491回目 泣き言
完全に壊れてしまった事で砕け散って消えていく☆5『破壊神の拳』。…………さすがに自壊する程になるとは思って無かった。知ってたら使ってない。
しかもその影響は、『魔獣化』した事で腕にまで広がった☆5『魔獣の黒鎧』にまで及んでおり、こちらは完全には壊れていないので消えはしないが、しばらくはマトモに使えないだろう。
と、その時。カツンと足下の石が転がって音を立てた。どうやら時が動き出したみたいだな。
『オォッ!? グゴォオオォォ…………!?』
止まった時間の中で喰らった攻撃に、崩壊し始める『黒炎の大魔王』。
だが、これで終りじゃない事は解る。あの中にいる筈の、奈落にまで攻撃が達した気がしなかったからだ。
ここから始まるのは更なる変化、そしてこれが最後の変化になるだろう。そんな予感がする。
俺は壊れた『魔獣の黒鎧』をスキル倉庫に収め、新たに☆5『龍騎士の神装』と☆5『龍神の槍』、それに☆5『神罰の盾』を装備した。そして更に、サブウェポンには☆5『◇創造神の短剣』を持った。
そして、アレス達も飛空艇『ヒポグリフ』から降り、『大蛇八首』だけを乗せた『ヒポグリフ』は、☆5『◇天空城『レナスティア』』へと帰って行った。これ以上居ても、『大蛇八首』は既に戦えないし、治療のためにも離脱させたのだ。
「さて、ようやく本命の戦いだな。奈落!!」
『…………魔王モ、特別ナ眷族モスベテ倒ストハ思ッテモイナカッタ。ソンナコトガ、カノウダトハナ』
砕け散った『黒炎の大魔王』だが、その大部分は消滅したものの破片が残った。
俺達の前方に浮かぶ『大魔王・ナラク』は、漆黒の身体にひび割れの様に青い稲妻を這わせ、その毛髪は暗い炎が燃えている。そしてその周囲を、黒炎の破片が渦巻いているのだ。
もはや人間とは呼べないような姿だが、言葉までもおかしくなっているな。とうとう人間を止めたのか?
『ダガ、世界ノ滅ビハ成ルダロウ。世界ハ大半ノ人ト土地ヲ失ッタ。コレデ貴様サエ居ナクナレバ、アトハ『方舟』トヤラガヤッテクレル』
…………確かに、この西の大陸にいた人々はほとんどが奈落に殺されており、この土地も『大魔王』との戦いで広範囲が瘴気に汚染されてしまっている。
山や森も削られたこの大陸に『方舟』を落としたとして、おそらくは高い確率で魔王や幻獣に逃げられてしまうだろう。
海にまで逃げられるのが最悪であり、よしんば勝ったとして世界の土地の半分、そして海の一部が瘴気に汚染されたなら、世界が元通りになるのは、もはや不可能に近くなるだろう。
濃い瘴気は、凶悪なモンスターも生み出すのだから、『方舟』を破壊した先の未来でも、人類が東の大陸で数を増やして西の大陸に進出する頃には、瘴気に汚染された土地は凶悪なモンスターの楽園となっている筈だ。
そうなれば、世界は瘴気に徐々に蝕まれていく。
もし、そういう未来しか用意出来ないのであれば、それは俺達の負けである。
だが、俺にはこの状況からでもそれをひっくり返す腹案がある!
「この世界は滅びない! 滅びさせない!! 何を置いたとしても! この世界が在り続ける事が重要なんだ!!」
『キサマ…………! ヤハリアレヲヤル気ダナ!! ヤハリ貴様ハ生カシテオケン!! ココデ死ネ!!』
闇を集めて形成した剣を振り上げて襲って来る『大魔王・ナラク』を、俺は『龍騎士の神装』のスキルで光の龍を纏って飛び、『龍神の槍』で迎え撃った!!
「うおおおおっ!!」
『ヌヌヌヌヌッ!!』
俺と奈落の鍔迫り合いは拮抗し、逃げられ無いエネルギーはやがて弾けるように互いに向き、俺達は再び距離を取った。
『ククククク、強力ナ装備ダナ。ダガソノ程度デハ、俺ヲ倒ス事ナド出来ナイゾ!!』
知ってるよ! そう言いたくなる言葉を飲み込んで、俺は奈落が振り下ろす攻撃に耐える。
と、そこに巨大な火の球と雷が飛んで来て奈落をブッ飛ばした!
そして飛んだ先ではバルタが待ち構えており、『大魔王・ナラク』の身体を斬りつけて行った。
『フハハハハッ!! 強力ナ『スキル』、強力ナ装備!! ダガ届ナイ! コノ俺ニモ! コノ世界ニモ!! 神々ノ与エタ『スキル』トテ万能デハナイト知レ!!』
「だから知ってるんだよそんな事は!! その程度の事で泣き言抜かしてたら、世界なんか救えねぇだろうが!! 『ドラゴン・ロア』!!」
俺の『龍騎士の神装』のスキルで纏った光の龍を『龍神の槍』に移し、二つの龍装備の力を掛け合わせた『龍の咆哮』を放つ!!
『ナニィッ!?』
光の奔流に飲まれた『大魔王・ナラク』を、さらに光の龍の牙が襲う! そして光の龍は大魔王の肩に喰らいついたまま身体を巻き付かせ、光の柱となって更に『大魔王・ナラク』を焼いた!!
「こんな事態に手を出すことも出来てない神々が、何で万能だなんて思ってんだ! 泣き言の前に、有る物で何とかするんだよ!!」
☆5のガチャ装備やガチャアイテムを並べて、どう組み合わせれば世界を救えるか、足りない物は何なのか。俺はここ最近、そんな事を考え過ぎてかなり頻繁に知恵熱でてるんだ。
神々に渡されたスキル一つで世界が救えるなら、そもそもこんな苦労してねぇだろうが!! 今さらそんな泣き言なんか、言っても聞いてもいられないわ!!
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