501回目 忙しい
奈落、そしてヒトガミとの戦いを終えて『◇天空城『レナスティア』』へと戻って来た俺は、それから三ヶ月もの間、とても忙しかった。
たった一日やそこらで『郷愁の禍津像』を集め捲ったのは凄いとは思っていたが、あれは禍津像があるほぼ全ての国の協力を得た人海戦術であり、神々からの『天啓』や世界の異変を感じ取った事を合わせても、異常な程に迅速に事が運んだ結果だった。
もちろん、何も知らない国がすんなりと禍津像を集められる筈もなく、最大限の協力とは、平たく言えば邪魔をしない事である。各国はダンジョンに行くために通る街などに通達を出し、車での走行をしやすくしてくれたりと裏方を頑張ってくれたのだ。
大量の☆4『禍津像探知機』をエルフやドワーフ達が作り、東の大陸では普通に使えた『フレンド・チャット』を使って連絡がつく限り全ての者達に協力を要請、飛空艇と車やバイクをフルに使って移動し、ダンジョンでは狙いを禍津像ひとつに絞って高速で回収、もしくはその場で破壊していったのだと言う。
と言うか、俺も各国にお礼を言いに行ったりしたのだが、婚約式で作った人脈が大活躍したようだ。予めそういった繋がりがあったからこそ、俺の仲間達が飛空艇で乗り付けた時に即座に対応してくれたらしい。まぁ、何事だ!? ってなるもんな。
奈落との戦いで東の大陸にバラ撒かれた『郷愁の禍津像』は二十一体。その全てを一日で集めた。もっと言えば、それに伴って発見した禍津像も破壊され、貴族や商人やらが持っていた物も、俺達への協力を表明した国々によって献上され、破壊済みだ。
それはつまり、とうとうこの世界から『魔王』が一切居なくなったと言う事でもある。
国にとって大変だったのは、今回の事で実は魔王は倒されておらず、多くの魔王が封印状態だった事が一般人にまで知られてしまった事だ。一部では暴動も起きたらしいが、幸い魔王はもう地上にはいないので、一旦は収まった。
…………世界の在り方を変えると知られれば、また暴動が起きるかも…………いや、起きるだろうな。だがそれも重要な事だ。『方舟』との戦いまではまだ時間もある。戦う準備を進めながら、そちらにも対処していこう。
◇
「…………いやーー、しかし。やることが多いなぁ。各国の重鎮を集めての会議もやらないといけないし、『方舟』との戦いに向けての修業も必要だし、ガチャ装備とガチャアイテムも足りないし。あぁ、西の大陸で生き残った人々の支援も問題になってたな。西の大陸は、瘴気のせいでモンスターも変異したとか言ってたな?」
『はい。現在はアレスとフラウス騎士団が調査と殲滅にあたっています。アレスからの報告では大きな問題に成る程ではない、との事です』
天空城にて、俺は書類の整理をしながら『レティア』と状況の確認をしていた。
本当ならば、書類の整理は『レナスティア』の代表者達にやって貰いたいのだが、内容の大半が俺のスキルと世界の在り方を変える事についてだったので、俺がやるしかなかった。
状況確認もせめてドゥルクやアルジャーノンを交えたかったのだが、二人とも忙しくてこの場に居ないのだ。
具体的には、まず『レナスティア』の『軍務の浮島』で各国から集められた精鋭を訓練する事になった。
まずその第一段階として、その精鋭達を俺のフレンドにしても問題がないかを精査する事になった。要は面接である。
だったらむしろ俺が行くべきなのだが、ここは『レナスティア』の特異性を見せつけて牽制するとの事で、次元の違う圧迫面接を行うそうだ。
なんのこっちゃ、と最初は思ったが、面接官が『ドゥルク』と『アルジャーノン』、『女神ヴァティー』と『亜神ハクラテン』に『レティア』とくれば、次元の違うと言う言葉にも納得がいった。だって本物の『神』が二柱も面接官になっているのだ。圧迫面接ここに極まれりである。
この圧迫面接でドゥルク達のお眼鏡にかなった者は、『軍務の浮島』での訓練に参加出来る訳だ。
なので面接会場は『飛空艇』なのだが、合格が出たなら俺も出向いて面接し、フレンドにしなければいけないのだ。マジで忙しい。
「シエラは『聖エタルシス教会』の立て直しに行ってるし、カーネリアはアリアを連れてダンジョンだったか?」
『はい。アリアに持たせた☆5『モンスター・チェス』に登録するモンスターを探しに行きました』
☆5『モンスター・チェス』は、チェスの駒にそれぞれモンスターを登録し、戦闘時にはそのモンスターを召喚出来ると言う、とんでもないアイテムだ。
そして、アレスの妹であるアリアは『賢者』の素質を持っている。その才能も徐々に開花し始めており、それに気付いたドゥルクがアリアも戦力にする為に、自らの子孫であるカーネリアに命じてダンジョンへと連れて行かせたのだ。
アリアの素質は『モンスター・チェス』と相性が良いからな。良いモンスターを登録してきて貰いたいものである。
ちなみに、俺のパーティーメンバーでは残る一人のティアナは、天空城で俺の手が回らない仕事を手伝ってくれているのだ。このティアナのサポートは、本当に助かっている。
もう少し頑張れば一段落するし、そうしたらティアナと少しゆっくりお茶でもしよう。そのくらいのご褒美がないと、やってられないもの。
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