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499回目 向き合う人々

『あぁ…………。ああぁぁあぁぁ…………!!??』



 ☆5『◇創造神の短剣』が突き刺さった『骨』に、ビシリッ! と亀裂が入ると、ヒトガミ自身にも大きな亀裂が入った。


 やはり、この『骨』がヒトガミの核だったようだ。人間もまた動物には違いないから『郷愁の禍津像』がある事に違和感は無かったんだが、この『骨』は意味が解らない。…………考えても解りそうにないけどな。


 ヒトガミの『骨』に刺した☆5『◇創造神の短剣』が、自らに纏う光を強めると、短剣が刺さった場所が砂の様に崩れて、徐々に『◇創造神の短剣』へと渦を巻きながら吸収されていく。



『あぁぁ…………。消える、我が消えてしまう…………! い、嫌だ! まだ、まだ何もしてない!! 何も出来てない!! あぁっ! 嫌だ! 嫌だぁぁ…………!!』



 ボロボロと崩れ、☆5『◇創造神の短剣』に吸収されながらヒトガミが口にするのは『嘆き』そして『哀哭』だった。



『消えたくない! やっと、やっと身体を得たのにもう消えるなんて嫌だ!! 嫌だ! 嫌だぁ!!』



 強い嘆きの中で、ヒトガミが崩れていく。恨みつらみを口にするのではなく、ただ消える身を嘆き哀しんで消えていく。


 俺達はこのヒトガミの事を何も知らない。おそらくはコイツも『方舟』の被害者ではあるのだろうが、俺達と敵対し殺し合いをしたのは事実だ。倒さなければ、俺達が殺されていた。



『い…………や…………だ…………ぁ…………』



 最後の一欠片が吸収されるまで、ヒトガミは哀哭を叫び続けた。…………何とも後味の悪い。やった! 倒した! と、諸手を挙げる気分には到底なれなかった。



「…………何だったんだろうな、コイツは。いや、奈落にしてもだ。こんなにしてまで、何で世界を滅ぼさないといけないのか、いったい何を望んでいたのか、それを話し合う機会くらいは欲しかったな」


「限界だったんでしょうぜ、色々と。何かと向き合う勇気ってのは、時間と共に薄れるもんでさぁ。恐ろしい事にね」


「経験談かバルタ?」


「ええ。…………あっしも妹達を助ける為に、無茶を重ねましたからね。数十年のあっしでもこんなんですからね。それを何百年何千年と抱えたなら、向き合う勇気なんてもんは、とっくに潰れてますぜ」



 …………バルタが言うと重みが違う。そうか、何百年何千年と抱えた物なんて、俺に想像がつく筈もない。例え俺が正論を並べた所で、長い時が作った壁には小さな穴も開けられないだろう。


 なるべくしてなった事か。そう考えても、やりきれない気持ちってのはあるけどな。


 と、そんな事を考えていると、俺の鎧の隙間から『レティア』のキューブが出て来た。



『マスター、お迎えを呼びますか?』


「ん? …………いや、もうモンスターも居ない荒野だけど、拠点を作る。その後で『拠点ポータル』で帰る事にする」


『かしこまりました。それと、ドゥルクからの伝言を伝えます。『禍津像の探索を手伝ってくれた各国から、代表者をフレンドにして欲しいと言う通達があった。一国につき三人までと絞ったが、百人以上と面談する事を覚悟して戻って来い』との事です』


「はぁっ!? なんでいきなりそうなるんだ? って言うか、禍津像の探索を手伝ってくれた? よく手伝いなんか出たな?」



 偏見かも知れないが、国なんて腰が重いイメージしかない。そりゃ様々な国で禍津像を探さないといけなかったのは想像もつくが、探索の許可は出ても手伝いなんて普通ありえないだろ。



『各国が積極的に動いた理由であれば、説明できます。おそらくは此度の戦いの様子をテレビで放映して見せたのが、良かったのでしょう』


「…………え? 全部テレビで見せたの?」


『はい。録画も駆使しまして、可能な限りは見せました。特に反響があったのは、この世界の在り方を変えると、マスターが説明した時ですね。どの国も、即座に重鎮を集め、会議を開いておりました』


「……………………マジかよ…………」



 いやまぁ、そりゃいずれは色んな国に説明をして回らなきゃとかは考えていたけど。そうかぁテレビでの放映かぁ。それは考えてなかったなぁ…………。


 ちなみに、録画も駆使して見せて回ったのは、ドゥルクとアルジャーノンの指示だそうな。大魔王との戦いの映像と合わせて見せれば、危機感も煽れるとかなんとか。


 まぁ確かに危機感は煽れただろう。同時に俺のクランから禍津像の探索に乗り出した者達についていった『レティア』のキューブが、西の大陸の惨状と前回の幻獣戦についての情報、そして『方舟』についての情報も開示した事で、各国の危機感はいよいよ高まったらしい。


 自分達にとっても身近な『西の大陸』が壊滅した事が、人々を『世界の滅亡』と言う、決して遠く無い未来を自覚させたのだ。


 奈落やヒトガミとの突然の戦いは、皮肉にも世界の人々を『世界の滅亡』に向き合わせたのか。


 …………向き合う機会か。これは、無駄には出来ないな。

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