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528回目 料理神『ルカタルト』

 ☆5『料理神『ルカタルト』のリストランテ』を使うと、チケットから目映い光が溢れ出し、気がつけば空に浮かぶ小島の上にいた。


 いや、本当に空に浮かぶ小島だ。少し歩けば島の端っこに着いてしまう様な、本当に小さな島だ。



「…………うわぁ。な、なんか凄い場所だね」



 足元はちゃんとした地面なのだが、この小島、遥か下に地上が見えるもんだからたちが悪い。地上には街も見えるし、この距離感が恐怖を掻き立てたのかティアナが俺の側に来て腕を掴んだ。



「と言うか、お店がありませんね? 別の島にあるのでしょうか?」


「いくつか島があるものね。…………どうやって行くのかしら?」


「どれ、ちょいと見て来るとしようかの」


「あ、俺も行きます」



 言うが早いか、ドゥルクとアレスがそれぞれの方法で空に飛び上がった。ドゥルクは魔法で、アレスはサッと装備を着こんでその翼で飛んだのだ。


 そして二人は、それぞれに上空を軽く旋回して戻って来た。



「フム。おそらくコレだろうと言う建物が、あったぞ。向こうの島にじゃがな」


「俺も見ました。そこ以外には建物は無かったので間違いないと思います」



 ドゥルクとアレスが見た所によると、この島から幾つかの島を越えた向こう側に、その建物はあったらしい。


 問題は、どうやつてそこまて行くのか、だったのだが、それはあっさり解決した。この場所の幾つかの島は、島と島を結びつける『虹』が掛かっているのだが、なんとこれこそが道だったのだ。


 俺達はドゥルク先導のもと、虹の橋を渡りながら空に浮かぶ小島を渡り歩いた。この小島にもちょっとした役割らしき物が見える。


 例えば畑。例えば牧場。などなど。狭いながらもスペースを有効活用して、様々なことにチャレンジしていた。


 畑も牧場も、あまり種類や数は無かったが、この場所にある以上、それを用意したのは『ルカタルト』なのだろう。


 それらの島を渡り歩き、この場所にある島の中で一番大きな島に到着すると、そこには一軒のレストランが存在していた。


 それなりに大きな店構えには、俺の知らない文字が大きく並んでいたが、見た事の無い文字にも関わらずそれは『ルカタルトのリストランテ』と書かれているのが解った。


 ちなみにこれは神の世界の文字であるらしく、ドゥルクですら知らなかった神代の文字である。それが読めるのは神の力かスキルの力か。対象が全員である所を見るに、おそらくは神の力なのだろう。



 ◇



 …………カラン、カララン。



『いらっしゃいませーー』



 扉を押し開ける事でベルが鳴り、店に入った俺達を柔らかな声が出迎えてくれた。


 店にいたのは、スタイル抜群の身体にコックの服を着た女性で、ピンク色のフワフワした髪を太い三つ編みに纏めた、おっとりとした女神だった。


 そう、女神である。一目で解る程に神の存在感を持つ料理神『ルカタルト』が、俺達を出迎えてくれたのだ。



『ご予約のガモンさん一行ですねーー。こちらへどうぞーー』


「は、はい。どうも…………」



 おっとりとした女神に案内されて、俺達が店の中央のテーブルに行くと、誰もいないのに勝手に椅子が引かれ、俺達に着席を促した。


 そして俺達が席につくと、ルカタルトはいつの間にか持っていたグラスの並んだお盆に、これまたいつの間にか持っていたピッチャーから水を回すように注いで、俺達一人ずつに配ってくれた。



『当店にはメニューはありませーーん。少人数のお客様には、その日のコース料理が出てきますので、楽しみにお待ちくださーーい』



 そう言い残して店の奥へと引っ込んだルカタルトを見送って、俺達は互いに顔を見合わせたあと、示し合わせたように水を飲んだ。



「「…………ん!?」」



 いや、驚いたよね。ただの水だと思って、ちょっと緊張しているのを解そうと、乾いた口を潤そうと口に含んだ水が、ものすごく美味かった。


 冷たさもあるが、透き通った味と喉越しが、頭の中に勝手に標高の高い雪山をイメージさせた。誰に説明されるでもなく理解した、これが俺達とは別の世界にある雪山の『雪解け水』なのだと。



『はーーい。まずは食前酒とアミューズでーーす』



 油断した所に水の先制パンチを貰った所で、本格的にコース料理が始まった。


 一番最初に出て来たのは、グラスに入った黄金色の酒と、皿に二つ並べられたスプーンとフォークの料理だった。


 スプーンの上にはホタテの貝柱をメインにした小さな料理が乗っており、フォークには三つ葉の飾られたパスタが巻かれていた。どちらもそれ単体の一口料理。こういうのがあるのは知っていたが、実際に見るのも食べるのも初めてだ。


 俺達はその美しい料理を見ながら食前酒を口にし、その芳醇さに打ちのめされてから、皿の上の料理で迷った。



「……………………」



 俺は少し考えた末にフォークを手に取る。そしてふと仲間達の様子を見れば、皆も迷った末に片方の料理を選んだ所だった。


 そして、全員で頷き合ってから、俺達はそれぞれのスプーン、もしくはフォークを口に入れた。


 料理神『ルカタルト』。かの女神がそう呼ばれるのはごく自然な事なのだと、俺達はこの一口から充分に感じ取った。

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