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487回目 第三ラウンド

 巨大な頭を前に出してドスドスと地鳴りと共に迫るティラノは、正直怖かった。さすがは恐竜と言うだけはある迫力だ。


 しかもあれは、体内にいる奈落がデザインしたティラノサウルスなのだろう。身体は赤黒い肌に魔王を纏っており、黒地に金の瞳を持つ眼や、真っ赤な鋭い牙がズラリと並んでいる大きな口と、その外見は恐怖の象徴の様になっている。



『グロロロロッ!!』


「うおおおおっ!?」



 俺達に近づきながらガバァッと大きく開かれる口が、脇を抜ける俺の側で閉じられる。それは即死を予感させる噛みつき攻撃だった。


 更に、俺が噛みつきを躱すと、大魔王はその巨体をグルリと回転させ、太い尻尾で振り払ってきた!


 その巨体にして予想を越える速さで振り払われる太い尻尾は、跳んで避けるには速すぎて、俺は地面を転がって避けるはめになった。



『グロロォーーッ!』


「マジか…………!?」



 地面を転がった俺に向けて大魔王が大口を開ける。その喉の奥からは闇の塊が大きく膨れ上がりながら出て来るのが見えた。


 大魔王になってから、中にいる奈落が大人しいと思っていた。闇の魔法も中々使って来ない事から、中心にいる奈落を囲う『特別な眷族』の身体や『魔王』の鎧あたりが、奈落のスキルを使いづらくしているのだと予想していたが。


 なるほど、口を大きく開けるティラノなら、体内にいながらスキルを行使できる訳だ。



「…………なんて考え込んでる場合じゃねぇな!!」



 俺は足の裏を地面につけて、『ヘルメスの靴』に魔力を込め『飛翔』のスキルを発動する。だが、体は寝転んだままで足裏だけを地面につけていたから、俺の体は空を飛んだものの、バランスなど取れる筈もなく、上下左右も分からないような有り様でグルグルと回りながら飛ぶはめになった。



「うぉわぁーーーー!?」


「ガモン殿!!」



 キリモミ状態でブッ飛ぶ俺を、アレスが空中で受け止めてくれた。…………お姫様抱っこなのだが、それは今は考えない事にしよう!


 と、その時。ガガッ!! っと言う、バカでかいノイズのような音が響いた。その音がした方を見ると、地面に大きなクレーターが出来ていた。



「なんだアレ!? 何が起きた!!」


「…………闇の玉です。ガモン殿に向けて放たれた闇の玉が、地面を飲み込んで消えたのです」


「はぁっ!?」



 なんだよそれは。つまりあの闇の玉に捕まったらアウトなのかよ!? もしかして『消滅』か? それが奈落のスキルなのか?


 アレスと共に地面へと戻った俺を、大魔王ティラノは睨みつけ、再び口に大きな闇の玉を出し始めた。


 ただし、今度は普通に撃つのではなく、闇の玉がティラノの口いっぱいに大きくなった瞬間に噛み砕いた!


 その瞬間、多数に弾け飛んだ闇の玉がばら蒔かれ、それはかなりの広範囲に及んだ。



「あれはヤバイ! 避けろーーっ!!」



 俺もアレスもバルタも、ばら蒔かれた闇の玉に触やに様に避けるが、俺はその時に目撃した。地面に転がる小石が、引っ張られる様に闇の玉に飛び入って、他にも飛び込んだ石なんかと一緒に押し潰されるのを。


 …………なんだあれは? 小石を引き込んで押し潰す? 『引き』込んで、『押し』潰す? ……………………そうか!! 奈落の出した闇の玉が持つ力の正体は、闇の引力を使った『重力』だ。


 深い闇と言えば、ブラックホールが頭に浮かぶ。あの闇の玉は少なくとも小石を引き込んで押し潰すのを見ているし、あれの前に出された闇の玉は、地面を飲み込んでクレーターを作っている。



「どっちにしてもヤバイのは変わらないけどな!!」



 しかも、奈落はこの闇の玉を操れるらしく、闇の玉は途中で進路を変える物もあった。


 希望があるとすれば、闇の玉は消えやすいと言う所だ。小石でも魔法でも、何かを近くに投げてやれば、それを吸収して押し潰し、闇の玉も一緒に消えてしまうのだ。



『グロロロロッ!!』



 そして、何とか全ての闇の玉が消えた所で、再びティラノが動き出した。


 闇と恐竜が、交互に襲って来る。同時じゃないのはまだ救いなのかも知れないが、かなり厄介な事には変わりない。


 それでも、二つを比べて考えれば、ティラノの方がまだマシな気がする。ならば攻撃を集中させるなら、ティラノが全面に出ている時だな。

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