525回目 神を呼ぶ酒
天空城の中庭に出しっぱになっている☆4『◇キャンピングカー』の中。俺とドゥルクしか入れない秘密の部屋で、俺はドゥルクと共に☆『霊酒の壺』を囲んでいた。
すでに『霊酒の壺』はいっぱいであり、その横におかれた密閉できる壺の中に余剰分を移しているくらいである。
「どうだドゥルク。余剰分はどのくらい溜まった?」
『ふむ。やはりそう多くは無理じゃな。『霊酒』は溜まるのに時間が掛かり過ぎるわい。それに、ホレ飲んでみよ』
「…………こんなにか? 飲むより溜めたいんだが?」
『いいから飲んでみよ。飲めば解るわい』
幽霊状態のドゥルクが差し出した『霊酒』を、俺は眉をしかめながらも受け取った。
小さなぐい呑みの中の『霊酒』は、黄色く輝く液体であり、この小さな器からも、部屋全体にその芳醇さを伝えている。
俺はゴクリと喉を鳴らして、ぐい呑みの中を一気に飲み干した。
「…………あれ!?」
『気づいたか?』
「…………うん。美味いのは間違いないんだけど、前に飲んだ時ほどの衝撃が無い。…………慣れるって程は飲んでないよな? 味見の度に死ぬ気で我慢してるし」
実は俺とドゥルクが『霊酒』を飲むのは初めてではなかったりする。貴重な物だし、怒られそうだから仲間にすら内緒にしているが、広めると一気に無くなってしまいそうだしな。
ただ、俺達も壺に移す際に舐める程度にしているので、グイッと飲むのは初めてである。
『それはな、経過観察の為に初期の頃に分けておいた『霊酒』じゃよ。効能は変わっておらんようだが、飲んで解った通り、味が落ちる』
「ふぅん? …………まぁ、味が落ちるのは残念だけど、効能が変わらないなら良いんじゃないか? 正直あの美味さは危険だったし」
『確かに効能は変わらん。それに『霊酒の壺』にさえ入っておれば、味が落ちる事もないであろう。味が落ちるのは、他の容器に移し変えた物のみであろうしな。さらに時間を置いて『古酒』にしてしまえば、美味くなる可能性もあるしの』
古酒かぁ。成人した後に会った沖縄の叔父さんにちょっと飲ませて貰ったけど、確かにアレは美味かったなぁ。『霊酒』の古酒となると、どれ程の味になるのかは気になる所ではあるな。
『問題はじゃ、おそらくはこの味が落ちた『霊酒』では、『神』を呼ぶ事はできんじゃろうという事よな』
「あっ! そういう事か…………!」
なるほど、確かにドゥルクの言う通りだ。テキストにある『神』は、『霊酒の壺』に満たされた酒を目当てに降りて来るのだ。味が落ちた『霊酒』では、おそらく呼べない。
「…………と、すればだ。おそらく壺から移した時点で神は呼べなくなるだろうな。ドゥルク、移したヤツを絶対に戻すなよ?」
『分かっとる。全てがダメになる可能性は拭えんからな。まぁ『精霊王』なら呼べるじゃろうが』
「…………そういや書いてたな。『一瓶』捧げれば精霊の王ですら力を貸してくれるとか」
『うむ。そっちは瓶に移す事を示唆しとるからの、大丈夫じゃろう』
精霊王か。…………そうだな、そっちとも一度話をしとかないとマズイか。なんせ俺達は、海の陸地を空に上げたうえに海まで瘴気で殺そうとしている訳だからな。端からみれば、『方舟』の事を知らなければ世界の敵は俺達だろう。
まぁでも、今は『神々』の方が先だな。『神々』の協力を得られないと、俺のプランは絵にかいた餅でしかない。世界をガラッと変えるんだから、その均衡を保つ存在は必要だ。
『神々を満足させる酒は、『霊酒』があるから良いとしてだ。アレを使うんじゃろ? 何と言ったか、ル、ルトランテ?』
「リストランテな。☆5『料理神『ルカタルト』のリストランテ』だ」
『おお、それよ。使えるのか? かなりの大金がいるのじゃろ?』
「いや、金は使わなくてもイケるんだ。ただ、クールタイムが最長で二年になる。…………今回なら、おそらく二年は確定だな」
☆5『料理神『ルカタルト』のリストランテ』
・料理を司る神の一人である『ルカタルト』が料理を提供するリストランテに行けるチケット。完全予約制で、チケットの裏に日付と時間、利用する人数を書くと使用できる。最小人数は四人で最大人数は二百人まで。
・一度使うとチケットは失われるが、クール期間を過ぎれば再び使える様になる。
・クール期間は使用した時の人数や、食材の負担の有無、経費の負担の有無によって増減する。最小なら五日間、最大なら二年間となる。
『…………ふむ。二年は避けたいのぅ。出来る事なら、最小の五日で済ませたい所じゃ』
「それは無理じゃないか? 仮にも『神々』に降りてきて貰うんだ。それだけでも二年どころか、この☆5アイテムが二度と使えなくなる可能性がある」
『解ってはおるがのぅ。じゃがお主の事じゃ、足掻くのであろ?』
「まぁ、そりゃな」
口では否定したが、俺だってクールタイムは短い方が都合がいい。
となれば、人数は無理としても、食材と経費の負担は最大限しなくてはならないな。…………まずは情報集めだな、色々と聞かないといけないなぁ。
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