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529回目 ルカタルトのお願い

 料理神『ルカタルト』。


 かの女神の手は、触れた食材をもっとも良い状態にし、かの女神の握る包丁は、その食材の鮮度を保った状態でもっとも良い味となるように食材を捌く。


 かの女神が扱う調味料は料理の味を最大限まで高め、かの女神が扱うスパイスは料理を芸術にまで昇華する。


 かの女神によって盛り付けられた一皿は、もはや一つの世界である。見た目に美しく、香りに高く、その皿の何から口に運ぼうかという迷いすら、食す者の気持ちを高ぶらせてくれる。


 その全ての行いは正に『料理神』と呼ぶに相応しく、かの女神のリストランテを訪れた者は、間違いなく人生において一番となる食事の記憶を刻む事となるだろう。



 ◇



「……………………凄かった。大満足だ」



 料理神『ルカタルト』のフルコースを堪能した俺達は、食後に出されたコーヒーや紅茶を飲みながら余韻に浸っていた。


 ルカタルトのフルコースは、その一つ一つが正に芸術で、この料理はこれより上が無いと、ハッキリと確信できる程に完成していた。


 料理に使われていた材料の多くは、俺が提供したガチャ食材であるはずだ。しかし、これ本当にそうか? と思い、途中でルカタルトに確認してしまう程に、俺が今まで食べてきた食材とは隔絶した差があった。



「本当に美味しい料理だった。ここまでの物は、私も食べた事がないくらい」


「侯爵令嬢としてそだったティアナですら食べた事の無い物なら、あの美味しさも当然ですね。私などはもう、言葉を発する事も出来ませんでした」


「私だってそうだったわ。本当に素晴らしい料理だった」



 満足そうに息をつくティアナと、祈るように眼を閉じるシエラ。その隣にいるカーネリアも、とても満ち足りた顔をしていた。



「一口食べる度に心が震えるようでした。自分だけが食べているのが、家族に申し訳なく思う程に」


「これアレス。今はこの料理を作ってくださった女神様への感謝が先じゃぞ。それに、家族と食べに来るのも、夢ではあるまい」



 アレスの家族か。確かに俺達だけで食べるには素晴らし過ぎる料理の数々だった。ルカタルトのリストランテは何度か利用するつもりだし、その内の一度は、アレス一家に提供するのも悪くは無いな。


 しかし、重ねて凄い料理だった。スープなんか、一口目で驚き、二口目で感動し、三口目で俺は泣いていた。ただその素晴らしい味わいに、自然に涙が溢れていたのだ。


 料理が美味しすぎて泣くなんて、そんなの漫画の世界だけだと思っていたが、現実にあるんだな。


 言っておくが、泣いてたのは俺だけじゃないぞ。あれは本当に、泣ける程美味かったんだ。何と言うか奥行きがな、凄かった。味ってあんな事になるんだなと、初めて知った。


 もちろん、他の料理も身震いする程に美味かったぞ? 俺の中では、その中でもスープが頭一つ抜けていたってだけだ。



『皆さーーん、今日はお楽しみ頂けましたかーー』



 おっとりとした声と共にやって来たのは、今日の料理を作ってくれたこのリストランテの女神、ルカタルトだ。


 ルカタルトが押して来たカートには紅茶やコーヒーのポットと共に、一口サイズのクッキーが盛られた皿があり、その皿がテーブルの中央に出された時には、軽く生姜の香りがした。



「今日はありがとうございました。とても素晴らしい料理で、感動しました」


『いいえーー。楽しんでくれたのなら、私も嬉しいですからーー。こちらはサービスのクッキーでーーす。少し、私とお話でもしましょーー』



 ルカタルトから話しに来てくれたのは嬉しい誤算だ。あの依頼を出す気はまだ無いが、ルカタルトとの関係性はより良いものにしておきたいからな。


 俺は取り敢えずテーブルの上に出されたクッキーを食べてみたが、軽い食感で甘さは控えめで生姜の香りがする、何とも優しいクッキーだった。サイズも小さめなので、一口で食べられる上に会話の邪魔にもならない、食後に会話をしながら摘まむには、ちょうど良いクッキーだった。


 そうして、しばらくの間はルカタルトと、料理の事についての雑談をして過ごした。ルカタルトはやはりと言うか、地球の料理に興味があるらしく、食材と一緒に入れようか迷った料理本については、是非とも入れて欲しいと頼まれた。


 ルカタルトと仲良くなれるなら、ガチャ書籍の十や二十は惜しくない。ついでに料理系の漫画も入れてみるか、俗に言う漫画飯が食えるかも知れないし。



『ところでねーー。実はガモンちゃんにお願いがあるのよーー』


「お願い? なんでしょう?」


『あのねーー、お酒を買わせて欲しいのーー。まぁ、買うと言ってもーー、私の料理との交換になるんだけどねーー』



 ルカタルトのお願いとは、ガチャから出て来る多種多様な酒が欲しいと言うものだった。料理に使うのはもちろんだが、ルカタルトはどうも酒を飲むのもかなり好きであるらしく、缶ビールや缶チューハイなんかの庶民的な物も欲しいと言う。


 まぁ、これについても構わないので、俺は庶民的な物からアルコール度数の強いヤツ、それにかなりの高級品となる酒も大量に出してあげた。


 そしてルカタルトからは、箱を開けるまでは決して腐ったりしないと言う、半永久的に保存可能な弁当『ルカタルトの日替わり弁当』を幾つも貰う事ができた。


 ルカタルトの手製の弁当なら、その味にもかなりの期待がもてる。今から食べる時が楽しみである。

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