513回目 模擬戦準備
「…………言われた通りに装備は整えたけどさ、本当にいいのか? こんなに☆5装備使っちゃって」
「想定が『幻獣』じゃからな、やり過ぎくらいでちょうど良い」
☆5『モンスター・チェス』を使うアリアと模擬戦をする事になった俺達は、ドゥルクからの頼まれ☆5装備に身を包んだ。
いや、頼まれたからやったけど、いくらなんでもこれは酷いと思う。ただでさえ5対1なのに。
だが、アリアは俺達の装備を見ても動じず、粛々と準備をしている。
「アリアの心が強いな。何を教えたんだ、ドゥルク」
「儂が教えた事など大した事はない。戦いなど思い通りにいく事はほぼ無い、と当たり前の事を教えただけじゃよ。アリアは頭が良いからの、それだけで色々と察したのじゃろう」
「…………心臓が強いな、いくら模擬戦とは言え、ちょっと怖いぞ?」
「ム? あぁそう言う事か。いやなに、アリアが落ち着いておる理由なら、すぐに解るじゃろう」
「ん? …………なんか引っ掛かるが、まぁいいか。俺達は本気でやっていいんだな?」
「もちろんじゃ。手加減などしてくれるなよ? あの子に上には上がいる事を教えるのも、お前さんらの役目じゃからな」
「5対1でそれも無いとは思うが、解ったよ」
俺としても☆5『モンスター・チェス』には興味があったし、ドゥルクのこの自信の根拠も知りたくなった。
だが、模擬戦に入る前にひとつの問題が発覚する。シエラとカーネリアの二人が、チェスのルールも知らなかったのだ。
「ルールもって、二人ともやった事がないのか?」
「申し訳ありません、チェス自体は見たことがあるのですが、触った事はないです」
「しょうがないわよシエラ。興味が無かったら、触らないのが普通でしょ?」
「いやまぁ、二人が興味を持てなかったのは仕方ないとしてだ。…………困ったな」
☆5『モンスター・チェス』は、その名の通りチェスの要素が強いらしい。なのでチェスのルール、特に駒の動き方については知らないと、結構大変な事になるのは目に見えている。
『ルールが解れば良いのですよね? ならば私が『フレンド・チャット』に駒の動きやルールについての画像を上げましょう』
「ああ、なるほど。頼むよレティア」
レティアのナイスアイデアで、『フレンド・チャット』にあるパーティーメンバー用のグループチャットにチェスのルールが画像付きで表示された。
これならルールが解らなくなっても、チャットを開けば確認できる。本当にチャット機能は便利である。
「ガモンよ、準備はよいか?」
「大丈夫だドゥルク。いつでもいける」
「ならば舞台に上がるがよい。お主達が舞台に上がった時点で、始まりとする」
俺達はお互いの顔を見て頷き合い、全員で模擬戦を行う舞台の上に登った。そしてドゥルクの言葉通り、その瞬間が模擬戦の始まりとなったのである。
「『チェス盤・展開』!!」
そのアリアの声と共に、俺達のいる舞台の上に光の戦が走り、それが白と黒が交互に別れた六十四個のマス目に区切られた。
だだっ広い模擬戦の舞台を区切ったため、一つのマス目はかなり広く、戦闘を行うにも問題が無さそうに見えた。
ただ、気になる事が一つ。アリアが舞台に乗ってないのだ。なのに☆5『モンスター・チェス』が発動している。
そして、俺達の対面には、黒いチェスの駒が一通り並んでいた。
「ガモン殿!」
「アレス? それに皆も、いつの間に離れたんだ? いや、チェス盤だからか」
俺達は纏まって舞台の上に上がった筈だったのだが、いつの間にか一人一マスに別れていた。これがチェス盤だか、強引に分けられたのかと、何となくは理解できた。
「ガモン殿、左手の甲を見て下さい」
「…………何だこれ? チェスの駒か?」
俺の左手の甲には、いつの間にか白いチェスの駒の絵が描かれていた。
俺の左手の甲には『キング』。アレスは『ナイト』、ティアナは『クイーン』、シエラは『ビショップ』、カーネリアは『ルーク』だった。
そして、一つのマスに入れるのは一人だけであり、仲間と合流する事は出来なくなっていた。
「あぁ、解ったぞ。やっぱりこれ、駒の動きしか出来ないやつだ。何となく予想はしていたけど、やっぱりそうか」
「チェスのルールに従っているのね。なら、向こうが動き出さないのは、『先行は白』って言うチェスのルールに則っている訳ね」
俺はティアナの言葉に同意した。そしてもう一つ、このチェスに挑む人数には制限がある事もこれで解る。手の甲に出てきたチェスの駒は、その人物に対応する駒だ。
つまりこれに挑む者は、最大で十六人という制限がつくのだ。そして厄介なのは、下限はおそらく一人からだ。
これは中々にエグいアイテムだ。しかもこの☆5『モンスター・チェス』の所有者は『プレイヤー』だ。考えてみれば当たり前なのに、俺は勝手に相手側のキングはアリアになるのだと思ってた。だが違う、アリアはあくまでプレイヤーであり、チェス盤の外にいるのだ。
チェス盤の中にいる俺達は、チェス盤の外にいるアリアを攻撃出来ない。プレイヤーであるアリアを倒す為には、元から外にいる仲間に頼むか、このゲームを制して外に出るしかないのだ。
どおりで5対1の戦いになるのに、アリアが平然としていた訳だ。
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