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549回目 アイドルコンサート

『みんなーーっ!! 一緒に盛り上げていくよーーっ!!』


『『オオーーーーーーッ!!!!』』



 光魔法と水魔法の複合魔法が、アイドルがいるステージの前から数本のキラキラとした水柱として吹き上がり、外の光を遮断して薄暗くされた客席では、サイリウムの様な光を放つ魔道具がいくつも振られて、様々な光を見せていた。


 明るくて賑やかな歌が、音楽が、そしてダンスが観客席を大いに沸かせる。その様子は、決して日本でのアイドルコンサートにも負けていないと思った。


 これは想像以上だ。ステージを照らすスポットライトも、観客席を七色に彩るミラーボールも、二つとも魔道具で作られた物であり、継続して動かす為に裏では魔力を送り込む魔道士に繋がっている。先程その説明を受けた時に見たのだが、魔力を送り込む魔道士の側には魔力回復薬が何本も置いてあり、その近くには予備として別の魔道士も控えていた。



「いやしかし、アイドルのコンサート自体初めてなのに、それを裏側から見れるとは思わなかったな」


「おや、コンサートは初めてだったのですか? アムラー女王陛下と同じ国の出身と聞いていたので、てっきりコンサートも何度となく行っているものと思ってましたが…………」



 この大音量なら聞こえないかと小さく呟いたつもりだったが、案内役の第三王子ケイリオンには聞こえてしまったようだ。



「いや、俺の国だと有名アイドルのコンサートは倍率も高かったし、行ってみようと思った事はあっても縁が無かったんですよ」


「では、今度は真正面から見られるようにチケットの手配もしておきましょう」


「ありがとう、ケイリオン殿」



 俺がケイリオンとそんな風に話している間、仲間達はアイドルのコンサートを熱心に見ていた。


 この国には、魔道具ではあるがマイクや大型スピーカーなどもしっかり存在しているので、音が体に叩きつけられる感覚と言うのも味わう事が出来る。


 それに、ステージの脇から見る観客席というのも中々見られるもんじゃないしな。歌に合わせてリズミカルに振られる色取りどりのサイリウムなんかは、とても綺麗だ。


 …………しかし、アイドルが歌う曲の中に何だか聞いた事のある歌がチラホラあるな。おそらく勇者アムラーが広めたのだろうが、その中には途中からオリジナルの歌になっている物もある。


 何でかと考えてみたのだが、その歌はCMソングだった事を思い出した。


 おそらく日本のテレビで流れていたCMソングを勇者アムラーが覚えていて、それをアイドル達に伝えたのだろう。


 だが、CMソングは知っての通り短い。十数秒のCMに合わせて作ってあるからだ。そしておそらく勇者アムラーは、そのCMで流れていた部分しか知らない、もしくは覚えていなかったに違いない。


 そのため、そのCMソングを楽曲として歌うには、CMソングの短さをカバーする必要が出てきたのだろう。そこでそのCMソングを元にした、ほとんどオリジナルに近い歌が作られたのだろうと予想した。



「うん? …………これは、もしや…………バフが掛かっている…………?」


「気付かれましたか、このコンサートではそれほど効果が出るようには魔方式を組んでいないのですが、さすがは聖騎士たるアレス殿ですね」



 俺は全く気付かなかったが、知らない内に俺達全員にバフが掛かっていたらしい。


 ケイリオンによれば、それは『体力』と『自然回復』に効果をもたらすバフだそうだ。それがこのコンサートで流れる歌と曲に練り込まれ、この会場にいる全員に向けて継続的に掛けられているらしい。



「我が国が勇者ガモン様を招待した理由がこれです。我が国には長年に渡って研究された独自の『魔術回路』があります。それは歌や音楽、そしてダンスによって効果を放つ特殊な魔術なのです」



 それは言わば『歌魔法』。歌や音楽にダンスを必要とするが、僅かな魔力を糧にして、それを目や耳にする者達に継続してバフを掛け続けるとんでもない代物だった。



「我が国には『方舟』との戦いに出せる物が乏しいですが、ぜひこの魔術によって、皆様を支援させて頂きたい。この魔術がそれに有効な証も、この次のコンサート会場で証明して見せましょう」



 胸を張ってそう言ったケイリオンの表情は、それはもう自信に満ちたものだった。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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