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556回目 南の極龍『アルタティッカ』

 南の極龍『アルタティッカ』は、一言で表すならば漆黒の巨龍だ。


 全身は牙から角から鱗まで、全てが漆黒。その中で紅く光る眼と、蒼く燃えているような鬣が恐怖を与えてくるような、そんな見た目をしており、実際に威圧感も半端では無かった。


 と言うか、なんでこんなに待ち構えた格好なんだろう? それに何故か少し怒っているような? 人間ってだけて許せないタイプの龍なのだろうか。


 俺達はとにかく、南の極龍と同じ岩の大地に降りて、ジュエルドラゴン達を宝石に戻して逃がした。


 驚いたのは背中に庇おうとしたアラムが、気丈にも俺の隣に立った事だ。勇気を振り絞っているのか、膝がガクガクと震えているが、それは取り敢えず見なかった事にしてあげよう。



『ディルアークが言っていたのはお前達だな? すぐに来るだろうとアヤツが言うから待っていてみれば、随分と遅かったものだ』


「ぅえっ!?」



 どうやら南の極龍『アルタティッカ』は、北の極龍『ディルアーク』との間で連絡を取れるらしく、俺達の事を聞いて待っていたらしい。となると結構待たせたよな? 丸っと一週間か。この極龍、一週間も俺達が来るのを待っていたのか!?



「えっと、すいませんでした! まさか待ってるとは思ってなくて…………」


『……………………酒だ』


「…………はい?」


『我は酒を好む。ディルアークから聞いているぞ、アヤツには植物やらを献上したのだろう! 我には酒を献上するがよい!!』



 …………ひょっとして、『(それ)』を目当てに待っていたのだろうか? 怒っているのも、楽しみにしていたのに一週間も待ちぼうけを喰らったからだったりして? …………いやいや、まさか。



『どうした、こっちはもう七日も待っているのだぞ! これ以上は待てぬ!! 貴様らの要件を聞く前にまずは酒を所望する!!』



 マジでそうだったのかよ! それで良いのか南の極龍!? …………まぁ、実際に待たせてしまったみたいだし、酒ぐらいは出すけども。



「あ、はい。…………ちなみにどんな酒が好みですか?」



 酒を献上しろと言うので、酒の好みを聞いてみたのだが、それを聞いた瞬間、目に見えてアルタティッカの様子が変わり、若干弱々しくなった。



『む、好みか。…………解らぬ。それほど色々と飲んだ経験がある訳でもないのだ。人の酒ならば、エールと果実酒を飲んだ事があるが、どちらかと言えば果実酒が好みであった』



 …………ふむ、なるほどな。ずっとここにいる龍なんだからそりゃそうか。なんかちょっと可哀想になってきた。


 ちなみに、なら普段はどうしているのかと思えば、龍神ともなれば酒を生み出す泉を作り出す事も出来るらしく、普段はそれを飲んでいるのだと言う。



「なら、色々と出しますから全部試してみましょう!」


『おおっ! 良いのか!!』



 酒なら俺のスキル『ガチャ・マイスター』でいくらでも出せるから、代わりにその龍の酒を貰っていこう。俺はそう心に決めて、手持ちの金をガチャにつぎ込んだ。


 こんな事なら☆5『桃源の酒泉』を持って来れば良かったな。☆5『霊酒の壺』は流石に無理だけど。あれは貴重過ぎるし、神々を呼ぶのに使うしな。


 そんな訳で、宴会が始まった。



『うまい!! これは酒精が強くて良いな!! むぉっ! これは果実酒なのか? むうぅ、初めての味わいだ。何とも言えぬ刺激があるが、これもまた悪くない…………!』



 濃いめのレモンサワーの酸っぱさは初体験だったようだ。だがその酸っぱさも気に入ったようなので、俺は新しく出した盃がわりの大鍋に、今度は梅酒を並々と注がせた。


 ちなみに、酒を注いでいるのは手伝いとしてスキル倉庫から出した『ドール騎士』達だ。


 アルタティッカは、つまみにと出したチーズの塊や生ハムの原木を口に放り込みながら新たな酒をチビチビと楽しんでいる。


 …………サイズ差でチビチビ楽しんでいるように見えるだけで、実際は凄い速度で消費されているんだけどな。酒を注いだり野菜や肉を下処理してサラダや焼き肉にしているドール騎士達が大変そうだ。すまないけど頑張ってくれ。


 まぁ俺は俺で、大鍋に注がれた酒をジョッキで掬って飲む、なんて言う珍しい体験をしているから楽しいんだけどもな! 


 え? アラム? アラムなら酒の席に馴染むのは早々に諦めて、俺が出した☆4『コンテナハウス』で休んでるよ。


 なんやかんやでもう五時間は飲んでるからな。



『ほほう、これもまた新たな味わいよな。うーーむ、これ程に酒の溢れる世界があるとは思わなんだ。いつか行ってみたいものよ』


「アルタティッカが地球に来たら大騒ぎだろうな。まず間違いなく世界が滅びるな」


『心外だな我が友よ。我は友の世界に牙を剥いたりしないぞ?』


「そりゃアルタティッカの事は信用しているけどさ、地球には魔法もブレスを吐いて空を飛ぶドラゴンも居ないんだよ。スライムとかゴブリンすら居ない世界だからな。アルタティッカが突然現れたら、話し合いなんかせずに敵認定なんだよ」


『む、そうなのか?』


「ああ。そのくせ戦う力だけは持ってるから厄介なんだよ」



 アルタティッカが突然現れたら、まずはミサイル攻撃から始まって最終的には核だろう。しかもそれで終わるとも思えないし、滅亡の未来しか見えない。



「今は俺が酒を出せるから良いだろ? まずは新しい友情の証に飲み明かそうぜ!!」


『ウム! そうだな!!』



 南の極龍『アルタティッカ』との宴会は朝まで続き、アルタティッカは俺達への全面的な協力を約束してくれたものの、様々な二日酔い防止を突き抜ける勢いで飲んだせいで、久し振りに二日酔いになっていた俺は、それを地面に倒れたままで聞くハメになったのだった。

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