532回目 住人からの申請書
最近、☆5『◇天空城『レナスティア』』内の活気が凄い。『レナスティアの街』も、各国の代表として俺のフレンドとなった住人が増えたし、観光客も多く訪れてかなり活気づいている。
いや、正確に言えば活気はあったのだ。少し前からずいぶんと賑やかだった。だが、今回のそれは今までのとは少し違う。
住人が増えて、観光客もいて賑やかな『レナスティアの街』とは違って、気焔渦巻く四つの浮島は、鬼気迫るような盛り上がりを見せていたのだ。『方舟』との戦いも、まだずいぶんと先だと言うのに。
人間もエルフもドワーフもマーメイドも関係なく、その全てがかなりの熱量をもって訓練に励んでいる。
何でこんなに熱が入っているのか。その答えは、ある日の昼下がりにアレスからもたらされた。
「大会の申請書? 『武道大会』『魔術大会』『コーディネート大会』…………? 何これ?」
「見ての通り、各種大会への申請書ですね」
一人で読書をしていた俺の前に立つアレスは、俺に手渡した紙の束をそんな風に説明した。各種大会の申請書? 何のこっちゃ?
「武道大会だけで五枚もあるじゃん。『剣術限定』『格闘限定』『鞭術限定』…………? 鞭を使う奴なんてそんなにいるの?」
「いないでしょうね。優勝する確率を上げたかったんじゃないですかね?」
まぁ、そうなんだろうけど。…………いや、本当に何これ?
俺が顔を上げると、不思議に思っているのを察したアレスが申請書の一部を指差した。これらが出された理由が、そこにあると言う意味だ。
そして、そこにはこう書かれている。『優勝者への商品として、☆5『料理神『ルカタルト』のリストランテ』を使用する権利を求む』と。
「…………つまりアレか? ルカタルトの店で食事がしたいが為に出された申請書って事か?」
「そういう事です。国としての『レナスティア』の事については我々で決めて良いと言われてましたが、さすがに☆5アイテム、それも神が関わるとなると我々だけでは決められないので、俺が代表して報告に来ました」
「…………なるほど。…………でもさ、フレンドになっている人達の中からはくじ引きで選んでたよな? もう三回くらいはそれで行った筈だろ」
「その通りです。でもそれは、くじで当たった人達だけをまとめて招待したもので、この申請書では優勝者に一緒に行く者を決める権利が発生します。要は、家族や恋人とリストランテに行きたいのですよ」
「そう言う事か。まぁ、それは理解できるよな」
「ええ、本当に」
これについては配慮が足りなかったと言わざるを得ない。いくらくじ引きとは言え、まったく知らない者達との食事では、どんなに料理が美味しくても心から楽しめなかったのかも知れない。
だが、くじ引きで当たった人が一緒に行く人を選べる方式だと当選確率もグンッと落ちる。それよりは、実力で手にしようと言う事なのだろう。
「このくじ引きについての要望書ってのは、そのルール改正についてか。各種大会の出場者には権利が失効するって書いてあるあたりは抜け目ないな」
「それで、どうしますか?」
「…………まぁ、通すしかないよな? もちろん全部じゃなくて厳選するけどさ。最近ずいぶんと訓練に熱が入っていると思ってたけど、この為だったんだな。あんなの見せられたら、ダメとは言えないものな。暴動が起きそうだし」
「はい。あれほどの熱意は断らせない為でもあったのでしょうね」
とにかく、俺は☆5『料理神『ルカタルト』のリストランテ』を使用する許可を出して、各種大会の申請書を厳選するようにアレスに頼んだ。
厳選が終わったら、打ち合わせをして種目と場所や日時を詰めていくつもりだ。けっこう大掛かりな物になりそうな予感が、この時点ですでにしている。
「しかし、この『鞭限定』などの大会になり得ない物を外したとしても、けっこうな数にはなると思います。実際、これらの申請書はここにある以外にも届いていますからね。期限を決めて、一度締め切らないとキリがありません」
「その期限とか厳選については任せるよ。やる場所については『レティア』に相談…………でも良いんだけど、ちょっと心当たりがある」
実はルカタルトに渡す食材や贈り物をガチャで出している中で、ちょうど良さそうな☆5アイテムが出ていたのだ。
どう使おうかと迷っていたアイテムだったのだが、この機会に試運転をさせて貰おう。
もしかしたら『方舟』との戦いでも使えるかも知れない、そんな風に思えるアイテムだったからな。
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