482回目 大蛇八首、推参!
ティアナ達の手によって『郷愁の禍津像』を破壊され、その影響で左腕を失うハメになった『大魔王』は未だに動けず、その胸が大きく開き、奈落が胸から上を外に出した。
『何が起きた!? …………魔王が幾つか消えてる!? まさか、禍津像が破壊されたのか!?』
自身が操る『大魔王』の体から立ち上る黒い煙を見て、奈落も何が起きたのかを悟ったらしい。
と、同時に姿を見せた奈落に向かってカーネリアが炎の槍を撃ち込んだのだが、それは奈落を護るバリアによって霧散してしまう。ここで簡単に隙を見せるほど、奈落も馬鹿ではないらしい。
奈落はカーネリアを睨みつけてから、『大魔王』の中に戻っていったが、『大魔王』の身体はまだ動けないようだ。
「『特別な眷族』やら『魔王』やらを無理やりこねくり回して作り上げた巨体でやすからね。全体から見れば、魔王が少し減ったくらいのもんなんでしょうが、無理に繋げていたもんにヒビが入れば、破裂くらいはするでしょうぜ」
「一回切れた回線の復帰に時間が掛かってる感じかな? いや、途中のコネクタが消えたと考えればもっと深刻か? まぁ、あのデカイのが動けなくなってるのは助かる」
「ええ、こっちの方が面倒くさそうでやすからね」
俺達の目の前にあるのは『大魔王』から斬り飛ばされた『左腕』だ。その左腕が、いま蠢いている。
これは元々は『郷愁の禍津像』が魔王に触れられて変化した『特別な眷族』であり、影の存在である魔王から見れば自分の肉体であった物だ。
本来はソレ単体で動くものが、奈落によって無理やり『大魔王』を構成するパーツにされていた事もあって、酷く歪んでいる。
とてもバラけて、元の『特別な眷族』に戻れる様には見えず、『左腕』にもそれが解っているのか、『大魔王』とは別の、独自の形へと変化していった。
「…………何ですかい? ありゃあ」
「俺にも分からねえよ…………」
シルエットだけで言うのなら、歪に筋肉が発達したゴリラだろうか?
左腕が最終的に形作ったのは、下半身が小さくて上半身がデカイため、足だけでは体が支え切れないのか両拳を地面に押し当ててバランスを取る、何とも動きづらそうな形態のゴリラ…………っぽい何かだ。
何せ肩とか腕とか、何でそんな所に? と言いたくなる場所に角とか生えている。あんな生物はいないと断言できる。いるとすればモンスターだろう。
…………よし、アイツは左腕だった訳だから『サワン』と名付けようかな。と、そんな事を考えていると唐突に『サワン』が、その巨体を大きく揺らし始めた。
『ヴォロロロッ!! ホッ! ホッ!』
その揺れは徐々に大きくなり、そのうち、跳び跳ねるようになって、腕を地面に叩きつけ始めた。
俺達を襲うでもなくそんな事をしているから、何をしているんだ? と思いながら見ていたが、ふと嫌な予感がした俺は、突発的にその場を飛び退いた。
すると、一拍置いて巨大な岩の塊が地面から勢いよく飛び出したのだ。もし飛び退いていなければ、俺はアレをマトモに喰らって、とんでもない高さから地面に叩きつけられていただろう。
「…………野郎」
「明確に攻撃してきやしたね。まぁ、そうなるとは思っていやしたが…………」
同じく『サワン』の攻撃を避けていたバルタが、俺に並んでナイフを構えた。
このまま『サワン』との戦闘に入る…………のか? 奈落が、『大魔王』がいつ動くとも解らない状態で?
そんな事を考えていたその時! 何かが空気を切り裂く音と共に飛来し、まだ動けていない『大魔王』に直撃した。
その攻撃は二発・三発と続いたが、『大魔王』は動けてはいないがバリアを張っていたらしく、その攻撃は全て『大魔王』までは届いていなかった。
だがその攻撃は、明らかにミサイルでの攻撃だった。そして俺が、その攻撃が飛んで来たと思われる空を見ると、そこには物凄いスピードで飛んでくる飛空艇の姿があった。
「…………まさかアレは…………『ヒポグリフ』か!?」
「『ヒポグリフ』って、確かついこないだ完成したばかりの八番艦でやすか!? いったい誰が!?」
そんな俺達の疑問は、次の瞬間に飛空艇『ヒポグリフ』から飛び降りた者達によって霧散した。
そいつらは事も無げに地面に降り立つと、物凄いスピードで俺達の横に並び立った。
『大蛇八首が筆頭騎士『ケト』、推参!! 我らが女神『ヴァティー』の命により、勇者ガモンとその一行に助太刀いたす!!』
「ケト!? それに大蛇八首も! まさか全員で来たのか!?」
『向こうじゃ我らは力不足でな。少しでも役に立とうと、ここまでやって来たのだ! さぁ! まずはコイツが敵でいいんだな!?ならば、さっそくやるとするか!!』
言うが早いか、大蛇八首の面々は等間隔に並び『サワン』を取り囲んだ。
…………八対一か。これならば、『サワン』の事は大蛇八首に任せられるな。
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