502回目 運命神の天敵
『やぁ、お客さん。よく来てくれたね』
「…………まさか呼び出される事があるとは思わなかったよ」
『まあ、たまには良いじゃないか』
その日、何故だか忙しい程にあった仕事が途切れ、ふと周囲を見れば一人きりになった不自然なタイミングで、俺の目の前に『ガチャ・マイスター』からのメッセージが流れた。
その内容は、『マイスター・バー』のマスターからの呼び出しだった。自分のスキルに呼び出されると言う稀有な体験だったが、俺はそれを受ける事にした。何となく、俺を呼び出したのは誰なのか予感があったからだ。
「それで、貴方は何の神様なんですか?」
『ああ、やっぱり解るのか。勘が鋭い。流石だね、僕の天敵くんは』
「…………天敵? 神様と敵対したつもりは無いんですけど」
『敵対はしてないけどね。『運命神』の僕が敷いたレールを、とことん無視してくれたんだよ、君は。せっかく僕が! 君を導く為に『ストーリークエスト』とか一生懸命作っているのに! 君はそれを無視するどころか、お構い無しにどんどん先に進んじゃってさ! ガチャの解放手順とかも、じっくり進めるように考えて作ったのにさ!』
「…………あーー、それは…………何かすいません」
思い当たる節があるなぁーー。確かに『ストーリークエスト』を見て、『え? 今?』とか思う事はあった。…………でも、俺は悪くないと思うなぁーー。
『アレスとかの時だって、せっかく僕の天使を使ってまで☆4『導きの龍水晶』って僕が作ったアイテムを渡したのに! 君は全然使ってないよね!? あれはちゃんと使えばかなり便利ナンだよ! あれを使えば『ヴァティー』とか『ハクラテン』とかにも導いてくれたんだよ!!』
「……………………会ってますが?」
『何で使わないで会えるんだよ!!』
そんな事を言われましても。
って言うか、あの☆4『導きの龍水晶』って、縁がある者まで導くって言うだけのアイテムで、それが敵に繋がっている可能性もありそうな使い所が難しいアイテムだった筈だ。
いや使わないよね。指し示す場所も多い上に敵か味方かも解らないなんて、迷いしか生まないもの。あれはアイテムが良くないよ。
『……………………なるほど。まぁそう言われると確かに、あのアイテムはイマイチだったかも知れない』
「うわ、心読まれた」
『でも言い訳させて貰うとね、敵との遭遇ってのも悪い事ばかりじゃないんだよ? あれの敵カテゴリには、『封印された魔王』も、『郷愁の禍津像』も含まれていたんだから。君にとっては必要な事だったんだよ。なのに君は変な事に変な巻き込まれ方をして魔王との戦いに挑むわ、『郷愁の禍津像』をアッサリ破壊して『禍津勾玉』を手に入れるわ。…………まぁ、あの『郷愁の禍津像』の破壊の仕方には笑わせて貰ったけども。『ロードローラー』で押し潰すとか、面白過ぎるでしょ、君』
あーー、神に見られてるだろうとは思ってたけど、かなりガッツリ見られてたんだな。…………ちょっと恥ずかしいんだけど。
「そんな頻繁に見られてたんですか? 俺って」
『そりゃ君を選んだのは、一応は僕って事になってるしね。完全に運任せだったけど。だから、大抵は見てたよね』
「俺を選らんだのは貴方だったんですか!? 運命神? …………あの、お名前を聞いても?」
『『ダイス』だよ』
「…………本当ですか?」
『本当だよ、この場ではね。僕達みたいな神々の名前は世界や国によって違った物を付けられるからね。この『ダイス』は、君が考えた名前だろう?』
「ええ、まあ」
何となく、本当に何となく『神はサイコロを振らない』ってのを思い出しただけなんだが、それが名前になってしまった。
『ともかくだ。ここまで僕の想定を越えられると、もうレールを敷くのもバカらしくなってきてね。君にストーリークエストを課すのは、もうやめる事にするよ。ここに至るまで、君のストーリークエストは君自身の物だった。僕のストーリークエストを先回りする程にね』
そんな事ない…………とも言えないかな。ここまでの事を思い返すと、何となく自覚もあるし。
『でも僕だって負けてはいないんだよ? 僕がストーリークエストで☆4『ガチャアイテム製作所』を与える前に、☆5『技巧神の大工房』を出されちゃったから、『ガチャアイテム製作所』の内容をちょっと弄ったりしてるし。アレね、☆4のガチャアイテムを一度だけ性能アップできる様にしてあるんだよ。要はアイテムの改造だね。これは便利だよ?』
マジで!? そ、それは凄いな。後で試してみないといけないな。
『ストーリークエストはやめるけど、力は可能な限り貸してあげるよ。具体的には、このマイスター・バーに顔を出すようにするから、聞きたい事があったら訪ねておいで。…………一応言っておくけど、料金は今まで通りに貰うからね』
…………タダじゃないのか。いや、払いますけどね。
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