483回目 小休止
邪眼族は戦闘に特化するように女神『ヴァティー』に造られた眷族達であり、『大蛇八首』は、その中でも桁違いに戦闘に秀でている。
その強さの程はと言えば、バルタいわく『一騎当千』。誇張ではなく、本当に千人を相手にしたとしても勝ちきるだろうと断言していた。
バルタが勝ち進んでいたあのダンジョンでの戦いでは、大蛇八首は『邪眼』を封印し、試練の為に能力を制限されていた状態だったのだと言う。
「『邪眼』を抜きにしても、相手は神に造られた精鋭、本来は人間が勝てる相手ではありやせんぜ。その代わりと言うか、ダンジョンの階層ボスでもあるんで、人間相手にはかなりの制限が付くらしいですがね。それも女神様次第でしょう。…………ただし、あの『ケト』って御仁だけは別格でさぁ。アレとだけは、戦いたくありやせんね」
邪眼族最強、『大蛇八首』筆頭騎士『ケト』。その強さはバルタをしてバケモノと例えるしかないのだそうだ。戦わなくても解る実力差が、ケトとバルタの間にはあるらしい。
そして、そんな風に評されるケトは他の大蛇八首に『まだ手を出すなよ!』と言って、ただ一人『大魔王』の左腕が変化した『サワン』とガップリ組み合っていた。
『フハハハハッ! 良いぞ良いぞ! これ程に組みがいのある相手は今までいなかったぞ!!』
『ヴォウッ! ヴォウッ!』
ケトとサワンの力比べは拮抗していたが、サワンの体から瘴気が吹き出すと、地面から岩で出来た手が突き出してケトの脚をガッシリと掴んだ。そしてサワンの上半身もまたモコモコと大きくなり、ケトの体を押し潰しに掛かった。
『お、おいおいおいおい…………! そ、そりゃちょっとズルくねぇか…………よ!! っとぉーーっ!!』
押し潰されそうになっていたケトが第三の眼『邪眼』を開き、その『邪眼』から出る波動で岩の手の動きを止めた。そして蛇の尻尾でそれらを蹴散らすと、サワンの短い足を蹴り払って、まるで相撲の上手投げの様にサワンを投げた。
『…………っふぅーーっ! …………こりゃ流石に一人ではキツイな! おう、おまえら手伝え!!』
『『…………自分が手を出すなって言ったくせに』』
『うるさい! おいガモン! お前達も早く大魔王の方に行け! コイツはこっちで倒しておく!』
ケトの言い様に少々呆れながらも、ケト達なら『サワン』を任せておけるので、俺とバルタは硬直する大魔王の所へと戻った。大魔王の硬直もそろそろ解けるようだしな。
硬直している大魔王を前にして、アレス達は警戒しつつも食事を取っていた。俺達はアレス達からサンドイッチを貰い、一口食べる。これはアレスの母親であるアレマーさんが作ってくれた物で、その材料は全てガチャ食材のヤツである。
たまにこうして食事を取らないと、体力面だけでなく、バフが切れるからな。食事が取れる隙があったのは助かった。
「硬直している間、攻撃は通らなかったか」
「ええ。色々試してはみたのですがダメでした。その代わり、結界を張っている間は動けないらしく、向こうからの動きもありません」
結界と言うよりバリアだったけどな。しかしこれは奈落にとっても予想外だったのだろう。まさかごちゃ混ぜに固めた魔王が何体か消えたからと言って、これ程のダメージになるとは思わなかったのだろう。
俺達だって、まず鎧を剥がそうとしか考えて無かったしな。
だが、これで倒す道筋が見えて来た。
「危険が増すが、鎧に綻びが出来てこれからも増えるんだ。少し攻めにも回ろう。きっと、いや間違いなく、さっきよりも鎧は薄くなっているからな!」
「はい! では俺も前衛に回ります」
「なら私は、シエラと一緒に後衛に回るわ。アレスのカバーが無いと、危ない場面が少しあったからね」
「私は今まで通り、回復に専念ですね」
「あっしも今まで通りでやすね。…………っと、そうだ旦那、お嬢に連絡を取って『仙酒』をスキル倉庫に補充して貰いやしたぜ。あのデカブツ、いつ瘴気を出すか解りやせんからね。上手く使いやしょう!」
さすがバルタ。『仙酒』の事は頭から抜けてたから助かったぜ。
そして、動けずにいた大魔王がようやく動きだした。それを見てシエラやカーネリアは離れて行き、俺とアレスとバルタの三人は間隔を空けて前に立った。
ここに転移させられた直後とは違い、俺達も今度は全身を☆5装備で固めて、臨戦態勢はすでに整っている。
《ガモン》
メインウェポン:破壊神の拳
サブウェポン:メインウェポンの効果で装備不可
腕装備:メインウェポンの効果で装備不可
頭装備及び体装備上下:魔獣の黒鎧
足装備:ヘルメスの靴
アクセサリー:予知のモノクル
アクセサリー:統率者のピアス
俺が身につけたこれらの装備は、全てが☆5の装備である。まあ幾つかは他の装備に干渉されて、装備の枠自体が潰された物もあったが、それは逆に、枠を潰させた装備の質が高い事を示していた。
「奈落! さっきは逃げ回ってばかりで悪かったな! 今度は多少相手をしてやる! 第二ラウンドだ!!」
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