、始まる。
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