515回目 ジュエルドラゴン軍団
アリアとの模擬戦を終えた後、俺達はアリアから登録したモンスターの話を聞きながら反省会をしていた。
☆5『モンスター・チェス』は、登録モンスターを変える事も出来るのだが、その場合は全モンスターがリセットされるので、イチから集め直しになってしまうのがキツイ所だ。だからアリアは、ドゥルクとも相談の元で妥協無しでモンスター集めを行ったそうだ。
あの途中でその存在に引っ掛けられた『エルダーコボルト』も、戦ってみると『上位種にしてもちょっと強くない?』ってくらいに、コボルトとは思えない程の強さを持っていたが、あれはコボルトの最上位種である上にレア個体の『エルダーコボルト』であるそうだ。
「あれ本当に強かったな。マスから出られないのを利用して見えない壁を足場にする知能もあったし、毒まで使われたのは予想外だった」
そう言った俺に、ティアナを始め仲間も同意した。
「そうね、シエラがいなかったら解毒出来なかったものね。アレってやっぱりポーンには登録できなかったの?」
「はい。ただのエルダーコボルトならポーンにも登録出来たんですけど、レア個体は無理でした。本当はポーンにしたかったんですけどね」
「あの強さでポーンに出来てたら心強かったな。二体でも十分に厄介だったけどな」
と、そんな事を話していると、突然バカでかい衝撃音が響いた。どうやら、隣にある訓練所からの音らしい。
「なんだ今の? と言うか、ここって防音されてなかったか?」
『はい。防音設計にもなっています。ですが、隣で行われている模擬戦にて、それを越える衝撃が起きたので、響いてしまったようです』
「どんな模擬戦だよ。戦っているのは誰だ?」
『アラム率いるジュエルドラゴン軍団と、弓使いのAAパーティー『イデアルアルク』です』
…………ジュエルドラゴン…………軍団? 俺達は、とにかく隣の訓練所を覗いてみる事にした。
『ギャオオォォーーーーン!!』
『キュルルルルッ!!』
『ブロロロロッ!!』
…………そこで繰り広げられていたのは、模擬戦用の刃を潰した矢で戦う弓使いパーティー『イデアルアルク』と、空を飛び、地面を揺らしながら暴れ回るジュエルドラゴン達との戦闘風景だった。
そしてかなり高い所には、一際大きくて威厳のある『カイザー・ジュエルドラゴン』のカイザーの姿があった。
ここからでは見えないが、その背中にはカイザーの主であるアラムが乗っている事だろう。
いやいや、しかしそれよりもだ。この模擬戦の規模が凄い。アラムの『カイザー・ジュエルドラゴン』を頂点とした色とりどりのジュエルドラゴン達は、その特性を生かして炎に氷に雷と、様々なブレスを放っており、『イデアルアルク』のメンバーはそれを走って避けながら正確に矢を放っていく。
どうやらジュエルドラゴン達は矢が三回当たったら退場のルールらしく、今も一体のジュエルドラゴンがションボリした様子で舞台から降りて小さくなっていた。
「あっ! ガモン、あれ見て! あそこにいるのがアタシのジュエルドラゴンの『バルトレ』だよ!」
「向こうにアタシのジュエルドラゴン『バルイオ』もいる!」
トレマとイオスの双子が、俺の両腕を取りながら飛び回っているジュエルドラゴンを指差す。
トレマの『バルトレ』は青と白の流線形のジュエルドラゴンで、イオスの『バルイオ』は赤と白の流線形のジュエルドラゴンだった。二人が双子だからなのか、ジュエルドラゴンも同じ個体の色違いみたいな感じだ。
いや、二人もジュエルドラゴンを作ったのは知っていたが、名前がちょっとアレだな。いや良いけどさ。バルタと自分達の名前を掛け合わせて付けたのかよ。どんだけバルタが好きなんだコイツらは。
ちなみに、ジュエルドラゴン達の中にバルタのジュエルドラゴンも見つけたが、確か名前は『ハンゾウ』だった筈だ。
『クアァッ!!』
「ん? どうしたグラック?」
ジュエルドラゴン軍団と『イデアルアルク』との模擬戦を見ていると、俺のジュエルドラゴンである『グラック』が勝手に出て来て騒ぎ始めた。
ふと気がつけばグラックだけでなく、ティアナやアレス達のジュエルドラゴンも出て来ていた。
『クァーーッ!!』
「どうしたんだ本当に。…………もしかして、自分も混ざりたいのか?」
『クアッ!!』
どうやら俺のグラック達も、目の前で繰り広げられている戦いに混ざりたくなった様だ。
「…………うーーん。これはしょうがないか? 最近、戦わせたりしてなかったもんな? …………よし、解った! 行って来い!! ただし、邪魔にはならないようにな?」
『クアッ!!』
俺が許可を与えた事で、俺達のジュエルドラゴンが舞台の上へと上がり、模擬戦に参加しに行った。
そしてジュエルドラゴン軍団対『イデアルアルク』の模擬戦は、決着がつかず時間切れという事で引き分けに終わった。
何ともスッキリしない終わり方だったが、グラック達は久々に暴れられてスッキリしたらしく、上機嫌で帰って来たのだった。
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