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541回目 世界の守護者『双極龍』

 世界の守護者。そう神が評したのなら、それは間違いなく事実なのだろう。


 そう評されたのは『双極龍』。この星の北極と南極にそれぞれ一体ずついる世界最強の『龍』である。


 まぁ、最強の龍! とは言っても、それを確認した者は少ない。だって北極と南極にいる上に、多分アレだろ? 『北極点』と『南極点』にいるんだろ?


 そこは簡単に言えばど真ん中だ。正確には違った気もするが、そこに到達するだけでえらい苦労する場所なのは間違いないだろう。


 そんな所にいる世界の守護者たる最強龍。そんな存在に、『これから世界をガラッと変えようと思うんですけど良いですか?』とか聞きに行く訳だ。『うん、良いよ』なんてなる筈がない。十中八九戦いになる。よくある王道パターンとしては『ならば貴様の力を見せて貰おう』とか、そんなパターンだ。


 いや、神々も賛成してくれているみたいだし、大量の瘴気を常に撒き散らしている『方舟』と戦うには、マジで広大な場所と、その後も生きていける場所が必要だ。


 陸地を空に浮かべて、戦いの間は星の裏側にでも回しておく、そして戦いの間に出た大量の瘴気は海に閉じこめる。そのくらいしか解決策を思いつかないのだ。


 だから、是非とも『双極龍』には力を貸して貰いたい。その為には、まだ子供であるアラムの力が必要だ。普通なら人を寄せ付けない『双極龍』だが、『竜騎士』の力を持つアラムなら、話くらいは聞いてくれるらしいからな。



「…………どうだアラム。力を貸してくれるか?」



 俺はアラムとその家族であるアルグレゴとアレマー夫妻に、兄のアレスと姉のアリアの全員を説得するべく、アレス一家の部屋にいてくれるように連絡を入れた上で説得にやって来た。


 忙しいアルグレゴにまで帰って来て貰ったのは、アラムはまだ子供なので親御さんの許可も必要だからだ。


 会いに行くのは『双極龍』だ。心配なんてして当たり前の場所だからこそ、アルグレゴ達の許可も絶対に必要なのだ。


 当然だが、当初はアルグレゴもアレマーも渋っていた。だが、アラムは竜騎士としての資質がそうさせたのか、アラムの隣にいて闘志を漲らせている『カイザー・ジュエルドラゴン』のカイザーがそうさせているのか、『双極龍』に会いに行くことを熱望した。


 幼いながらも決意を秘めた眼で両親に訴えるアラム。その訴えが強すぎたのか、アラムに『フレンドクエスト』まで生えた。


 内容は当然、『『双極龍』とアラムを出会わせる』事だった。アラムの後ろでシャドーボクシングをしているジュエルドラゴンがいるが、決して戦って来いと言うクエストではない。出会うだけで良いのだ。


 しかも運命神『ダイス』の後押しなのか、一体と会うだけでクリアとする旨まで付け加えられていた。つまり、どちらかの『双極龍』と会うだけでアラムは『トゥルー・フレンド』となり、『絆の証』が使える様になる。それさえあれば、トゥルー・フレンド間での転移が使えるので、瞬時に撤退する事ができる。


 この脱出手段が決め手となり、アルグレゴとアレマーは折れたのだった。



 ◇



 北の空を飛ぶ飛空艇『アベルカイン』の甲板。そこで俺とアラムはそれぞれのジュエルドラゴン、『グラック』と『カイザー』を出していた。


 甲板の上には俺達以外にも、ここまでついてきた仲間達も並んでいる。今回、俺とアラム以外は全員が見送りに出てるだけである。



「本当に二人だけでいくの? せめて、アレスとシエラだけでも連れて行くべきじゃない?」



 本当なら自分も行きたいってのを抑えて、ティアナがそう言って来た。ティアナとしても、『双極龍』を刺激しない為にも人数を最小に絞った方が良い事は解っているのだろう。


 そこで、連れて行くのもアレスとシエラを推したのだ。アレスならば鎧の力で飛行もできるし、シエラは治癒魔法が使えるからな。


 だが、行くのは俺とアラムだけだ。



「心配かけて悪いとは思うけど、俺達は別に喧嘩売りに行く訳じゃない。出来るだけ穏やかに話をしてくるつもりだ」



 それが出来るかどうかはさておいて、最初から喧嘩腰で行く訳にもいかないからな。ここはやはり、俺達だけで行ってみるのが良いと思うのだ。



「…………気をつけて。ちゃんと生きて帰って来てね」


「わかってる。いざとなれば、『絆の証』を使って逃げ帰って来るさ」



 俺はティアナと、アラムは家族とハグを交わして、ジュエルドラゴンに乗って空へと飛び出した。


 その後しばらくは、ジュエルドラゴンに身を任せて北の空を飛ぶ。この辺りは『双極龍』の縄張りに近いからか、はたまた生きるのに適さない場所なのか生物もモンスターの姿も無い。


 そもそもこんな所を飛んでいたら寒さで大変な事になりそうだが、ジュエルドラゴン達が展開しているバリアによってドラゴンの背中は中々に快適だった。



「…………あれがそうか」



 そして北に向かって飛び続けていると、眼前に雲が作り出す大渦が見えて来た。『双極龍』の一体がいるとされる北の地を覆う雲の渦。この先に足を踏み入れて帰って来たのは、歴代の『勇者』の極一部だ。



「行くぞアラム!」


「…………声が聞こえる」



 気合いを入れて雲に飛び込もうとした矢先に、アラムが呟いた。ジュエルドラゴンのバリアに護られているとは言え、普通に声は聞こえない。だから俺はジェスチャーで伝えていたのだが、アラムのその呟きは、その口の動きでハッキリと解った。


 そして、目の前の雲の大渦に奥まで続くであろう穴が開いた。


 どうやら北の『双極龍』は、俺達を招いてくれるみたいだな。

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