510回目 五組の冒険者パーティー
「他国のギルドにも掛け合って、彼らに話を通すのは大変だったのよ? ちゃんとこうして集めたのだから、アタシの報酬にも色を付けて頂戴ね?」
「解ってます。あとでゲンゴウに話をつけておきますよ」
この五組十九人の冒険者に加えて、エルドルデも協力してくれるそうだ。人数は合わせて二十人と少ないが、その実力は折り紙付きだ。そんな彼らがガチャ書籍を身に付けてガチャ食材のバフをかければ、魔王どころか幻獣でも相手にできるかも知れない。
ちなみにエルドルデの言う報酬とは、ガチャから出て来る美容グッズや化粧品、それと各種サプリメントの事である。今回の話、『信用できて実力のある冒険者を集める依頼』だって、☆4『ネイルアートセット』で引き受けて貰っている。
実際にエルドルデはネイルアートがかなりお気に入りであるらしく、隙あれば自分の綺麗に装飾された爪を見てウットリしている。まぁ、満足なら何よりだ。
「初めまして! 俺は『エレメントアッシュ』のリーダーをやっている『サーダン』って言います! こっちは仲間の『ノムル』『シルード』『ディウン』『イアド』です!」
「どうもご丁寧に。俺はガモンと言います。よろしくお願いします」
実力のある冒険者パーティーで、結構強者の雰囲気がある三十代半ばくらいの男達なのだが、リーダーは随分と気さくなタイプのようだ。仲間達もスポーツマン的な爽やかさがあるし、全体的に動けるタイプのメンバーが集まっているのが、『エレメントアッシュ』と言うパーティーみたいだ。
「モグモ! 冒険者をやってる『クリフグリーフ』なんだな! よろしくなんだな!」
「…………ガモンです」
モグラ獣人ってのは初めて見たが、何と言うか、特徴的な人達だった。
体型はずんぐりとして堅そうな体毛に覆われており、鼻が長く先端に鼻の穴がある。そしてモグラだからやはり光に弱いのか、全員が水中メガネのようなサングラスをしているのも特徴だ。
服装もヘルメットに作業着姿で、ちょっと見分けるのが大変そうだ。よく見ると少し違いがあるのだが。
…………それはそうと、ヘルメットと作業着に数字がふられているのは何故なのか? いや待て、そう言えば名前を聞いてないな。
「あの、お名前は…………?」
「モグ! ボクらの事は数字で呼ぶといいんだな! ボクらの名前は発音が難しいし、仲間以外だと見分けがつかないとよく言われるから、数字をつけたんだな!」
…………それでいいの? ま、まぁ、本人達がそれでいいならそうするけど。
「…………どうも、『イデアルアルク』のロロア…………です」
「ビンソ…………です」
「…………クルソン」
「…………フットと、も、申します」
「ガモンです」
全員が弓使いのパーティー『イデアルアルク』は、全員が人見知りな感じ。片眼を布で隠しているし、もう片方の眼も髪で隠れている上に俺と眼を合わせようとしないから、顔もよくわからない。それに、近付いて来て名前を言ったらまた離れてしまった。俺の名前は聞こえているのだろうか?
いやまぁ、エルドルデが連れて来たんだから、大丈夫だろうと思うけど。エルドルデは事前情報とかしっかり伝えてそうだし。
「俺達は『ヴァーミリオン』! 紅く燃える真紅の『ヴァーミリオン』!! そして俺様は『レッドアイ=ヴァーミリオン』だ!! 貴様がガモンだな! 俺様達に世界の英雄となる場を与えてくれた事、感謝にたえない!! 大船に乗ったつもりで任せるがいいぞ!!」
そう言って俺の手を両手で掴んで大きく振る、真っ赤な髪と鎧の若いイケメン。また暑苦しいのが来たもんだ。眼の下に紅く化粧もして、全身で赤を表現しているな。
「俺様の仲間も強いぞ! 元々我がヴァーミリオン侯爵家で騎士をしていた者達なのだが、大切な仲間だ! 『メラゾー』! 『ファガ』! 『アギイン』! 頼もしい奴等だ!!」
「お、おう」
凄い圧力だ、そして凄い熱さだ。コイツは多分、生まれた時からこうなんだろうな。そんな気がする。
「そうだ! 大切な事が一つあった! 俺様達の装備は赤で統一してくれないか? すまないが俺様達の力を最大限に発揮するにはやはり赤が最適なのだ! その為なら、多少の性能ダウンは容認する! 戦闘においての心の持ちようは、大切だからな!!」
「わ、わかった。了解だ」
命を掛けて『赤』にこだわっているのか。まぁそう言うのも大切ではあるから、そこは言う通りにしてやろう。
そして最後に、兄妹で二人組パーティーの『オッドアイ』が残ったが、こっちの兄貴は実に普通の人だった。
「初めまして、『オッドアイ』の『ノーマン』です。魔法戦士をしています。こっちは妹でパーティーメンバーの『チェイン』です。よろしくお願いします」
「『チェイン』だよ! よろしくね!」
「コラッ! ちゃんと敬語で挨拶をしなさい! あの、妹が失礼しました」
「あ、いえ。大丈夫ですよ。ガモンです。こちらこそよろしくお願いします」
なんだか、濃いのに揉まれたからノーマンの普通っぷりに癒される。ちなみに『オッドアイ』の由来は、チェインの眼が赤と黄色になっているからだ。
なんでもチェインは生まれつき眼に火と雷の精霊を宿しているらしく、その二つの属性を使った戦いが得意なのだと言う。
それと、目立たないがノーマンの眼も黒と茶色で、闇と土の精霊が宿っているとか。…………特徴が普通じゃなかったな、ノーマンも。まぁ、AAランクの冒険者パーティーが、普通のはずもないか。
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