516回目 勇者のクラン
「…………やぁクラマス。子供と模擬戦をして引き分ける所を見せてしまったが、失望させてしまったかな?」
模擬戦が終わり、弓使いパーティー『イデアルアルク』のリーダーであるロロアが、俺の方に歩いて来た。このパーティーは人見知りばかりなので、ロロア以外のメンバーは少し離れた所に何をするでもなく立っている。
ロロアも人見知りではあるのだが、目を合わせなければ会話が出来るらしく、今も俺と会話をしながらも目は全然別の方向を向いている。
人と会話が出来る。ロロアはそれだけが理由でこのパーティーのリーダーをやっていると聞いた。…………何とも酷い理由である。
「いやいやまさか! アラムは運命の天使に才能を認められた『竜騎士』で、更に『ジュエルドラゴン軍団』を相手に無傷じゃないですか。失望なんてしませんよ」
「…………クラマス。我らはクラン『G・マイスター』の新入団員だ。敬語は不要だ。もっと気楽に頼む」
いまロロアが言った通り、『イデアルアルク』だけでなく、俺のフレンドとなったAAランクの五パーティーは、全員が俺のクランのメンバーとなった。
彼らは差はあるが、あまり他人と関わるタイプではないのでクランに入った事は無かったそうだが、俺のクランの内情を知って入る事にしたようだ。
まぁ、『方舟』と戦うにあたって彼らが求めていた報酬が『レナスティアに住む事』だったから、クランへの加入にもメリットしかないからな。当然と言えば当然だ。
ちなみにこの事もあって、クラン『G・マイスター』はAAAランク…………を飛び越えて、歴代の勇者しか名乗っていない『Sランク』のクランになりました。もう勇者だってのを隠す意味も無いので、俺が勇者だと冒険者ギルドが正式に認めた形だ。
…………正直、俺としては『Sランク』何て言う中二病の遺産的な称号より、『AAAランク』の方がカッコイイ気がするんだけど、俺の仲間達が喜んでいたのを見て断る事ができなかったのだ。
「…………敬語は不要か。そう言うならそうするよ。凄い戦いだった。時間切れになったのが惜しいくらいだ」
「それは我らもそう思う。せめてあの『カイザー・ジュエルドラゴン』を引き摺り下ろしたかったものだ」
ロロアが見上げる先には、いまだに天井近くにいるカイザー・ジュエルドラゴンがいる。その近くには多くのジュエルドラゴンが飛んでいる事から、反省会的なものをしているらしい。
しかし、ジュエルドラゴン軍団を率いる事が出来るとは、アラムは『竜騎士』としてかなりの力を持っているのかも知れない。でなければ『カイザー・ジュエルドラゴン』がアラムの所に生まれたりしないだろう。
これ、アリアが☆5『モンスター・チェス』で戦う時の護衛はアラムが良いんじゃないだろうか。
もちろん、子供達だけにするつもりは無いが、ジュエルドラゴン軍団を率いるのであれば、逃げるのも簡単だからな。
そんな事を考えていると、ようやくカイザー・ジュエルドラゴンも降りて来た。カイザーはアラムが自分の背中から降りると直ぐに小さくなり、アラムの腕の中へと収まった。
「見てたぞアラム、凄い戦いだった!」
「兄ちゃん!」
まずアレスが弟に駆け寄って頭を撫でた。アラムはアレスに誉められるのが好きで、アレスに撫でられて嬉しそうにしている。
…………が、それを見上げていたカイザーが嫉妬したらしく、アラムの腕をペシペシとやって、アラムに自分の頭を撫でさせていた。
何ともホッコリするが、『イデアルアルク』はこの和やかな雰囲気が苦手なのか、そそくさと部屋を出て行った。
だがその前に、ロロアがコソッと俺に☆5『ジュエルドラゴン制作キット』を使わせてくれと頼んで行った。
弓使いの『イデアルアルク』だ。騎乗できるドラゴンはさぞ相性が良いだろうな。
◇
そんな訳で、俺は一人になったタイミングで『レナスティアの街』を尋ねた。何故ならここには『イデアルアルク』の住むマンションがあるからだ。
彼らは一つのマンションに纏まって住んでいる。もちろん部屋は別々だが、住んでいるフロアは一緒である。
彼らがここに住んでいる理由は、徒歩圏内に『コンビニ』等があるからだ。この辺を歩いていると、『イデアルアルク』のメンバーにはよく遭遇するのだ。
ジャージ姿でコンビニに立ち寄り、買い物袋を腕に下げて立ち読みをしている姿は、まるで日本人の様であり、なんか懐かしい気持ちになるのだ。
それはそれとして、『イデアルアルク』のメンバーが住むマンションに向かった俺は、まず話が通じるロロアを訪ね、ロロアを通して全員に『ジュエルドラゴンの卵』を作らせた。
これでしばらくすれば、ジュエルドラゴンに騎乗する弓使いパーティーが爆誕するだろう。それはかなり強そうである。
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