479回目 八番艦『ヒポグリフ』
奈落の眷族ゾンビ達との戦いに勝利したティアナ達は『天空城』へと移動し、迅速に『郷愁の禍津像』を回収して破壊する為の作戦を練っていた。
奈落が大魔王となる中で消費された『郷愁の禍津像』は世界中に散っている筈だが、ティアナ達はそのほとんどが、この東の大陸にあると確信している。
実は作戦を練る前に、なんとか『郷愁の禍津像』の大まかな位置を知ろうとしたのだ。
一番良いのは『マイスター・バー』で情報を買う事なのだが、それは断念した。『トゥルー・フレンド』とはなったが、ティアナやフラウス、それに女神ヴァティーを解放した事で新たに『トゥルー・フレンド』となっていたアルジャーノンにも、『マイスター・バー』は使えなかったからだ。
かと言って、いま命をかけて時間を稼いでいる我聞には頼めない。それが大きな隙になってしまう可能性が高かったからだ。
ティアナ達は何かないかと『スキル倉庫』を探した。そこで見つけたのが、☆5『星読みの占い盤』だった。
☆5『星読みの占い盤』
・対価となる『宝石』、もしくは『魔石』を捧げる事で様々な事について占う事が出来る占い盤。その的中率は対価とした宝石や魔石の希少性や価値に比例する。
・占い盤に片手を置いた状態で占いを行うと、その結果は自動書記によって書き出される。紙とペンの用意は必須。
・占いは占いであり、確定した未来ではない。未来は可変であり、占いをしたという事実で未来が変わる事もあるので、注意が必要。
・求められた対価を払い、☆5『星読みの占い盤』を破壊する事で、一度だけ過去の自分にメッセージを送る事ができる。それにより現在が変化した場合、変化させた記憶は使用者だけしか持てない。
ティアナはこれを使って、奈落の使った『郷愁の禍津像』の行方を占った。それにより、『郷愁の禍津像』のほとんどが、この東の大陸にある事を突き止めたのだ。
「けっこう良い宝石や魔石を消費するのは少しもったいないけど、これは使えますね。この『星読みの占い盤』を使いながら、人を派遣する場所を決めて行くのがいいと思う」
「そうだね。時間も限られているし、ガモンくん達の方がどうなるか解らない。早く決着をつける為にも、効率よく動くのは大切だね」
「ウム、飛空艇を使えば移動も速かろう。今あるのは八隻じゃったか?」
『ああ、それなんじゃがな。一隻、一番速い飛空艇を妾に貸してくれんか?』
ティアナが中心となり、アルジャーノンとドゥルクが話し合う中で待ったをかけたのは、女神ヴァティーだった。
「ヴァティー? 今はあまり余裕がないのだけど、何か考えがあるの?」
『考えという程ではないが、妾の眷族達は禍津像の探索には不向きじゃからな。ガモンの方に向かわせようかと思っての。大蛇八首は中々の戦力じゃから、遊ばせておく理由はないじゃろ?』
「不向き? …………あぁそうか、ダンジョン探索になるからか」
アルジャーノンはヴァティーの言葉に納得して周りに説明をする。
ヴァティーの眷族である邪眼族は、ダンジョンの守護者として生み出された存在だ。簡単に言えば、ダンジョンモンスターとしての側面を持っている。それも階層ボスだ。
他のダンジョンの階層ボスが、『郷愁の禍津像』を探す目的とは言え、自分のダンジョンにやって来る。これを面白く思うダンジョンマスターは居ない。『郷愁の禍津像』と言う目的を知らなければ余計にそうだろう。
恐らく、大蛇八首が一人でもダンジョンに侵入した時点で全力で排除しに来る。そうなれば『郷愁の禍津像』を見つけるという目的の足枷になりかねないと、ヴァティーは言っているのだ。
これは確かにその通りだし、我聞の方に援軍を送りたい気持ちもあったので、ティアナ達は大蛇八首に飛空艇を一隻与えて送り出す事にした。
貸し出す飛空艇は八番艦『ヒポグリフ』。スピードに特化した飛空艇で、その名前の由来は、鷲の頭と翼を持ち獅子の身体を持つ『グリフォン』の、後ろ足だけを馬にした様な形の、空想生物の名前から名付けた物である。…………まぁ、この世界にはモンスターとして実在もしているが。
その『ヒポグリフ』名を冠する飛空艇は、真っ白な流線型の機体をしており、その最後尾には二つのバーニアを付けた形をしている。このバーニアが馬の蹄の様に見えたのも、我聞がこの飛空艇を『ヒポグリフ』と名付けた要因の一つである。
「ガモン達の所まではレティアが案内してくれます。ガモン達の事、助けてあげて下さい!」
『承知した! 大蛇八首が筆頭騎士『ケト』の名に懸けて誓う! 必ずガモン達を生きて姫の元に返しましょう!! ゆくぞ!!』
『『ハハッ!!』』
ティアナ達に見送られて大蛇八首を乗せた飛空艇『ヒポグリフ』は、最速の名に恥じぬ凄まじい速度で、西の空へと飛び去って行った。
そしてティアナ達もまた、『大魔王』奈落の身体を構築する魔王の『郷愁の禍津像』を探し出して破壊すべく、行動を開始したのだった。
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