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547回目 『アムステ王国』

 チカットが運転する☆4『マイクロバス』に乗って、俺達はアムステ王国の中央にある王宮へと向かった。


 アムステ王国は劇場へのシャトルバス、もといシャトル馬車がよく行き交うので、他の国にはない二車線道路が通されている。交通ルールも定められている上に、なんと魔道具で作られた信号機まであるのだ。この発想をもたらしたのは間違いなく『勇者アムラー』だろう。


 そして道路脇に並ぶ店の前には歩道もしっかり整備されており、店の前は屋根を繋げてアーケードの様にしてあるのも驚きだ。


 この国は人々の服装も日本に近いし、しかも今は『マイクロバス』に乗っている。ともすれば日本に帰って来たと錯覚しそうな風景と賑やかさである。



「凄い。外から、ずっと音楽が聞こえて来るわね」


「楽団と一緒に歌を歌っている人が何処かにいるのでしょうか? でも、同じ歌が続けて聞こえて来るとは、どういう事でしょう?」


「魔道具じゃない? 確か音を記録する魔道具ってのが、アムステ王国から発表されたって聞いた事があるわ」



 ティアナとシエラにカーネリアは、マイクロバスの一番後ろに並んで座り、さらにその前の二席を横向きに変えてアリアやアレマーの女性陣がが座っているので、その場所はさながら女子会の様だった。


 そして、ティアナ達の疑問の声が聞こえたのか、その疑問にエルケイが驚きの回答を示した。



「あれはですね、我が国で発明された『レコード』を使って流しているのですよ。まぁ、魔道具には違いないのですが、その大元となるのはかつての女王陛下であるアムラー様がもたらした異世界の技術ですよ」


「レコードをイチから作ったのかよ!? 凄いな! その仕組みは何となく解るけど、作れんのかアレ!!」



 マジかよ。それってこの世界の物を使って蓄音機を発明したって事だろ!? 作れるのか蓄音機!! いや作れるんだろうけども! よくそこに行き着いたな!!


 俺も何となく、音の振動で溝を刻んで、その溝を針がなぞる事で音が再現される、程度の事は知っているが、その程度で作れる物なのかアレ?


 いや、苦労はしたんだろうけどな。そもそも俺にはガチャがあるから、どうしてもガチャアイテムに頼ってしまうからな。ガチャなら、普通に現代のアイテムが出て来るし。


 しかし、何にせよ凄いな。そして、レコードがあるから、街では流行りのアイドルソングが流れている訳だ。


 ちなみに、この一帯に同じ曲が流れているのは、あのアーケードのような屋根に秘密があるそうだ。アーケードの屋根の至る所には『伝声管』の技術を用いたスピーカーが設置されており、そこから音が溢れて来ているのである。


 俺達は、この国の流行りのアイドルソングを聞きながら街を抜け、宮殿へと辿り着いた。


 アムステ王国にあるこの宮殿は、古くからあった物が時代と共に改装され、今ではコンサートホールも兼ねる造りとなっている。


 ただし、このコンサートホールが使われるのは年に四回だけであり、ここでコンサートでライブが行えるのは、その年の四半期において特に優秀で人気の高い者が選ばれるのだと説明を受けた。



「こちらへどうぞ」



 案内人であるエルケイに先導されて、俺達は宮殿へと入った。ここまでマイクロバスを運転してくれたチカットはマイクロバスと共にその場に残った。


 宮殿を歩きながらエルケイにこの国についての説明を受けたのだが、『勇者アムラー』が女王になって以来、この国では男性の王と女性の女王が交互に即位する不思議な伝統が残ったらしい。


 それも全て、女王となってこの国の基盤を作り大きく発展させた『勇者アムラー』にあやかっての事であるようだが、聞いていると「冗談だろ?」と言いたくなる伝統もあった。


 その一つが次に女王となる王女に課せられた伝統である。



「はじめまして『勇者ガモン』様。アムステ王国第一王女の『アムリー』です」


「第二王女の『ナミー』です。姉共々、よろしくお見知りおき下さい」


「……………………どうも、はじめまして」



 忙しい王に代わって宮殿の中庭で王女達に会う事になったのだが、その容貌については事前に説明を受けていたにも関わらず、少々フリーズしてしまった。


 だって二人共、いわゆるガングロメイクだったのだ。いや、むしろヤマンバメイクの方が近いか? 肌はこんがり焼けているのに、眼の周りが真っ白だしな。そう、このメイクこそが辣腕の女王でもあった『勇者アムラー』にあやかる為の、王女に課せられた伝統である。


 確か、とうの『勇者アムラー』はこの姿を自分の黒歴史として後に抹消しに掛かった筈だから、子孫のこの有り様を知ったら化けて出るかも知れないな。と、密かに思った。


 王女の姿は日焼けと化粧だけに留まらず髪型もだいぶ盛っていて、くすんだ金髪が色々とデコられている。こんな異世界によくそんなメイクセットがあったな。


 …………いやそうか、この国は化粧品の開発にも力を入れている国だったな。いやそれにしたって、やり過ぎだろコレ。こんなメイク、日本だともう絶滅してない?


 俺は異世界で、日本的なカルチャーショックに襲われていた。

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