553回目 白熱! バトルコンサート
アイドル達によるバトルコンサートは、中々に見応えのある勝負が繰り広げられた。
一回戦目は西のアイドル軍団が圧倒的な力を見せつけ、攻撃側では110点を取り、防御側でも相手の得点を許さずに20点に抑えての圧勝をして見せた。
続く二回戦も、攻撃側である東のアイドル軍団の得点を二回も阻み、最後の一回こそ50点を取られたが、自分達の攻撃ではまたもや110点を叩き出したのだ。
二回戦まで終えての両軍の点数は、東のアイドル軍団が70点なのに対して西のアイドル軍団は220点と、実に150点もの差が開いていた。
そして三回戦。ダブルスコアどころかトリプルスコアのリードを持つ西のアイドル軍団の攻撃を、ここに来て東のアイドル軍団が二度も防衛を果たした。
この東のアイドル軍団の躍進には理由がある。
温存していたファンクラブの精鋭を出し、演奏者を交代させた上で、アイドルの衣装チェンジを行ったのだ。
ゆるふわ系アイドルが衣装とメイクを変えて、ダーク系と言える姿に大変身。髪もしっかりと纏め、衣装もボーイッシュなパンクロックにして動きやすくしてきた。これには会場もザワつきながらも盛り上がりを見せた。俺の仲間達も大興奮である。
だが、西のアイドルも負けられないと、気力を振り絞り絞った最後の一撃を放つ!
アイドルと演奏者が気力も体力も魔力も振り絞り、ファンクラブの面々も全力の高速オタ芸を見せての一撃は、高速回転する槍となって10点・50点・100点と言う三枚を一気に貫いたのだ!
この一撃で160点。トータル380点と、とんでもないスコアが叩き出された。
西のアイドルはもう立つ事も出来ない程に疲弊し、あまりにも力の入った一撃の影響で楽器の幾つかが壊れる中で、ファンクラブだけは交代要因が出て来た。
そして東の攻撃となった時、東のアイドル軍団は疲弊と楽器の減少によりマトモに防衛が出来ない西のアイドルグループに対して、全力で叩き潰しに掛かった。
最初の攻撃で10点と50点の二枚抜きを決めると、二回目の攻撃では50点と100点の二枚抜きを決めた。全てを合わせた点数は280点。次に110点以上を取れば逆転と言う所まで追い付いた。
これには、疲れ果て動けなくなっていた西のアイドルも立ち上がった。そしてなんと、自分の立つ舞台を飛び降り、ファンクラブと同じ舞台の一番奥で構えた。
相手の攻撃の際には、防御側のアイドルは歌えない事になっている。しかし、マイクを通さずに歌う分には止められていないのだ。
西のアイドルは、ファンクラブの面々と同じ舞台に立って歌う事で、ファンクラブ士気を大幅に上げる策に出たのだ。
西のアイドルも東のアイドルも、最後の勝負に出た!
東のアイドル軍団は全てを出し尽くす攻撃を放ち、自分達にだけ聞こえる距離での歌に西のアイドルファンクラブは己の限界を越えた最高のオタ芸を魅せる!
そして、最後に放たれた攻撃は西のアイドル軍団の盾を突き抜けて、10点の的と100点の的を貫いた!! …………かに見えた!
だが、表示された点数は100点のみ! 10点の的は西のアイドル軍団の盾がズレさせた軌道によって掠めるに留まり、点を取ったと認められなかったのだ。
こうしてアイドル達の戦いは西のアイドル軍団の勝利で幕を閉じたのである。
◇
「はぁぁーー。…………面白かったな。こんなに手に汗を握るとは思わなかった」
「確かに今回は見応えのある戦いでしたね。ここまでのバトルコンサートは滅多にありませんので、名勝負と言って良いでしょう」
ケイリオンの声も僅かに高くなり、興奮を隠せていないのが解る。
「そうそう。バトルコンサートが終わると、今回戦いを繰り広げたアイドルのグッズが売り出されますよ。オススメは彼女達が今回選んでいた曲のカバーレコードですね。普段は聞けない組み合わせの歌が収録されたレコードですからね。中々に希少ですよ? これ専門のコレクターがいるくらいですから」
「「買う! 絶対欲しい!!」」
コンサートではよくあると思われるグッズの販売に、アリアとアラムが大きな興味を示した。もちろん、他にも興味を示した者はいるし、かく言う俺も興味があった。レコードを買うなんて、そんな経験を異世界で出来るとは想わなかった。
「そうですか。では呼びましょう」
そう気軽に言って人を呼ぶケイリオン。VIP席ともなればグッズを売っている所に出向くのではなく、店の方から来てくれるらしい。
そうして現れた店は、まさにグッズの販売所だった。
売っていたのは、ブロマイドみたいな小さな姿絵に、その姿絵を大きくしたようなポスター。イラスト入り缶バッチにティーシャツにハチマキにタオル、そしてマグカップ。あとは例のレコードも数枚あった。
これには俺達も興奮し、思わず色々と買ってしまった。ついついレコードまで全種類買ってしまったぜ。確か、ガチャアイテムにレコードのプレーヤーが出たのを見た気がするんだよな。あれどうしたっけ? ゲンゴウとかに売ってなけりゃいいけどな。
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